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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
亜人間戦争編

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第百九十四話 聖剣デュランダル

ユーリは操られている亜人族を次々に《聖剣クラレント》で斬り伏せ、すぐに『治療魔法(ヒール)』を発動させることで魔族の支配から解放していた。しかしその数は多くキリがない。何か有効な手はないかと考えていた。この手の操作系の魔法は本来大多数を動かすことは難しのだ。生物には感情があり抵抗する力が働くからである。つまりこれだけの数を操るためにはそれ相応の準備が必要なはずであり、そのために魔族はオルロスに入り込んでいたのだ。だかこの支配を解く鍵があるとすれば魔族が関与していると思われる事件の中で仕掛けられた何かだとユーリは考えていた。


「はぁ!」

「アァ…。」

「ユーリ!」

「ウィルル!無事だったのか!」


ユーリが亜人族達と戦闘をしている中でウィルルと合流した。ウィルルはどうやら支配を受けていないようだった。ということは全ての亜人族が支配されているわけではないということだ。


「無事でよかった!何が起こってるんだ?」

「わからない。私達が里に戻るとすでに皆正気ではなく、導かれるようにここに向かって行ったんだ。まさか他の種族も集まって来ているとは思わなかったが…。」

「そうか。だけどウィルルがそうであるように皆んなが操られているわけじゃないってことだね。それならなら時間はかかるけど支配から解放することが出来る!ウィルルはできる限り戦力を削いでくれ!」

「わかった!」


感知が苦手というわけではないがこれだけの多種多様な亜人族がいると正確な魔族の魔力を感じるのは難しい。それこそ一対一で近付く必要がある。だから全ての亜人族が操られていると思っていたがおそらくウィルルのように操られていない者もいる。実際どれくらいの人数が操られているかはわからないがこれなら思ったよりもいけそうだ。しかし、魔族の魔力を感じられない亜人族同士にしてみれば、他の種族がいきなり戦争を仕掛けてきたと思っているかもしれない。魔族の目的はその分断だろう。しかしわからないのは今まで魔族は割と人間族に対する敵意を持っていたのになぜ魔族同士を戦わせるのかというところだ。


「何か目的があるのか…?」

「何がでしょう?」

「魔族の目的だよ。魔族は基本人間族と敵対してるから。」

「そうなんですか…。でしたら亜人族の皆さんを操り戦わせる意味がわかりませんね。」


何も理由がないわけではないというのは考えにくい。以前ジェマ達が獣人族の過激派に追い出され執拗に狙われたのも間接的ではあるが魔族の仕業であった。何か繋がりがあるように感じる。しかし今は目の前のことに集中しなければ。


◇◇◇◇


ジェマは苦戦を強いられていた。相手は並みの剣士ではなく明らかに自分よりも格上だ。それにあの剣にも何か隠された秘密がありそうだ。


「相変わらず話は通じねぇし、血も出ねぇバケモン相手は骨が折れるぜ。」

「………。」


先程ジェマの魔法が剣士を貫いた時、血が全く流れなかった。普通ならあり得ないことであるが、ジェマの頭の中にはある可能性が浮かんでいた。あまり魔法に詳しいわけではないが、死体を操るという魔法があると聞いたことがある。それならばこの状況に説明がつく。しかし、わからないのはあの異常なまでの剣技である。生きている人物ならば理解できるが死人にも関わらず、洗練された動きができるわけがない。操ることはできてもそれを再現することなど本来はできないはずなのだ。


「ちっ、仕方ねぇ!悪いが腕や足の一本くらいは落とさせてもらうぜ!」


いくら死人とはいえ傷付けるのには抵抗があったが、そんな悠長なことを言ってられるだけの余裕がジェマにはない。ここは本気で相手をする必要があると考えたのだ。


「『砂の刃(デザート・エッジ)』!」


ジェマは再び接近戦へと持ち込む。先程攻撃が通ったことは事実なのだ。ならば得意の接近戦に持ち込んで好機を作ろうと考えた。しかし剣士はまだ本来の力を発揮していなかった。


「何?!」


ジェマが真っ直ぐ剣士に向かっていった瞬間、視界から剣士の姿が消えていたのだ。急いで魔力の位置を探る。そこら中に剣士の魔力を感じる、つまり隠れたわけではなく目に捉えられない速さで動いているということだ。だが攻撃するには必ず剣で斬りつける必要があるはすだ。


「『砂の壁(サンド・ウォール)』!」


ジェマは自分の周りを砂で囲んだ。防御の意味もあるがもし剣士が近づいてきたら必ず砂が舞う。それで位置を探ろうと考えたのだ。しかし剣士はすでにジェマと砂の壁の間に入り込んでいた。気付いたときにはもう遅かった。ジェマの首元めがけて剣は振り切られた。


「しまっ…」


だが剣士の剣は空を切った。ジェマは服を捕まれ剣のギリギリ当たらないところまで後ろに引っ張られたのだった。そのまま剣士と距離を取る。ジェマは自分を助けた人物の顔を見るがそれが誰なのかわからなかった。厳密には面識はあるが、会話をしたこともなければジェマがあまり人の顔を覚えないタイプであるということもある。


