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第二百八話 最終戦②

「今度は《溟海の勇者》の力か。」

「ユーリの強みは色々な魔法属性の《勇者》の力を使えることとそれぞれの魔力を持っていることから魔力量に余裕があることですね。使い切らない限りはその《勇者》の力は使用できますから。」

「セシリア団長は雷属性と水属性、それにあの剣や鎧まである。」

「ユーリは一体どうやって攻略するつもりだろう?」


ユーリはすでに《紅蓮の勇者》と《剣の勇者》の魔力を使用している。《剣の勇者》の魔力はまだ残しているが《紅蓮の勇者》の魔力はすでに全て使い切ってしまっている。炎属性魔法で最も攻撃力のある魔法は出せないが相性を考えるならば一番優先度が低いと考えていたので問題はない。


「はぁ!」

「来い!」


俺は《溟海の勇者》の力を引き出すと片手を前に出し魔力を込める。何か強い魔法がくると察したセシリアさんも手のひらを前に出し魔力を込める。


「『海神の圧ポセイドン・プレッシャー』!」

「『海竜の息吹(レヴィアタン・ブレス)』!」


お互いに放った水はぶつかり合うが俺の『海神の圧ポセイドン・プレッシャー』の方が押されている。全体的な水の波動であり動きを止めることがメインである俺の技とは違い、セシリアさんの方は一点集中といった感じで攻撃力が高いようだ。完全にこちらが負けてしまっている。


「くっ!『海神の咆哮ポセイドン・ハウリング』!」

「『大海原の荒波オープンシー・ラフウェイブ』!」


ならばと思いこちらももっと強い魔法である『海神の咆哮ポセイドン・ハウリング』放つが、セシリアさんはそれを飲み込むほどの大きな波を発生させた。このままだと観客席もろとも飲み込まれてしまう。まったくセシリアさんはなんて魔法を使うんだ。


「『人魚の舞踊(マーメイド・ダンス)』!」


人魚の舞踊(マーメイド・ダンス)』は水を操ることかできる魔法であるが、俺は水を集約し自らの魔力へと変換した。これは《溟海の勇者》の能力の一つである、他人の使った水属性魔法であれば変換できるため普通ならこれで回復ができるはずである。しかしセシリアさんの魔法は荒々しすぎてむしろダメージを受けてしまった。それでもこの魔法をまともに食らうよりはダメージを最小限に抑えることができるはずだ。全ての水を操り体に集約させた。それと同時に《溟海の勇者》の力は消えてしまう。


「はぁ…はぁ…はぁ…。」

「まさかこの魔法を全て消してしまうとはな。」

「セシリアさん、この会場ごとぶっ壊す気ですか?」

「そうだな。だが他の団長たちも居ることだしなんとかなるとは思っているよ。実際なんとかしたのはユーリだが。」


セシリアさんはそう言うと笑みを浮かべる。こっちはもう結構余裕がないというのに相変わらずまだまだ余裕そうだ。そして俺は四つ目の《勇者》の力である《大地の勇者》の力を引き出した。髪は茶色に変わり、その魔力は大らかでどこか安心感があるように変化した。


「あれユーリって《大地の勇者》の力使ったことあったっけ?」

「ジェマと練習していましたよ。皆の前で使用するのは初めてかもしれませんね。」


セシリアは初めて見るユーリの姿に素直に驚いていた。こうも多彩な魔力を持つ相手と戦ったことがないということもあり楽しいという感情からか笑みがこぼれてやまない。


「今度は土属性ということか!」

「はい!『砂漠の幻惑(デザート・ダズル)』!」


ユーリの身体から砂が吹き出したかと思うと二人の姿を包み込み観客席からは何が起こっているのか見えなくなってしまった。エレナは《副技能(サイドセンス)》で二人の魔力の流れを探って状況を見ていた。すると不思議なことにセシリアの方は動き回っているのに対しユーリはその場から一歩も動いていなかった。


「それにしてもユーリ君は一体何をしているんでしょう。いやむしろ何もしていないと言うべきでしょうか。」

「どういう感じなの?」

「セシリア団長の方は剣を振り回して動いていますが、ユーリ君はその場から一歩も動いていませんね。」

「なるほど。幻惑ってことか、これってもしかしてレシア砂漠の環境を再現しているんじゃないかな?」


コータは魔法の名前からそれがどんな効果であるかを推理する。『砂漠の幻惑(デザート・ダズル)』などという名前から察するにレシア砂漠の環境を再現した魔法なのだろう。レシア砂漠では魔力で身体を包まなければ砂漠な魔力の影響で方向や温度の感覚などがおかしくなる。エレナの話を聞く限りではそれだけじゃなく、恐らくセシリアには何か幻の様な物を見せているのだろう。でなければ視界こそ奪われていても無闇矢鱈に動き回るはずがない。


