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第二百五話 四回戦決着&五回戦

シャーロットの剣はオリバーさんの校章に向かっていく。あと少しで触れるというところで見えない何かによって阻まれた。そしてシャーロットの身体が見えない何かによって切り裂かれていく。あれはオリバーさんが得意としている『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』だ。


「『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』!」

「もう少しだったのに。」

「そう簡単にはやられませんよ!」


風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』は目に見えない無数の風の刃を発生させる魔法である。とはいっても距離が開いていれば風を切る音もするし、魔力を探知できればある程度どこから来るかもわかる魔法である。しかしオリバーさんの場合はそれに追加で能力《疾風》による速さが加わる。なので捉えることは容易ではないのだ。


「それならばこれでどうですか!『剣神の一突き・旋風』!」

「風属性魔法か!だが、『力の一突き(パワー・ストライク)』!」


シャーロットは風属性の魔法をスムーズに使えているようだ。カルロスの話ではカノンコートではまだ集中する時間が必要だったみたいだけど。あれならば周囲の風を巻き込むことができる性質上『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』によって阻まれることはない。しかし『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』の利点は自分の手を塞がないという点にある。だから仮に風の剣で防げなくても自らの剣を使用すればいいだけの話なのだ。二つの剣の切っ先がぶつかり合い轟音を響かせている。デリラとクリス団長の様に大剣同士のぶつかり合いじゃないのに凄い音だ。しかしシャーロットの方がわずかに押されている。地力の差が出てしまっているのだ。押し合いに負けシャーロットは吹き飛ばされる。


「ぐっ!」

「さて、それで終わりじゃないですよね。もっと成長したシャーロット様を見せてください。」


シャーロットは内心焦っていた。これ以上の技は自分にはなくオリバーを倒すためにはここが正念場であるということを。自分には何が足りないのかを今一度深く考える。色々な魔法を使えるようになることか?自分の魔力量ではそれは叶わないだろう。ならば剣技を磨くことだろうか?たしかに重要ではあるがそれは能力に頼らずに磨くものではないだろうか。


(オリバーよりも素早く動かすためには、もっと魔力を全身に満遍なくいきわたらせる。イメージはランマの《神速》のように。)

「名残惜しいですがこれ以上なければここで終わらさせていただきますよ!『千の突きサウザンド・ストライク』!」


オリバーさんは隙だらけのシャーロットに襲い掛かる。何か考え事をしているのか集中しているのかわからないが完全に警戒をしていないように見える。勝負を諦めたなんてことだけはあり得ないだろうが何かを狙っているのだろうか。するとその時不思議なことが起こった。シャーロットが片目だけを開いたと思ったらオリバーさんの突きを全て躱した。『身体強化(フィジカルブースト)』によって素早さを強化したという感じではない。まるでどこに攻撃が来るのかが理解できたという感じであった。


「な、何!」

「こ、これは…。」


シャーロットは自分自身でも今何が起こったのかわかっていなかった。ただ言えることは魔力が左目に集中したと思い、開いて見たオリバーの攻撃がどこにくるのかその眼には輝いて見えたのだ。原理はわからないがこれはチャンスと思い反撃に出る。


「『千の突きサウザンド・ストライク』!」

「『千の突きサウザンド・ストライク』!」


同じようにオリバーは再び技を合わせるが、何か違和感があった。先程は完全にこちらが押していたのに今は押されている。防御に近い形になっていたのだった。このままでは攻め切られると思ったオリバーはすぐに続けて魔法を放つ。


「『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』!」

「はぁぁぁ!!!」


観客席で見ている俺達にも明らかにシャーロットが押しているということがわかった。それに不思議な魔力が左目に宿っている。はっきりと魔力が出ているのが肉眼でもわかった。あれが格段に動きが良くなった理由に間違いない。


「次で決めます!『千の突きサウザンド・ストライク』!」

「うぉぉぉ!!!『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』!」


オリバーさんの身体にシャーロットの剣が突き刺さる。さらにシャーロットは何もない空中にも剣を向けている。『風剣の舞(エアブレイド・ダンス)』の見えない風の剣も完全に封殺しているのだ。この勝負シャーロットの勝ちだ。


「『剣神の連閃・旋風』!」

バリン!


