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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
亜人間戦争編

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第百九十話 溢れ出る魔力

ユーリは内心焦っていた。なぜかというと正直顔面で受け止めたはいいものの、流石に無傷というわけにはいかず傷がついていたからだ。いくらジェマの魔力を借りたからといって『身体強化(フィジカル・ブースト)』だけではライガの一撃を防ぐことが出来ていなかったからである。そのためユーリはこっそりと『治療魔法(ヒール)』で回復していた。幸いなことにライガの一撃を止めたことに皆驚いており、ユーリが『治療魔法(ヒール)』を使ったことには気付いていない。


「ま、まさか…」

「ライガの一撃を止めたじゃと…?」

「あ、あり得ねぇ!!!」


元々発想だけはあったが土属性の魔力を使った『身体強化(フィジカル・ブースト)』はなんとか上手く使えたようだ。だがこの状態で動くことはやはり難しそうである。硬化するという土属性の特性を活かしているがそれ故に動くことも難しい。維持しなければできないことはないがそればらば通常の『身体強化(フィジカル・ブースト)』をした方が早いからな。


「これで証明できたかな。俺が《勇者》であるということ。」

「皆も納得するだろう。」


ヤーンがちらりと皆の方を向く、反対する者はいないようだ。俺は実はこの場には他にも人間族の《勇者》をいることを説明し、この場に呼び寄せても良いかを尋ねる。先程の衝撃でまだ少し呆けていたが許可は貰えたのでコーデリア達を手招きしてこちらへ呼び寄せる。


「まさかこんな可愛らしいお嬢さんたちも《勇者》とはね。」

「たまげたもんだ。」

「で何がどうなってるんだ?」


俺はここまでの話を三人に話す。アリアやエレナに話せば相変わらず無茶をするとお説教をされそうだがここにいるメンバーはなぜか納得してくれたのでよしとしよう。だが本題はここからである。すでにこのオルロス国に入り込んでいるのは間違いない魔族だがどうやって対処すべきか。ダークエルフ族とエルフ族の軋轢はすでに魔族によって引き起こされている。するとドワーフ族の代表が口を開く。


「実はここで話したかったことなんだが、ドワーフ族の作った武器が何者かに盗まれている事件が多発していてな。他の種族に問いただしてやろうと思っていたがもしかしたら魔族の可能性もあるな。」

「実は私達も何人かの子が襲われて怪我をしていたの。他の種族の仕業かと思っていたけど…。」

「ドワーフ族にハーピィ族もか。」

「たしかに可能性としてはありますね。」

「相変わらず姑息なことをするな。」

「…獣人族の間でもいざこざが多発してる。」

「そうか。情報をくれてありがとう。」


ドワーフ族やハーピィ族、獣人族の間でも魔族の仕業と思われている。事件は発生しているようだ。先程まではあれだけ敵対心むき出しだったライガが話してくれた。少しは認めてくれたということかな。


「もし良ければ俺達に調査をさせてもらえないか?俺には魔族の魔力を探知することができる副技能(サイドセンス)がある。魔族の仕業かどうかはすぐわかる。」

「ドワーフ族は構わないぜ。個人的にお前に興味があるしな。」

「ハーピィ族もいいよ。」

「悪いが俺達は断らせてもらう。事件のことを調べるだけなら他の種族だけで大丈夫だろう。」

「理由を聞いても?」

「お前らが人間族だからだよ。俺みたいに飛び掛かってくる奴をいちいち相手にするわけにはいかないだろ。」

「ライガの言う通りじゃ。協力できなくて済まないが…。」

「いや大丈夫だよ。そういう理由なら仕方ない。」


ドワーフ族とハーピィ族のところに調査に行くことが決まった。ダークエルフ族とエルフ族はすでに魔族の痕跡

があることはわかっているので問題はない。あとは魚人族とここに参加していない種族をどうするのかだけだが…。


「あとは任せる。それでは我々は帰らせてもらおう。」

「なんだあれ。」

「魚人族はいつもあんな感じだよ。」


真っ先に魚人族は席を立ち帰路へと着いた。ここまでずっと沈黙を貫いていたが、魔族の被害がないならいいのだが。


「さて我々も解散するとしよう。ダークエルフ族長殿、そういうわけだから彼女を許してやってくれないか?」

「俺からもお願いします。ウィルルは誤解されていただけですよ。それにあなた達も勘違いとはいえエルフ族に手を出しました。ここはヤーンさんの頼みを聞き入れてください。」

「ふん。仕方あるまい。」


ウィルルの誤解とダークエルフ族とエルフ族の揉め事もなんとかお互いに収めることができた。これを機に協力体制を築いていって欲しいが。その後、俺達はドワーフ族の元へと向かうことになった。ドワーフ族の町へ行く道すがら、ドワーフ族の代表が俺のことをちらちらと見ていることに気付いた。そういえばさっきも個人的に興味があるとか言っていたな。それについて聞こうと思っていた矢先に向こうから口を開いた。


「そういえば自己紹介がまだったな。俺はデンクってもんだ、一応このオルロスにいるドワーフ族のの代表なんてものをやってるが形だけのもんさ。お前も会ったことがあるかもしれないが、よその国にいるドワーフ族は多いからな。」

