第二十話 聖騎士祭3日目【D・B《デュエル・ブレイク》】②
「次のユーリの相手は…」
「ウールさん曰く《青》クラスの問題児ですね。」
「大丈夫かな…。」
俺と《青》クラスの選手は控室から競技場へと向かう。
「さあ、次の試合は《紅》クラスと《青》クラスです!」
「やあ、僕はデリラ・バルムンク。ウールから君のことは聞いてるよ!ユーリ君。僕のことはデリラでいいから。」
「そうだったんだ。デリラ、いい試合にしよう!」
「もちろん!」
第3戦目は《青》クラスのデリラ・バルムンクとの戦いだ。この子がウールの言っていた問題児か。そんな感じはしないが…。
「それでは…試合開始!」
「行かせてもらうよ!」
デリラが持ち込んでいるのは両手剣だ。小さい身体に大きな剣というアンバランスさが少し戦いにくい。
「『創造・剣』!」
「そんな細い剣で耐えられるかな?『押切』!」
俺の剣はデリラの両手剣に砕かれた。こんな小さな体のどこからこんなパワーが出るのだろうか。それともそういう能力なんだろうか。
「やっぱり耐えられなかったね!」
「そんないい笑顔で言われても。」
「次はどんなことをしてくれるのか、な!」
「くっ、『炎の球』!」
変わらず正面突破してくるデリラに向かって俺は、『炎の球』を放つ。これで少しはためらうだろうと思ったが…考えが甘かった。炎の中を突っ切ってきたのだ。
「『斬り払い』!」
「『土の盾』!」
「甘いよ!」
「ぐっ!!!」
俺は咄嗟に盾を出すがデリラの両手剣は勢いを緩めることなく、脇腹に入る。盾を間に挟んだので斬られてはいないが、殴られた鈍い痛みで少し足元がふらつく。俺は『治療魔法』をかける。
「へぇ、『治療魔法』も使えるんだ!まだまだ戦えそうだね!」
「デリラもね。あとちょっと嬉しそう。」
「うん!ウールには《戦闘狂》ってよく言われる!でも実際私の能力がそうだから仕方ないんだよ!」
「《戦闘狂》?」
デリラは再び俺に攻撃を仕掛けてくる。俺はそれを避けた、、、つもりだったが制服を掠める。少し違和感を感じた。なんかさっきよりスピード上がってないか?
「『身体強化・二重』!!!」
「ユーリ君も上げてきたね!私も本気で行くよ!」
「来い!!!」
生半可な剣を作っても簡単に破壊されてしまう以上、無駄に魔法を使うのは悪手だと考えた俺は『身体強化』を使い、デリラよりも素早く動き校章を直接狙うことにした。
「やぁぁぁぁぁ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
俺はデリラの剣を躱して、身体に掌底を打ち込む。だが彼女は動きを止めることなく、剣を俺に振り下ろす。それをギリギリで躱すが、また制服を掠める。『身体強化』を使ったのにも関わらずだ。つまり剣を振るスピードが早くなっている?もしかしてデリラの能力って…だったら早く決着を付けなければ。
「『炎の球・二重』!!!」
「ちょっと手数が増えたくらいじゃ通用しないよ!」
デリラは構わず『炎の球』に突っ込んでくるが、俺も炎の中に突っ込む。
「『魔力弾』!!!」
「その程度!」
炎が消え、俺に両手剣を俺に振り下ろす。だが抵抗はしない俺を見てデリラは剣を止める。
「…?どうしたの?」
「もう勝負は着いてるよ。」
「そこまで!…勝者、《紅》クラス!」
「えー?僕はまだ戦えるよ!」
「デリラ、夢中になりすぎて気付いてないかも、知れないけどそれ。」
そう言って俺はデリラの胸元に指を向ける。不思議そうな顔をしているがどうやら気付いたようだ、自分の校章が破壊されているということに。
「本当だ!いつの間に?」
「さっき炎の中に突っ込んだ時に炎に紛れて『魔力弾』を当てたんだよ。」
「えーもっと戦いたかったのに〜。」
「続いては《黃》クラスと《紫》クラスの試合です。」
それにこれ以上デリラと戦うのは危険であると俺は感じていた。戦闘中に感じていた違和感、多分デリラの能力は…
「それに君は多分だけど戦闘の時間が伸びると身体能力が上がる能力じゃないか?」
「え!何でわかったの?」
「最初は手を抜いてるだけかと思ったけど、『身体強化』を使ったにも関わらず攻撃が避けれなかったからもしかしてと思っただけだよ。」
