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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
聖騎士円卓編

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第二百四話 三回戦決着&四回戦

「決まった!」


エレナの『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』はアルフレッド団長の身体に突き刺さっていた。いつもなら人体など簡単に貫通させてしまう威力であるが『地獄炎の壁ヘルフレイム・ウォール』によって威力は抑えられてしまったのだろう。だが結果的にそれはよかったといえる、本当に貫通させてしまったらそれこそ大事故である。だがそれは杞憂であった。なぜならアルフレッド団長の身体は消えてしまったからだ。


「な、何?!」

「まさか?!」

「ワシも使わせてもらったよ。『陽炎(ヒート・ヘイズ)』。」


陽炎(ヒート・ヘイズ)』によって作り出されたアルフレッド団長の残像だった。エレナは確実に手ごたえを感じていたが実際にはダメージを与えることが出来ていなかった。『陽炎(ヒート・ヘイズ)』はあくまでも残像を作り出す魔法であってウールの『蜃気楼(ミラージュ)』と違い実体があるわけではない。だから『蜃気楼(ミラージュ)』は相手が慣れてしまうか見分けられる能力がない限りは相手を確実に出し抜くことが出来る。


「ただの『陽炎(ヒート・ヘイズ)』だったら残像であることを見抜けそうだけど…。」

「見分けがつかないくらい魔力量を調整しているということでしょう。」

「つまり?」

「攻撃があたる瞬間にその場に残像を作ったわけですが、そこにある程度の魔力も残したということです。」

「なるほど、魔力で位置を探っているエレナが残像だと思わなかったのは魔力がいっぱい残っていたからというわけだね。」


恐らくエレナが魔力を見れるという《副技能(サイドセンス)》に気付いている。『炎の爆弾(フレイム・ボム)』を見破った先程の動きでそこまで気付いたということだな。アルフレッド団長は長く騎士団長をしていることもあり色々な相手と戦ってきているという戦闘経験がある。たしかに動きを見ている限りでは近接戦闘は得意ではないようだがそれをカバーする戦い方は当然してきているというわけだろう。


「お主《精霊》との親和性が高いのぉ。」

「お、俺ですか?」

「《風精霊(シルフ)》の力を借りた魔法を使っているな?」

「ええまあ。一つだけですが…。」

「同じく《精霊》と契約している者の助言として、もっと《精霊》の声を聴くことじゃ。」


アルフレッド団長はコータと《風精霊(シルフ)》との親和性について気付いているようだ。同じ《精霊》を直接使役している者として何か感じるものがあるということだろう。そういえばあまり疑問に思っていなかったが、本来俺達も《精霊》から力を借りて魔法を行使しているとウェールやヤーンさんが言っていた。大精霊というのが《炎竜精霊(サラマンダー)》《風精霊(シルフ)》なわけだが、それらを使役することで出せる魔法と小精霊の力を借りる通常の魔法との違いはなんなんだろうか?たしかに協力ではあるが普通の魔法でもそれなりの規模や威力にはなる。アルフレッド団長に機会があれば質問してみようかな。


「それなら『風精霊の竜巻(シルフ・トルネード)』!」

「『地獄炎の壁ヘルフレイム・ウォール』!ただ闇雲にやればいいというわけでもないぞ。」

「くそっ!」

「『炎の槍(フレイム・ランス)二重(ダブル)』!!」

「お嬢さんは先程の魔法といいかなりいい物を持っておる。それに新しい力も芽生えているようじゃな?」

「どうしてそれを?」

「ほっほっほ。先程から治療していること気付いておったんじゃよ。そのままそれを伸ばすことがきっとお主の力をさらに引き上げることになるじゃろう。」


エレナは傷ついたコータと自分自身をバレないように蒼色の炎で回復をしていた。それに気付いていたといたらしい。恐らく隠そうとしていたわけではなく、回復している場面を狙われないようにするためだろうがアルフレッド団長にはバレていたようだ。明確な実力差がある以上下手な小細工は通用しない。ここはデリラの様に全ての力を込めて一撃を狙いにいくしかない。


「持久戦に持ち込むということも考えていましたがこのままでは埒があきませんね。コータ、あれをやりましょう。」

「そうだね。」

「全力を出す気か。それならこちらもそれ相応の相手をしないといけないじゃろうな。『精霊召喚(スピリット・サモン)』!」


コータとエレナは魔力を込め始める。それを見てアルフレッド団長は最後の攻撃を判断し、『精霊召喚(スピリット・サモン)』を発動し《炎竜精霊(サラマンダー)》を召喚した。炎をまとった竜の様な姿をした精霊、これが《炎竜精霊(サラマンダー)》か。