シャーロットの一撃目を辛うじて剣で塞いだが、一撃目の風によりオリバーさんの剣は飛ばされてしまう。二撃目の瞬間どこか諦めた様子で校章は砕かれた。リリス先生はそれを確認すると手を上げた。


「第三回戦!勝者! シャーロット・セルベスタ!」

「はぁ…はぁ…やりました。」

「まさか負けるとは思いませんでした。」


試合が終わったと同時にその場にシャーロットは倒れこむ。もう魔力が残っていないという感じだ。怪我をしているわけではないから少し休めば大丈夫だろう。しかしあの左目一体何なんだろう。オリバーはシャーロットを抱えると観客席のこちらまでやってきた。


「二人共お疲れ様でした。凄い試合でした。」

「ははは、負けてしまったよ。まさかあんな動きをされるとは。」

「なぜか途中からあなたの動きが見えたのです。」

「うーん、もしかしてそれは《魔眼》ではないですか?」

「これが《魔眼》?」

「《魔眼》って?」

「たしか何か魔法的な能力を持った眼のことですよね。魔力を込めると何らかの魔法が発動するっていう。」

「なんだかざっくりしてるなぁ。」


フルーの指摘はもっともだけれど、実際わかっていることなんてほとんどないに等しいのだ。それくらい《魔眼》の情報はないし、持っているという人も聞いたことがない。ただ存在するという記述がある文献がいくつかあるというだけにすぎない。シャーロットの左眼もあくまでその可能性があるかもしれないというだけだ。


「詳しいことは調査した方がいいと思いますけどね。それでは僕は説教が待っているので失礼するよ。」


そういうとオリバーさんは騎士団長側の観客席へと戻っていった。先程負けて怒られたであろうブランシェさんは涙を流しながら正座させられている。きっとオリバーさんもああなるのだろうな。そして続いて五回戦。アリアとディランの番だ、俺は頑張れよと声をかけて二人は頷くとステージへと向かっていく。シャーロットのおかげで2勝2敗、アリア達か俺が引き分けに持ち込めれば俺達の総合的な勝利となる。


「それでは五回戦セドリック・モルガン VS アリア・リーズベルト & ディラン・アレストールペアの試合を行います!」

「さぁ君達の魔法を見せてくれたまえ!」

「はい!」

「それでは五回戦………開始!」

「『炎の矢(フレイム・アロー)十重(ディカプル)』!!!!!!!!!!」


試合開始早々セドリック団長は、『多重展開(マルチ・キャスト)』を十重(ディカプル)まで発動させてきた。すぐにアリアはそれらに対応するため魔法を発動する。


「『水の球(ウォーター・ボール)五重(クインティプル)』!!!!!」

「なるほど!流石《大賢者》だ!」


アリアの能力である《大賢者》は通常に魔法を発動する俺達よりも数が多く出てくる。例えば『水の球(ウォーター・ボール)』を通常発動して出てくるのは一つだが、アリアの場合一個の魔法陣から二個の『水の球(ウォーター・ボール)』が出てくる。なので五重(クインティプル)であれば十個の『水の球(ウォーター・ボール)』が十本の『炎の矢(フレイム・アロー)』を撃ち落とすことになった。


「アリア君は五重(クインティプル)まで使えるのだね。」

「よそ見している場合ではないんじゃないか?『雷の剣(ライトニング・ソード)』!」

「『身体強化(フィジカルブースト)三重(トリプル)』!!!『岩の腕(ロック・アーム)』!」

「ぐっ!」


ディランはすでにセドリック団長の懐にまで潜り込んでいた。ゼロ距離からの『雷の剣(ライトニング・ソード)』しかし『身体強化(フィジカルブースト)』による反応速度上昇により避けられ『岩の腕(ロック・アーム)』による殴打を食らってしまう。


「大丈夫ディラン?」

「ああ。接近戦は苦手だと踏んでいたが『身体強化(フィジカルブースト)』による底上げが思っているよりも大きい。」

「ははは。たしかにディラン君の言う通り僕は接近戦はあまり得意ではない。だけど体を鍛える方法はいくつかあるんだ。例えば常に『身体強化(フィジカルブースト)』を発動し続けるとかね。」


なるほど、『身体強化(フィジカルブースト)』を常に発動することによって通常時から負荷をかけ続けることで元々の身体能力を上げる鍛え方をしているということか。できないことはないだろうが、常に維持し続けるというのは並大抵のことではない。大抵魔力が尽きるかその前に集中力の方が切れてしまうからそんな鍛え方は難しいだろう。しかしそれをやっているとは流石《千の魔術師》といったところだろうか。


「まあとはいっても『身体強化(フィジカルブースト)』にも限界があるからね。『多重展開(マルチ・キャスト)』は三重(トリプル)が限界かな。とはいえ『魔法弾(マジック・ショット)拘束(バインド)』!」


アリアとディランは地面から伸びる魔力の糸によって拘束されてしまう。カルロスと同じ魔法なのに発動までの速度が速すぎる。それに魔力の糸の数も多い。


「こうやって拘束してしまえばわざわざ接近戦に持ち込まなくてもいいからね。『氷柱(アイシクル)』!」


セドリック団長の周りには氷柱が浮いている。今度は氷属性魔法か、セドリック団長は一体何属性の魔法を使用できるんだ。手を振り下ろすとアリアとディランの方に向かって真っすぐに進んでいく。二人は未だ身動きが取れずこのままだと直撃してしまう。


「これで終わりだよ!」


二人に接触しそうになった瞬間、爆炎に包まれたのだった。


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