「さすが、魔族を倒しただけのことはあるね。正解だよ、私の能力《戦闘狂》は戦闘をしていると身体能力や魔力が上がっていくんだ。戦い好きな僕にピッタリな能力だよね!」
なるほど、まさに《戦闘狂》ってことね。ウールが手を焼くのもわかる。早めに決着を付けることができてよかった。
「また戦おうね!」
「しばらくは遠慮したいかなぁ〜、あはは。」
「結構危ない試合だったね。」
「はい。ルールに救われましたね。」
俺は控室に戻り休息を取る。ここまで3勝、そしてディランには悪いが次の《黃》クラスと《紫》クラスおそらく勝つのは《紫》クラスだろう。おそらく彼女はかなりの実力者だろう、試合の結果からもわかるが何か隠しているのは間違いないだろう。そう考えている内に係の先生が試合結果を書きに来る。やはり勝ったのは《紫》クラスのようだ。だが秒速で決着が着いてない辺り、ディランも健闘したのだろう。
「続いては《翠》クラスと《青》クラスの試合を行います!準備してください。」
まあこの試合は結果がわかる。間違いなくデリラが勝つだろう。これでデリラは2勝2敗になるから順位的には3位か。俺と《紫》クラスの試合で【D・B】の優勝が決まるということだ。そういえば【S・Lスピード・ランドスケープ】の分はどうするんだろうか?仮に俺が優勝すると《紅》と《紫》クラスの得点は並んでしまう。まあそれは勝ってから考えよう。
「続いては《紅》クラスと《紫》クラスの試合を行います!準備してください。」
よし。これが最終試合だ。気合を入れて行こう。
「さあ、次の試合はここまでお互いに3勝している《紅》クラスと《紫》クラスです!この試合で【D・B】の優勝者が決まります!」
「俺はユーリ・ヴァイオレット、いい試合にしよう。」
「…よろしく。」
次の試合はないから後のことを気にせず全力で戦うことができる。それにこのフードを被った少女の実力が謎に包まれている以上油断はできない。
「これで優勝が決まりますね。」
「うん…頑張ってユーリ。」
「それでは…試合開始!」
フードの少女は試合開始と同時に俺の校章を狙ってくる。使用している武器は細剣だ。
「『身体強化・三重』」
「!!!」
俺は咄嗟に『身体強化・三重』を発動して彼女の細剣を躱す。だが今のは危なかった、早すぎて剣がまったく見えなかった。
「これを避けたのはあなたで二人目です。」
「流石に決勝まできて一瞬で決着を付けさせるわけにはいかないからね。」
「先程の方も自身に雷魔法を使って回避していました。ですがこの技で落としましたよ!『千の突き』!!!」
彼女の細剣はさらに速度を上げる。これはヤバい!もう一段階ギアを上げるしかない!
「『身体強化・四重』!!!」
俺はなんとか彼女の技を避けきった。初めて多重展開を『四重』まで使うことができた。これも魔族との戦いのおかげかもしれない。
「まさか『四重』まで使えるとは。驚きました。」
「いや、使ったのは今が初めてだよ。最近ちょっとした成長の機会があってね。」
「魔族討伐…ですね。本気で行かせていただきます、あなたの本気も見せてください!」
「充分本気さ。『創造・贋聖剣』!!!」
「『付与魔法・攻撃』!!!」
『付与魔法』とは人や剣などの武器に魔法的な効果を付与する魔法である。『攻撃』はその名の通り攻撃力を上げるという効果である。小細工では決着はつかないだろう、この一撃で決める!!!
「行くぞ!『雷撃一閃』!!!」
「『剣神の一閃』!!!」
俺の剣と彼女の剣がぶつかる。会場が光りに包まれる。
「………参りました。」
そう言った彼女の細剣は砕け、校章は破壊されていた。俺は勝利した。
「優勝は…《紅》クラスです!!!」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「やった、やったよ!エレナちゃん!!!」
「はい!やりましたね!!!」
アリアとエレナは抱き合って喜ぶ。
こうして【D・B】の優勝決定戦は、俺の勝利で《紅》クラスの優勝となった。最終試合である《翠》クラスと《黃》クラスは秒速で試合が終了した。結果はもちろん《黃》クラス、ディランの勝利だ。
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