「おい、ジジイ!相手はまだガキじゃねぇか!」

「まあそう言うな。中々見どころのある子達じゃよ。ほら、来るぞ!」

「『風精霊の竜巻(シルフ・トルネード)』!」

「『炎の矢(フレイム・アロー)三重(トリプル)』!!!」

「『合体魔法(シンクロ・キャスト)風精霊炎の矢シルフ・フレイム・アロー』!」

「『炎竜精霊の息(サラマンダー・ブレス)』!!!」


エレナとコータは『風精霊の竜巻(シルフ・トルネード)』を組み合わせた『合体魔法(シンクロ・キャスト)』を繰り出した。それに対抗してアルフレッド団長は『炎竜精霊の息(サラマンダー・ブレス)』を繰り出す。竜巻の中に無数の炎の矢が混ざり激しく燃え盛る。だが(ブレス)によって全て吹き飛ばされてエレナとコータの二人に襲い掛かった。大きな爆風に包み込まれて二人の姿が見えなくなった。しばらくすると二人が倒れている姿が見えた。コータは気を失っているがエレナはかろうじて意識がある。ゆっくりと手を動かし蒼い炎で回復しようとしようとしている。しかしアルフレッド団長が放った炎でコータとエレナの校章は破壊された。


「第三回戦!勝者!アルフレッド・マーティン !」

「もっと修行に励むことじゃな。ほっほっほ。」


三回戦勝者はアルフレッド団長であった。《風精霊(シルフ)》の魔法に合わせて『合体魔法(シンクロ・キャスト)』をこの短い期間の修行で発動したことには驚いたがアルフレッド団長には届かなかったようだ。まだまだ本気ではないという感じであったし、相手が悪かった。そして再び会場は修復され続いては四回戦。シャーロットが会場の方に進んでいくとちょうど治療を終えたフルーとウールが観客席に戻ってきた。


「お疲れ様。」

「ありがとうなんとか勝てたよ。」

「油断してくれてたのが大きかったね。二回戦三回戦は負けたんだって?」

「うん。やっぱり騎士団長の肩書は伊達じゃないということだね。」

「まあそう簡単に勝てたら苦労はしないよね。」


今のとこと勝敗は1勝2敗、2勝1分以上で勝ちということだが残り三試合。少なくとも一度は勝たなければいけないが状況は厳しい。二回戦三回戦ともに2対1で戦って校章の一つも破壊できなかった。所謂完全敗北というやつである。次のシャーロットや俺は1対1だからペアよりは勝率は悪いだろう。ここがターニングポイントだ。


「それでは四回戦オリバー・マイルズ VS シャーロット・セルベスタの試合を行います!」

「シャーロット様お願いします。」

「オリバー手加減は必要ありませんよ。」

「それでは四回戦………開始!」

「はっ!」

「やっ!」


二人は試合の開始と同時に剣を抜きお互いに剣をぶつけ合う。シャーロットはすぐに距離を取り突きの体勢に変わる。シャーロットの一番得意な形だ。


「『千の突きサウザンド・ストライク』!」

「『千の突きサウザンド・ストライク』!」


シャーロットは『千の突きサウザンド・ストライク』を放つがオリバーも同じように『千の突きサウザンド・ストライク』を放ち凄まじい速度で剣同士がぶつかっている。


「まったく同じ技か。」

「多分シャーロットの剣技を図るためにオリバーさんはわざと同じ技をぶつけてるんだと思う。あとは成長の機会というかどうやって対処するかっていうのを見てるんだと思うよ。」

「そういえば戦ってる最中も私達アドバイスもらったよ。」

「魔法に頼るなってね。結果的には勝てたけど課題は解決したわけじゃないから試合に勝って勝負に負けたという感じかな。」


騎士団長達は明確に俺達の能力や戦い方を見て今の課題を指摘してくれている。これからどうしていけばいいのか能力の成長を定めろと《進化の勇者》イオ・エヴォリュートの迷宮遺物(アーティファクト)にも記載されていたし、そのきっかけを作ろうとしているのだろう。この模擬戦自体三年生の区切りがどうのと言っていたが目的はそれなのではないかと思う。学園長はちょうど良かったとか考えていそうだが。


「『四角突き(スクエア・ストライク)』!」

「『四角突き(スクエア・ストライク)』!」


再び同じ技同士がぶつかる。どちらの方が勝っているということはなくまったくの互角である。いや恐らくあれはオリバーさんが調整しているのだろう。彼の能力《疾風》ならばシャーロットよりも早く動けるはずだ。まだ様子見ということだろうがそろそろシャーロットは何かを仕掛けるつもりのようだ。


「さて、ここからはまだオリバーには真似できない技を見せます。」

「それは楽しみですね。ぜひそのお力見せてください。」

「『付与魔法(エンチャント)敏捷(アジリティ)』!『剣神の一閃』!」

「くっ!」


シャーロットは『付与魔法(エンチャント)』によって素早さを付与し、《剣の勇者》の技である。『剣神の一閃』を放つ。オリバーはそれを紙一重で躱す。しかしシャーロットの攻撃はそれだけでは終わらなかった。


「だけど甘いよ!」

「まだです!『剣神の連閃』!」

「しまっ…!」


そのまま体を捻らせ続けて『剣神の連閃』を目にも止まらぬ速さで繰り出す。オリバーは一撃目を再び紙一重で躱したが二撃目は確実に首元を狙って刃が向かって来ていた。自らの剣を間に挟みガードをしようと試みた。しかしそれはシャーロットの囮であった。シャーロットが本当に狙っていたのは首でなく校章であった。


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