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第二話 魔法を使ってみよう

さて…これからどうしたものか…。自分の能力について俺はどうするべきか悩んでいた。《7人目の勇者》というのがどんな能力なのか、正直まったく検討はつかない。ただ明らかに普通じゃないことだけはわかる。なんといっても《6人の勇者》なのだから7人目などいないはずなのだから。


「ユーリはこれからどうするの?」

「うーん、とりあえず能力はあまり公にせずにやり過ごそうと思う。」

「そうだね。私も誰にも喋らないようにする!」


どうなるかわからない以上あまり言いふらさないようにしておく必要がある。珍しい能力や有名な能力はトラブルにも巻き込まる危険が高いからな。信用できる人かどうか見定めた後にしか話せないだろう。


「俺のことはともかく、直近で心配なのはアリアの方だよ。」

「《大賢者》…だもんね…。」


アリアの能力である《大賢者》は勇者伝説に関する話にも出てくるほどかなり有名な能力である。その力はありとあらゆる魔法を使うことができるとされている、実際に《大賢者》の能力を持つ人も現代にいるらしい。そしてもっとも《勇者》に近い能力だと言われているのだ。修道女(シスター)にアリアが《大賢者》であることを知られてしまっている以上、間違いなく王都には連絡がいっているはずだ。


「連絡がいっている以上は、まず間違いなく王都から使者がくると思う。」

「そ、そんな…どうしよう…。」


そういうと彼女は下を向いて黙り込んでしまう。この村からも毎年戦闘系の能力を授かった者は王都の学園に通うことになっている。学園に通うということは国を守る騎士団員になる確率が高い、必ずならないといけないではないが《大賢者》では騎士団員にならなくても国の管理下に置かれるのは間違いないだろう。戦いを望んでいないアリアはショックなのだろう。


「大丈夫。なんとか俺もアリアと一緒に王都に行くことができないか考えてみるよ。」

「うん。ユーリと一緒なら私怖くないよ。」


アリアは俺が付いていくと言うと決意が固まったようだ。しかし俺の能力名を偽るのはともかく、それなりの力を付けないと王都に付いていくのは難しいだろう。それに色々なことからアリアを守ることもできない。


「とりあえず修道女(シスター)に俺の能力を偽って報告した後に、森でも行って実際に《大賢者》の能力を見てみようよ。」

「そうだね。ユーリの能力も何かわかるかもしれないし。」

「決まりだね。」


俺達は修道女(シスター)の所へ行き俺の能力は戦士系の能力者だったと偽った後、実際に能力を見てみるためにアリアと一緒に森に来た。


「ふぅ、なんとか森に来れたけど修道女(シスター)にはまいっちゃうね。」

「ユーリのこと全然眼中にないって感じだったもんね。」


先程倒れてしまったため、俺の能力を報告しに行ったのだが…。


「あらユーリ目覚めてたのね、よかったわ。戦士だった?そうなのね頑張って。」


だそうだ。まあアリアの《大賢者》を見てしまった後ならば仕方のないことなのかもしれない。戦士の能力はそんなに珍しいものではなくむしろ多い部類だ。特にコメントすることもないのだろう。それに俺が倒れてしまったことも別に珍しいことではないらしい。修道女(シスター)曰く、緊張やら前日の寝不足やらで毎回一人か二人は儀式中に倒れる者はいるそうだ。まあ気持ちを切り替えて能力を試してみることにしよう。


「アリア《大賢者》の能力を使ってみたら?」

「うん。やってみる!」


そういうとアリアは目を閉じて手を前に出した。彼女の周りには光が集まり、それは魔法陣を描いていた。


「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」


アリアがそう叫ぶと魔法陣から炎の矢が3本放たれて目の前の岩を砕いた。聞いていたよりも目の前で見た魔法の凄まじさにに俺は驚きを隠せなかった。


「凄いよアリア!!」

「はぁ…はぁ…ふー、ありがとうユーリ。」

「まさか岩を砕くとは思わなかったよ。」


魔法の習得にも個人差があると聞いていたが、《女神の天恵》が終わってすぐにこれだけの魔法を使えるというのはかなり凄いんじゃないだろうか。アリアは今まで魔法というものに触れたことがないのに、さすが《大賢者》である。しかしどうやってやったんだろう?