「たしかに俺にも何人か知り合いはいるよ。ところでデンクさんはさっき何で俺に興味があるって言ってたんだ?」

「デンクでいい。それはお前さんから感じる魔力に特別な物を感じるからだよ。《聖剣》のな。ちょっと見せてくれないか?」


《聖剣》の魔力?そんなこと初めて言われたな。実際に《聖剣》を目の当たりにしている状況であればデンクの言っていることもわかる。それほどまでに普通の剣と《聖剣》には差がある。だからこそ俺もここぞという場面でしか使わないようにしている面もある。俺はデンクに見せるため《聖剣クラレント》を魔法袋(マジック・ポーチ)から取り出す。


「ほぉ…これはまた立派な《聖剣》だな。デュランダルやレーヴァテインにも負けていないと思うぜ。」

「デンクは他にも《聖剣》を見たことがあるの?」

「あぁ。昔は《聖剣》を打とうと思って旅をしたもんだ。ローランの持つデュランダルそして南の英雄リンドの持つレーヴァテインこの二つを見て俺にはできないと思い知らされたよ。やはり《聖剣》を打てる特別なスミスの一族じゃないとな。」

「そこまで知ってるんですね。」


なるほどどうやらデンクは《聖剣クラレント》以外にも《聖剣》を見たことがあるらしい。俺はセシリアさんの《聖剣ガラティーン》しか見たことがないから他との違いはよくわからない。《聖剣ガラティーン》もそこまで真剣に見たことがあるわけじゃないしな。


「それで《聖剣》の魔力というのは?持ち主の魔力ということではなくてですか?」

「《聖剣》の魔力とはいうが厳密に言えばオーラってやつだな。《聖剣》ってのは普通の剣とは違った圧力みたいな物を感じるだろ?俺はその残り香がわかるってことさ。」

「なるほど。所持している者を見分けることができるという感じですかね。」

「まあそういうことだ。お前さんの《聖剣》は特にな。まあ原因もはっきりとわかっているが。」


たしかに《聖剣》は普通の剣と違ってあまり剣に詳しくない者が見ても明らかに異質な圧力は感じることができると思う。だが《聖剣クラレント》が特に感じるというのはどういうことだろう。しかしここで俺はふとあることを思い出す。セシリアさんの《聖剣ガラティーン》は普段から使用しているがあまり圧力のような物は感じない。これは一体どういうことなのだろうか。


「たしかに他の《聖剣》を見た時に初見で《聖剣》だと感じることはあまりありませんでした。一体何が違うんですか?」

「それはな…鞘だよ。」

「鞘…ですか?」

「ああ。《聖剣》はいくつか変わった特徴があるが、その一つにその《聖剣》にあった鞘が確実に存在するんだよ。圧力を抑えて《聖剣》だと気付かれずに相手を油断させることができたり、魔法発動時の魔力効率を上げるといった効果が期待できる。」


そうだったのか全然知らなかったな。今使ってる鞘は普通の鞘である。普段は魔法袋(マジック・ポーチ)の中に入れているから気付いていなかったがそんな弊害と利点があったのか。とはいえ普通の剣の鞘がダメなら特別な物じゃないといけないだろうがそんな当てもない。


「なるべく持ち歩いた方が《聖剣》との親和性も高まってもっと力を引き出せるようになるぞ。できるならその《聖剣》を作ってもらったやつに鞘も作ってもらえ。そっちの方が馴染むに決まってる。」

「そうですね。今度頼んでみます。」

「とりあえず俺が作った魔力封じの鞘をやるからそれに納めておけ。正式に作った物には劣るだろうが多少特別な剣くらいにまでは隠蔽ができる。」

「ありがとうございます。」

「なにもし魔族に襲われた時にゃ助けてもらわないといけないからな。見ての通り俺達ドワーフ族はあまり戦闘向きの奴はいないんだ。」


たしかに種族会議に参加したデンク含め他の二人もあまり戦闘をするタイプには見えない。戦うドワーフ族もいるのだろうが今までそれなりにドワーフ族に会っていて出くわしていないことからかなり珍しいタイプなのであろうな。ここはありがたく頂戴しておこう。


「もちろん任せてください!」

「アタシ達もいること忘れるなよ。」

「任せろ…。」

「私達でお力になれることならなんでもします!」

「ハハハ!これは頼もしい嬢ちゃん達だ。嬢ちゃん達も何か装備を見繕ってやるよ。」


そうこうしている内にドワーフ族の街へと俺達は足を踏み入れた。雰囲気はやはりガルタニアに近い物を感じる。どこもかしこも武器や装備を作っている工房という感じだ。デンクに案内されいくつか武器の盗まれたという現場を周ってみたがやはり魔族の痕跡が残っていた。


「やはりそうか。」

「すでにドワーフ族にも魔の手は伸びてきているようですね。」

「わかった、次はハーピィ族の領地だったな。気を付けて行けよ。」

「はい。何かあればすぐに連絡してください。それと鞘もありがとうございました!」

「ああ、気を付けていけよ!」


俺達は《聖剣クラレント》の鞘とその他にも優れた装備をもらってドワーフ族の街を後にした。さて次はハーピィ族の領地だ。

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