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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
聖騎士円卓編

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第二百一話 一回戦

俺達は各々修行に入っていた。俺とシャーロットはお互いが一人なのでお互いに戦っている。その他はディラン・アリアペアがエレナ・コータペア。デリラ・カルロスペアがフルー・ウールペアとそれぞれ模擬線をしている。【D・B(デュエル・ブレイク)】は校章さえ破壊できれば勝利なので相手を戦闘不能に追い込む必要はない。しかし向こうはそんな気はさらさらないだろうからこちらも倒す気でかからないといけないだろう。


「くっ!」

「考え事は厳禁ですよ!」


俺はシャーロットの突きを捌ききれずに剣を落としてしまう。たしかに考え事をしていた俺のせいもあるだろうが今日のシャーロットの気合の入り方はなんというからしくない。昨日の一人で戦いたいというあたりからなんとなく異変は感じていたが。ここは一つ思い切って聞いてみるか。


「シャーロットちょっと休憩しよう。」

「はい。」


シャーロットに水を渡し隣に座る。少し困ったような笑顔を浮かべ俺の渡した水を飲む。そして一息ついた後シャーロットはゆっくりと口を開いた。


「やはりわかってしまいますか?」

「まあ昨日から少し変だったからね。何かあった?」

「何かというわけではないのですが、ここのところ妙なざわつきを感じるんです。」

「それってまさか?」


シャーロットの《副技能(サイドセンス)》は漠然と大きな悪意や事件が起こる前触れを感じるものである。俺はもしかしたらそれではないかと確認をしたのだ。


「かもしれませんが、少し違うような気もするんです。」

「なるほどね。それで落ち着きがないというわけか。」

「はい、私らしくないですよね。」


いつものシャーロットなら毅然とした態度で問題を処理していっているから意外といえば意外である。しかしわずか11歳ながらこの国の第三王女とはいえ上の王子や王女達に比べて《勇者》としての責務をこなしている方が異常なのではないだろうか。立場上弱みを見せることができないのかもしれないが、たまには少女らしく悩むことがあってもいいのだ。


「たしかにね。でもたまにはそういう時があってもいいんじゃないかな。少なくともここにいる皆の前ではね。だって俺達は君の騎士団のメンバーなんだから。」

「そうですね。ユーリに話して気持ちがスッキリしました。やはり私の騎士団の団長はユーリに任せるべきだと再認識しました。」

「えっ?!俺が騎士団長に?!」

「はい。向いていると思いますよ。」

「いやいや、というかシャーロットがやるんじゃないの?」

「私の騎士団というだけで私が騎士団長をやるわけではないですよ。王女の立場もありますし。」


でっきりシャーロットが騎士団長をやるものだと思っていたがまさか俺に騎士団長をやらせようとしていたなんて驚きである。言われてみればシャーロットは王女としての仕事もあるし騎士団長に専念できないというのはわかるんだがなぜ俺なんだろう。


「さて、そろそろ続きやりますよ。」

「そうだね。」


まあいい。今は騎士団長戦に専念しないと。それから修行の日々は進みついに【D・B(デュエル・ブレイク)】騎士団長戦の当日になった。ここまで皆準備してきたんだ、そう簡単にやられるつもりはない。俺達が会場に着くとすでに騎士団長の6名は揃っていた。


「久しぶりだなユーリ。」

「はい、セシリアさん。それに皆さんも。」

「今日はどんな戦いになるか楽しみだにゃ!」

「ほっほっほ。若者のパワーをもらおうかの。」

「俺は若者をしごいてやりたいがな!」

「クリスさんそれではまるで悪役のようですよ。」


談笑も軽くすませ、騎士団長側にも対戦組み合わせを発表する。そして順番はくじ引きによって決められた。


一回戦 ブランシェ・アンバー VS フルー・フルーラ & ウール・レディ

二回戦 クリス・ドラグニス VS デリラ・バルムンク & カルロス・クライフ

三回戦 アルフレッド・マーティン VS エレオノーラ・スカーレット & コータ・イマイ

四回戦 オリバー・マイルズ VS シャーロット・セルベスタ

五回戦 セドリック・モルガン VS アリア・リーズベルト & ディラン・アレストール

六回戦 セシリア・グランベール VS ユーリ・ヴァイオレット


ちなみに今回試合の審判をしてくれるのはリリス先生である。彼女は俺達の学年の先生であるが、授業はないに等しいので元も子もない言い方をするならば暇なのである。今年は新入生も多いらしく他の先生方は凄く忙しそうにしている中、三年生の担当だからとはいえ何もしないというのは生真面目なリリス先生には耐えられないのだろう。ちょうど弟のオリバーさんもいることだしな。一回戦が始まるため俺達は観客席の方に移動する。


「それでは一回戦ブランシェ・アンバー VS フルー・フルーラ & ウール・レディペアの試合を行います!」

「ふむふむ、君達からはやる気満々の匂いを感じるにゃ!」

「一生懸命やらせていただきます!」

「どうぞお手柔らかに。」

「それでは一回戦………開始!」

「先手必勝にゃ!」


ブランシェは開始の合図とほぼ同時にウールへと襲いかかる。まずはじめにサポートのウールを倒しておこうという判断からだろう。ブランシェさんの能力は未知数な部分が多いがセシリアさん曰く嗅覚が鋭いらしい。要するに危険を察知する能力が高いということだ。こちらの情報は一切なしで戦うというのも向こうのハンデではあるが歴戦の猛者である彼らにそれはあまりハンデにならないだろう。