「とはいえ攻撃すればユーリ君の魔力は感知されてしまいますから…」

「あくまで時間稼ぎということだろうな。」


ユーリはセシリアの位置を把握しつつ次なる手の作戦を考えていた。セシリアの弱点と呼べる弱点はないが戦ってみてわかったことを纏める。雷属性と水属性魔法に適正はあるがどちらかと言えば水属性魔法の方が得意で現に水属性魔法では規模の大きい魔法を使用している。わざとそうしているという可能性はあるがわざわざ魔力消費の大きい方を選ぶ理由もない。雷属性魔法では逆に大規模物は発動していないことと、セシリアさんの魔力量から察するに水属性魔法の方が強めの魔法を発動しても少ない魔力で済んでいるが雷属性魔法ではそうもいかないのだろう。


(もし水属性の魔法を使わせられれば魔力を削り、雷属性魔法だけに絞ることが出来るだろう。もし『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』同士のぶつかり合いなら俺にも勝機がある。)


今セシリアさんは幻覚に捕らわれている。俺が動けばそのことに気付かれるだろうが構わない。ここからはその作戦を実行するだけなのだ。


「『大地振動(ガイア・クエイク)』!」

「うっ!これは一体どういうことだ?」


俺は『大地振動(ガイア・クエイク)』によって地面を揺らしセシリアさんは膝を突く。幻覚から解放されたがまだ舞台の上には砂が飛んでおり視界が悪い。いまいち現状は理解できていなさそうであるがこちらに向かって来ていることから魔力でこちらの居場所は把握していることがわかった。


「『海竜の雨乞い(レヴィアタン・レイン)』!」


セシリアさんは竜の様な形をした水を出現させた。それが天高く舞い上がったかと思うと大量の雨が空から降って来た。『砂漠の幻惑(デザート・ダズル)』で発生させた砂嵐は完全に消え去ってしまった。そしてそのまま剣をこちらに向かって振り払おうとする。俺は回避のために魔法を放つ。


「『地母神の障壁』!」

「『海竜の一角レヴィアタン・ナーワル』!」


『地母神の障壁』は俺の正面に壁を作り続ける魔法だ。一つが破られても次々と障壁が出てくる。しかしセシリアさんが使った『海竜の一角レヴィアタン・ナーワル』という魔法は水を一角の様に模しているただの体当たりなのに止めることができない。それどころか勢いが増している。そうこう考えている内に俺の元へと辿り着かれ懐に入られる。


「『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「『鋼鉄変化(スチール・チェンジ)』!」


セシリアさんの『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』が身体に触れそうになる瞬間『鋼鉄変化(スチール・チェンジ)』という魔法で身体を硬化した。『身体強化(フィジカルブースト)』では身体の耐久性を上げても刃そのものは通る。人間の肌は柔らかいためだ。だがこの魔法では身体そのものを変化させて鋼鉄にするため刃は通らない。とはいえぶつかったときの衝撃は来るためダメージは避けられなかった。俺は吹き飛ばされ魔法を解くとその衝撃で吐血する。恐らく内臓がやられてしまっているためすぐに『治療魔法(ヒール)』を発動させる。しかし、ダメージ自体は残っているためもう長くは戦えないだろう。しかしセシリアさんの方の魔力もかなり削ったはずだ。これでもう水属性魔法は使用しないだろう。


「ふむ、その様子だともうあまり長くは戦えないだろう。」

「そうですね。そういうセシリアさんももう魔力あんまり残っていないんじゃないですか?」

「そうだな。色々と切り替えることのできるユーリに比べれば私の魔力量など非凡なものだからな。仕方ない、ここまでするつもりはなかったが…」


そういうとセシリアさんはライゲスト鉱石で作られた鎧を脱ぎ始める。地面に鎧が置かれるとドカン!というおよそ普通の鎧を置いた時には聞こえることのない音がしていた。耐久力があるというのはそれだけ重さもあるのだろうが一体何キロの鎧を着こんだままあのスピードで動き回っていたのだろう。少しその場でジャンプをすると一瞬にしてセシリアさんの姿を見失った。


「はぁ!」

「うわぁ!」


セシリアさんはいつの間にか俺の背後に回り剣を振るう。それをギリギリのところで躱し、『身体強化(フィジカルブースト)』を発動させすぐに距離を取る。


「ふむ、確実に取ったと思ったが…。どうやら鎧を脱いで戦うのは久々だから加減が上手くできていないらしいな。」

「普段からどんな生活してるんですか。」

「そうだな、風呂に入る時くらいは脱いでいるぞ。」

「ってことは寝る時は着ていると?」

「当たり前だろう。いつ敵が来るかわからないからな。」

「た、たしかに…。」


俺はこの時納得しかけていたが、よくよく考えてみればそんなことはない。いくら騎士団長が多忙であるとはいえ流石に夜間には担当の騎士が警備をしているし、別に他の騎士団のメンバーだってそれなりの実力者ばかりである。だからそこまでしているのはセシリアさんだけだろう。そんな余計な考えを振り払い俺は残された最後の《剣の勇者》の魔力を引き出し、再び『贋聖剣(オルタエクスカリバー)』を作る。


「さぁ!最後の勝負といこうか!」

「これで決着を付けましょう!」

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