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第二百七話 最終戦

第五戦の勝者はセドリック団長であった。アリアもディランも良く戦ったと思う。成長するための何かきっかけを掴むこともできたようだしそういう面でも良い戦いだったと思う。これで2勝3敗という戦績だ残すところ最終戦である。つまり俺に勝利がかかっているということだ。負けたら総合的にも負けになるし引き分け以上なら俺達の勝ちということになる。アリアとディランは大きな傷もなかったようなのでそのまま観客席へと戻って来た。


「二人共、お疲れ様。」

「うん、負けちゃったよ。」

「すまない。」

「いや悪くなかったよ。セドリック団長の能力には驚かせられたよね。まさかウールの『蜃気楼(ミラージュ)』を使えるなんて思わなかったよ。」

「固有魔法の最適化って言ってたよね。私も能力を見直すいいきっかけになったよ。」

「俺も何か答えを見つけることができたような気がする。」


騎士団長達は俺達と戦うだけでなく、成長するためのきっかけを与えてくれているという任務も兼ねている。実際皆んなこれから先どんなことをしていけばいいのかという指針を上手く決められてたようで大きな経験になったことだろう。俺の今の課題は何だろうか、いやそんなに難しいことはないのだろう。変わらず《勇者》として《魔王》や魔族達と戦う。そのためにセシリアさんのような強敵であっても負けるわけにはいかない。


「どうやら最後の試合はユーリ君にかかっているみたいですね。」

「エレナ!それに皆も。」

「なんとか最終戦には間に合ったよー!」


観客席に戻ってきたのは治療を終えたデリラ、カルロス、エレナ、コータだった。皆すっかり元気になったようでなによりだ。元々大きなダメージを受けているわけではなかったが、思ったよりも皆割とすぐに治療が終了したように思う。よほど腕のいい治療師でもいるのだろうか?まあそれはいいか、そろそろ行かないと。


「それじゃあ皆、行ってくる!」

「頑張ってね!」

「絶対負けんなよ!」


俺は皆に見送られながら舞台へと向かう。すでにセシリアさんは準備ができているようで、笑みを浮かべながらこちらを見ている。思えばセシリアさんと初めて会ってから随分と経つな。あの頃からかなり成長したと思うが、どこまで今の俺の力が通用するのか非常に楽しみだ。きっとセシリアさんも同じ気持ちだろう。


「それでは最終戦セシリア・グランベール VS ユーリ・ヴァイオレットの試合を行います!」

「手加減はなしですよセシリアさん。」

「ああ、もちろんだ。本気で来い!」

「それでは一回戦………開始!」

「『創造(クリエイト)贋聖剣(オルタエクスカリバー)』!『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」


試合開始早々、俺は『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』をセシリアさんに向かって放つ。セシリアさんもすぐに『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」を返してくる。お互いの魔法は互角でそれぞれを打ち消し合った。


「ふふっ、いきなりやってくれるじゃないか。」

「挨拶代わりですよ。セシリアさんこそ《聖剣》じゃないのに良い剣をお持ちですね。」

「ああ、これか?これは元々私が《聖剣ガラティーン》を手に入れるまで使用していた愛剣だよ。銘は《輝聖の剣》私の魔力を込めやすい剣だ。逆にユーリは持ち込まなかったようだな。」

「えぇ。俺は元々こうやって剣を作っていましたから。こちらの方がしっくりくるんです。」

「さておしゃべりはここまでにして戦いに集中するとしよう!」


セシリアさんは真っすぐこちらに突っ込んでくる。俺はそれを真正面から受け止める。セシリアさんは剣技も魔法もバランスの取れた非常にシンプルな戦闘スタイルだ。純粋な剣技勝負なら俺の勝ち目はないだろうが魔法を絡めればいい勝負ができるはず。


「『身体強化(フィジカルブースト)三重(トリプル)』!!!」

「『雷撃(ライトニング・ボルト)』!」


セシリアさんは俺が『身体強化(フィジカルブースト)』を発動した隙を狙って『雷撃(ライトニング・ボルト)』を放つ。それを躱すとセシリアさんの剣が俺の首を狙って振り払われる。ギリギリとところで俺は身体を捻らせて回避する。少しだけ二人の距離が空くとセシリアさんは少し笑って見せた。まだまだ余裕だということだろう。


(このままだと防戦一方だ。少し早いがあれをやろう。)


俺は一度作り出した『贋聖剣(オルタエクスカリバー)』を崩し、《紅蓮の勇者》の魔力を引き出す。髪は赤色に変わり、溢れ出ている魔力はまるで炎の様に熱く感じた。


「それが《勇者》の力というわけか。」

「はい。全力で行かせていただきます!『炎神の一撃(アグニ・ブロウ)』!」

「『水爆(ウォーター・ブラスト)』!」


俺が放った拳はセシリアさんの身体にぶつかる直前で『水爆(ウォーター・ブラスト)』とぶつかり大きな爆発を起こした。セシリアさんは雷属性の魔法を得意としている認識だったが、並のパワーではなかったからどうやら水属性魔法も得意としているらしい。