「それにしても『炎の矢(フレイム・アロー)』なんて魔法よく知っていたね。」

「うん、目の前の岩にぶつける魔法って考えたら頭の中になんとなく浮かんできたの。」

「そうなんだ。流石《大賢者》だ、凄いね。」

「でも思ったより力が抜けちゃった。これが魔力?なのかな。」


魔力とは魔法を使うと消費する物で、魔力量に個人差はあれど誰の体の中にも流れているものらしい。だが実際に魔法を使える能力を持っていないと意味がない代物だと思う。


「頭の中に浮かんでくるか…。」

「…?」


僕も目を閉じて手を前に出してみる。何か目の前の岩を砕く魔法を。………何も思い浮かばない。やはり《大賢者》特有の能力なんだろうか?そこで俺はふと思い浮かんだ疑問があった。それならさっきアリアに見せてもらった『炎の矢(フレイム・アロー)』はどうだろうか?先程の光景を思い出してみる。手を前に出し目の前の岩にぶつける炎の矢をイメージする。


「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」


俺の手から放たれた炎の矢は先程のアリアの物より大きく目の前の岩を砕きその後ろの木々も焼き払っていた。その凄まじさに思わず目を見開いた。


「す…凄い魔法…。」


あまりの勢いにアリアも驚いていた。先程のアリアが発動した『炎の矢(フレイム・アロー)』とは明らかに威力が違っているのは素人目にもわかる。もしかして…これが《7人目の勇者》の能力なのだろうか?だがこれならもしかして…。


「うっ…。」


急に目の前が歪み、俺は思わず膝をついた。身体から何か力のような物が抜けていくのを感じた、これが魔力?魔法を放った影響なんだろうか。


「たしかに結構力が抜けるね。」

「大丈夫…?」

「な、なんとか…。でも今日はここまでにしておこう。」


流石に今日はこれ以上魔法を放つことは無理そうだ。アリアも見た目ではわからないがかなり疲れていることだろう。


「そうだね。今日は帰ろう。」


俺達は少し休憩したあと、帰路についた。今日の夕食はなんだろうか?などと考えているとふと母さんのことを思い出す。あれ?そういえば俺、母さんに森に行く話したっけ?よく考えてみれば黙ってでてきたから言ってないような…そして俺達は村まで戻ってきた。まあ無事に帰れたしよしとしよう。


「ユーリ!アリアちゃんも!今までどこに行ってたの!」


だが、そんなに甘くはなかったようだ。俺達がフラフラな姿で帰宅すると母さんの説教が始まった。それもそういなくなったかと思えばこんなフラフラで帰ってきたのだから。


「「ごめんなさい。」」

「二人共心配かけて…。儀式から帰ってきたかと思えばユーリは意識がないし、少し目を離したらアリアちゃんも一緒にいなくなってるし、あなた達になにかあったらお父さんやアリアちゃんのご両親に申し訳が立たないわ…。」


どうやら思っているよりも心配をかけてしまったらしい、申し訳ないことをした。母さんは女手一つで俺とアリアをここまで育ててくれた人だ。これからはもっと心配をかけないようにしないといけないな。


「本当にごめん…母さん。」

「もういいの、二人が無事なら。さあ、二人共早く上がって食事にしましょう。」


俺は迷っていた母さんには俺の能力のことを話すべきなのか。そう思っていると…。


「ユーリ、教えてあなたの能力のこと。」

「えっ…?」

「あなたの顔見ればわかるわよ。何かあったのよね?」


母さんには何でもお見通しのようだ。隠し事はできないな…俺は自分の能力である《7人目の勇者》のこと、森での出来事を話した。


「そうだったのね…。やっぱり…血は争えないのかしらね…。」

「…?どういうこと?」

「あなたのお父さん。それからアリアちゃんの両親についても話す時がきたようね。」

「私の両親も?」

「ええそうよ。」


俺の父さんとアリアの両親については昔魔物に襲われて亡くなってしまい、母さんは生まれたばかりのアリアとまだお腹の中にいた俺を連れてこの村に来たと聞かされていた。


「私達は昔王都の学園に通っていてね。そこでアリアちゃんの両親とあなたのお父さんに出会ったの。毎日充実した日々だったわ。そして学園を卒業した後、私達は王都の騎士団に所属していた。毎日魔物との戦いに明け暮れていた。そんな中お父さん、ユートと私の間にユーリ、レストとマリーの間にアリアちゃんができた。」

「そうだったんだ…。」

「だけどある時魔物の《大進行(スタンピード)》が起こった…。私はまだユーリがお腹の中にいたから戦場には行けなかったけどユートとレストは最前線でマリーはアリアちゃんを産んですぐだったけれど後方部隊で傷ついた騎士達の回復に勤めていたわ。でも予想以上の魔物の強さに騎士団は全滅した…。」

「「…っ。」」

「魔物の《大進行(スタンピード)》自体は騎士団が全滅したのと同時に収まったから被害はそれ以上増えなかったの。どうして収まったかは未だにわかってないみたいだけど。」


俺とアリアは初めて聞かされる事実にただ黙って聞くことしかできなかった。でも俺は引っかかる部分があった。


「でもどうして《7人目の勇者》だって聞いて血は争えないと思ったの?それだけなら普通に珍しい能力でも不思議じゃないってとこまではわかるんだけど…。」


実は子供の能力は遺伝しないと言われている。親がどんな能力だろうと産まれてくる子供とは何の関係もないのだ。だから母さんの言葉には疑問を持った。


「それはあなたのお父さんが《迷い人》だったからよ。」

「《迷い人》?」


俺は今日一日だけで色々な情報が頭に入りすぎてすでにパンクしそうであった。


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