「ギリギリ間に合ったようだね。」

「ああ助かったよ。ところであんた誰だ?」

「えっ?」


男はショックを受けていた。どちらかといえば自分は有名人であり、特に女性からのウケはいいと自覚していたからだ。容姿も悪くないし、何よりこの若さで騎士団長という立場にいる人物など他にいないだろう。現在同じ騎士団長の立場にいるのは自分以外の男は大抵おっさんかじいさんであるから尚のこと彼には注目が集まっている。にも関わらず目の前の彼女は自分のことを知らないと言っているということに傷付いていた。得意の早口を忘れるくらいには。


「僕は翠狼騎士団、団長オリバー・マイルズ。事情はドラゴンちゃんから聞いて知ってるよ。もうすぐアリア君とエレオノーラ君もここにくる。」

「てことは増援か。助かったよ。」


オリバーは剣士の方へと切り替える。現在の状況をあまり把握していないが、たまたまこの場面に遭遇したことで彼女を助けることができた。あと少し遅かったら危なかった。そしてこの剣士どうやら死体を操られているというところまですぐにわかったそれが魔族の仕業であろうことも。だがそれとは別にどこか違和感を感じていた。初対面ではないような…そして腰に携えている剣を見てオリバーは確信した。


「まさか…前騎士団団長のローランさんなのか?!」

「前騎士団団長?そういえば死体が盗まれたって話あったな。」

「やはり魔族の仕業だったようだね。」


オリバーには剣士の男に見覚えがあった。少し、いや生前に会った時よりも死体なのだから当然印象は違うが間違いなく前騎士団長ローランだった。それに腰に携えている剣、あれはローランの愛剣である《聖剣デュランダル》だった。しかし《聖剣》としての力は失われているようで《聖》属性の魔力は感じない。しかし、得体のしれない何かをオリバー感じていた。


「そしてあれは《聖剣デュランダル》、《聖剣》としての力は失われているようだけど何か不吉な物を感じる。気をつけるんだ。」

「見りゃわかるさ。あんな剣見たことねぇよ。」

「本来《聖剣デュランダル》は魔力を込めることができず剣に纏っている《聖》属性の魔力のみなんだ。その代わり絶対に刃こぼれすることがなく、折れず、斬れぬものはないと言われていたそうだよ。僕も実際に戦ってるところを見るのは初めてだ。」

「魔力を込めずに魔力を込めた剣以上のスペックってわけか。そりゃ脅威も感じるわけだ。どうやって戦う?」

「僕はスピードには自信がある。君にはサポートをしてもらう。」

「わかった。」


ジェマは素直にオリバーの言うことを聞いた。彼が騎士団長かどうかは知らなかったが感じている雰囲気や佇まいは並のレベルではない。少なくとも自分よりも上だと感じたため自分はサポートに回ることにした。


「はっ!」


オリバーはローランへと斬りかかる。ローランもそれを正面から受けて立つ。オリバーの使用している細剣は特別な物ではない、それは彼の戦闘スタイルが故である。オリバーはローランの攻撃を受け流す。彼は攻撃をいなし、風を自身や剣に纏わせて手数で圧倒するのが基本的なスタイルだ。剣を使用しないフルーに近いどこにでもありふれた魔法の使い方だ。ただ彼の場合騎士団長になるだけの圧倒的な速さがあるのだ。


「剣が目で追えない。サポートする隙もねぇじゃねぇか。」


ジェマはオリバーの剣がまったく見えなかった。あまりの実力差にサポートをする暇がない。だがその攻撃を受けているローランの方に目を向けると思ったよりもダメージが入っていない。いや厳密にいうならば傷が全くついていないのだ。


「まいったね。これが《聖剣デュランダル》の力ってわけか。」

「どういうことだ?」

「自分自身の強化もできるってことさ。斬りつけているのに傷が付かない。だが魔法を使っている様子もないところをみると《聖剣デュランダル》の方の力だってことさ。」

「じゃあさっきアタシが傷付けれたのはどうしてなんだ?」


ジェマはオリバーに先程ローランに魔法を直撃させたことを詳細に説明した。オリバーは少し考え込むとなるほどと一言つぶやいた。


「意識外からの一撃ということだね。」

「つまり?」

「あの『身体強化(フィジカル・ブースト)』のようなものは常時発動しているわけじゃなくて、自分でオンオフしているんだ。だから不意打ちを決めることが出来ればダメージを与えられるということさ。」

「なるほどな。だけどダメージは入らないぜ?」

「拘束するというのが一番だろうね。そう簡単ではないだろうけど。」

「なるほど、それならいい案がある。」


ジェマはある作戦を思いつく。そのためには少し時間がかかるので、オリバーに再びローランの相手をするように頼む。


「わかった。それでいこう。」

「行くぜ!」

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