「私に水属性魔法を使わせるとは。」

「使えたんですね。てっきり雷属性だけかと。」

「私の能力は《水聖の騎士》。むしろこっちが得意魔法だよ。」

「なるほど、ではこれなら!『炎神の二撃(アグニ・ツインブロウ)』!」

「『水魔流失(ウォーター・ロスト)』!」


セシリアさんは一撃目の拳を剣でガードする。そして二撃目を隙だらけの身体に打ち込みにいく。もらったと思ったがその瞬間俺の腕が水に包まれる。左手の魔力が完全に消失するのを感じた。この魔法は一体なんなんだ?水に俺の魔力が流されたような。


「『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「ぐわぁ!」


魔力を失ったことに驚いているとセシリアさんはその隙を逃さずに『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』で斬りつけられた。ギリギリのところで魔力を込めて防御できたが俺の腕から出血する。『治療魔法(ヒール)』で回復をして止血。俺は勝手にセシリアさんのことを勘違いしていたが、彼女は思っているよりも多彩な魔法を使ってくる。これはかなりやりにくい相手だ。それならば…。


「はっ!」

「なるほど、魔法対策で今度は《剣の勇者》の力に変化させたというわけか。」


俺はセシリアさんの言う通り髪の色が淡紫に変わり、魔力は鋭く突き刺さるように変化した。これまでと違って髪の毛の中に緑色も混ざっている。恐らく《剣の勇者》であるシャーロットの髪色が変化したことも関係あるのだろう。今のこの状態なら風属性魔法も強化されているはず。再び『創造(クリエイト)贋聖剣(オルタエクスカリバー)』を発動させ剣を握る。


「『疾風の突き(ゲイル・ストライク)』!」

「『燕返し』!」


疾風の突き(ゲイル・ストライク)』は風を纏っている突きなので剣で防ごうと考えても本来は弾かれるはずである。しかしセシリアが放った『燕返し』という技は弾かれた剣を素早く切り返し俺の突きを返した。そして俺の腰へと突き刺さる。


「ぐはぁ!くそっ!」

「魔法だけに頼ると思ったら大間違いだぞ。」

「『治療魔法(ヒール)』!」

「ふむ、『治療魔法(ヒール)』を使われるのは中々厄介だな。まあそのおかげでまだまだ楽しめるが。」


魔法だけじゃない剣技も警戒はしていたが、まるでマルクさんやジュウベエを相手にしているみたいだ。長年修行したベテランの剣士の様な風格さえ感じる。俺は一度呼吸を整える。一旦落ち着かなければ相手のペースにはまってしまう。


「落ち着いたようだな。さぁどう戦う?」

「はぁ!」


剣を構え、魔法なしで斬りかかる。お互いに魔法はなしで剣だけが静かにぶつかる音だけが聞こえる。純粋な力だけで言えば俺の方が勝っている。しかし技術は向こうの方が上だ。ならばと思い俺はセシリアさんの腕を狙う。


「『剣技・三段突き』!」

「はぁ!くっ!しまった!」

「ここだ!『剣神の一閃』!」


『剣技・三段突き』で三方向から同時にセシリアさんに斬りかかる。二撃までは反応して防ぐことができたが三撃目の突きはセシリアさんの腕鎧に辺り剣を落とした。その瞬間俺はセシリアさんの銅体に斬りかかった。鎧は強固で破壊はできなかったが力で押し切り吹き飛ばした。吹き飛ばされたセシリアさんはゆっくりと立ち上がる。


「かなり効いたぞ。いい技を持ってるな。」

「セシリアさんこそ魔法を使ってないのに頑丈ですね。」

「ふふ。少しずるをしていると思うかもしれないがこの鎧はかなりの特別製でね。魔力によって硬さが変わると言われているライゲスト鉱石を使用している。かなり重いが耐久性は抜群だ。」


ライゲスト鉱石、たしか魔力を流すとその魔力によって硬さを変えるという鉱石だ。流す魔力の量や大きさは関係なく尚且つ鉱石の大きさやその時の気温などの条件によってもどれくらいの硬度になるのかが変化すると言われているはず。《聖剣ガラティーン》の所持といいこの高度のライゲスト鉱石を引き当てたことといいかなりの幸運の持ち主であるな。いや彼女もまた選ばれた者なのかもしれない。


「【D・B(デュエル・ブレイク)】は武器はもちろん防具の使用も反則ではないからな。とはいえ君の様に『治療魔法(ヒール)』は使えないから、今ので折れたあばら骨は治せないよ。」

「今のでそれだけで済んでるのも十分化け物なんですがね。」


俺は一度《剣の勇者》の魔力を引っ込める。一番魔力が少ないので長時間の戦いには向いていない。一撃を与えることができたのはこの力であるから最後の最後まで取っておきたい。そして《溟海の勇者》の力を出す。髪の色が青色に変わり魔力は深く落ち着いたように変わった。


「今度は水属性魔法で力比べといきましょう。」

「ふっ、いいだろう!」


俺達の戦いはさらに激化していく。


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