「『蜃気楼(ミラージュ)』!」

「にゃにゃ?!幻覚かにゃ?」

「『風の拳(エア・フィスト)二重(ダブル)』!!」

「おっと!」


攻撃されたウールは『蜃気楼(ミラージュ)』による分身体であった。それに驚いている隙にフルーは攻撃を仕掛ける。しかしブランシェはそれを体を大きく捻らせることで回避した。あの体制からガードせずに躱せるとは凄く柔軟性のある身体である。


「にゃるほど~いいペアだね。それに私の嗅覚を誤魔化せる程の魔法ただの分身じゃあにゃいね。そしてすかさずそこを狙う感じ勝ちに来てるということが感じれていいにゃ!」

「それはどうもお褒めいただきまして。」

「ありがとうございます。」

「もうちょっとギア上げてもいいかにゃ。」


ブランシェはその場で軽くジャンプすると姿を消す。その速さは目で追えなかった気付いた時にはフルーの横に移動していた。『風の見切り(エア・クリティカル)』を発動していたフルーはそれに一瞬反応することが出来たがガードが間に合わず横腹に掌底を受けてしまう。


「ぐはぁ!」

「フルー!」

「他人の心配している暇あるのかにゃ?」

「くっ!『蜃気楼(ミラージュ)』!」

「同じ手は通じないにゃ!」

「何?!ぐわぁ!」


フルーもウールも吹っ飛ばされて立てないでいる。だがブランシェははあえてそこを詰めるような真似はしない。俺達の修行も兼ねているということだろうがまだまだ余裕といった感じだ。ウールの『蜃気楼(ミラージュ)』はブランシェの嗅覚を騙せるほどの擬態はできたが、弱点を突かれてしまった。それはで『蜃気楼(ミラージュ)』出した分身から遠く離れることができないということである。遮蔽物のないこのフィールドでは隠れることもできないし、発動しているということはすぐ近くにいるということなので分身体であると考えた上で攻撃すればすぐに次の攻撃に繋げることができ確実に本体を狙える。しかし初見であれば確実に術中にハマるだろう。今回の場合も初見ではあるが条件が悪いという他ないな。


「君は少し魔法に頼りすぎだにゃ。そして私の様に単純な相手でもそれが通じると思い込んでいる所が驕りなのにゃ!そっちの女の子筋はいいけどシンプルな能力だからこそ大事なのは基礎なのにゃ、周りの魔法使いに影響されて自分のスタイルを見失ってないかにゃ?」


二人はゆっくりと立ち上がりブランシェに言われたことを考える。図星であった。ウールは自分の魔法である『蜃気楼(ミラージュ)』に絶対の自信があるが故にそれに頼り切り、派生の技があるとはいえ他に武器を持っているわけではない。それに明らかな格上はともかく大抵の相手には勝てると思っているのも事実である。フルーは周りと比べて自分は劣っていると思っている。《勇者》やら《大賢者》やらいるので仕方のないことだがたしかに何か大きな力を手に入れることばかり考えていた。


「たしかにそうかもしれません。」

「私も…だけど…!今ので吹っ切れました!」

「うんうん。いいことにゃ!全力でぶつかってくるにゃ!」

「「『風の拳(エア・フィスト)二重(ダブル)』!!」」

「『水の弾丸(ウォーター・ブレッド)二重(ダブル)』!!」


ブランシェさんは戦いながら二人の弱みを的確に読み取り指摘をする。二人共それをしっかりと胸に刻み再び戦闘は始まる。


「二人共動きが良くなりましたね。」

「うん。元々パフォーマンスを発揮できていなかったというだけだけどね。」

「本当の勝負はここからというわけか。」

「しかしブランシェさんはまだまだ余裕そうだね。」

「厄介なのは彼女に攻撃を当てるということだな。」


ディランの言う通りブランシェさんにどう攻撃を当てるかというのがポイントである。彼女の俊敏性や柔軟性、何より嗅覚で相手のことを読み取り魔法や攻撃を察知する能力がある。経験のなせる業であるがこれを突破できないと二人に勝機はないだろう。


「『水の弾丸(ウォーター・ブレッド)二重(ダブル)』!!『水の弾丸(ウォーター・ブレッド)二重(ダブル)』!!」

「攻撃が雑になってるにゃ!」

「『風の弾丸エア・ブレッド』!『風の弾丸エア・ブレッド』!」

「こっちもかにゃ!それじゃあ捉えきれないにゃ!」


いやこれでいいんだ。ブランシェさんはウールの狙いに気付いていない。ただいたずらに魔法を発動しているように見えるかもしれないがこの狭いフィールド全体を囲むようにして魔法を放っている。あの魔法を使用するにはいくつか魔法を発動させておく必要があるのだ。だからフルーも遠距離の魔法に変え、ウールが何かを狙っているということをブランシェさんに悟らせないために。


「『蜃気楼(ミラージュ)物語(ヒストリー)』!」

「にゃ?!どうして四方から魔法が?!」

「当たれ!」


バリン!


ブランシェの胸についている校章が一つ砕けた。


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