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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
クラス対抗戦《聖騎士祭》編
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第十九話 聖騎士祭3日目【D・B《デュエル・ブレイク》】①

今日は聖騎士祭3日目【D・B(デュエル・ブレイク)】が行われる日だ。競技の後は閉会式とパーティもある。俺は自分の魔力の流れや身体の体調を確認する。よし万全のようだ。


「ユーリ準備は大丈夫?」

「もちろん。」

「心配はなさそうですね。」


俺達は競技が行われる競技場に来ている。バリオンに半壊させられたのだが、そこは学園の設備というだけあって魔法ですぐに修復できるようだ。詳しいことはわからないが、あらかじめ形状を記憶しておく魔法をかけておくとかなんとか。色々な魔法がありまだまだ知らないことはたくさんあるのだ。


「それじゃあ行ってくるよ。」

「うん!皆で観客席から応援しているからね!」

「お気をつけて。」


俺は会場へと足を踏み入れた。どうやら俺が最後のようだ。しばらくして司会の先生が中心に立った、すると会場は静かになり上空に映像魔法が映し出される。


「さぁ、聖騎士祭3日目となる最終日、【D・B(デュエル・ブレイク)】を行います!!!」

「「「わぁぁぁぁ!」」」


あんなことがあった後だが、会場は盛り上がっている。まあ早く忘れるに越したことはないか。


「まずはルールのおさらいから!【D・B(デュエル・ブレイク)】は1対1で決闘を行うシンプルな競技です。相手の胸に付けた校章を破壊したほうが勝者になります。武器の使用も事前に申請したものであればOKです。もちろん魔法の使用もOKです!もし危険と判断した場合はそこで試合を止めるので安心してください。試合は総当たり戦となります。順位が並んだ場合は決着の早い試合が多かった選手のほうが上になります。」


なるほど。つまり全員と戦わなければいけなくて、なるべく早く試合を片付けたほうがいいって思っていればいいか。


「それでは第一試合、《紅》クラスVS《黃》クラス!代表選手は前へ!」


おっといきなり俺の出番か、相手は《黃》クラスというと…やはりディラン・アレストールか。この間街で獣人の奴隷を連れ暴行を加えていた、ひどい奴だ…と思っていたがそれも彼の家庭環境が原因だったようだ。これはセシリアさんに聞いた話しだが、どうやら父である宮廷魔道士団副団長のイヴァン・アレストールに厳しく育てられたせいか、彼はそういった行為に及んでしまったらしい。だがその父も今や大罪人である。死刑こそ免れたが、魔族と手を組み王都に招き入れた罪は重い。


「君がユーリ・ヴァイオレットだったのだな。」

「そうだよ。ディラン・アレストール。」

「まずはこの間のことと父のことを謝罪する。それと魔族を討伐してくれたお礼を。ありがとう。」


そう言うとディランは俺に頭を下げた。かなり反省している様子だ。


「ああ。素直に受け取っておく。いい試合にしよう。」

「もちろん全力でいかせてもらおう。」

「それでは…試合開始!」


開始の合図と共にディランは俺に向かって走ってきた。ディランは武器を持っていない、恐らく魔法の方が得意なんだろう。俺はその場で手を前に出し、迎え撃つ。


「『雷撃(ライトニング・ボルト)』!」

「『土の壁(アース・ウォール)』!」


俺は目の前に『土の壁(アース・ウォール)』を出し『雷撃(ライトニング・ボルト)』を防ぐ。これで相手の姿は見えないがそれは相手も同じだ。


「『雷の斧ライトニング・アックス』!」

「おっと。『魔法弾(マジック・ショット)』!」


ディランは『雷の斧ライトニング・アックス』で『土の壁(アース・ウォール)』ごと攻撃をしてくる。俺は後ろに回避しつつ魔法を放つ。


「まだまだ余裕がありそうだな。そろそろ仕掛けてきたらどうだ?」

「いやいや。これでも結構手一杯さ。」


嘘を付いているわけではない。実際ディランの雷魔法の発動スピードはかなり早い、多分雷魔法を得意としてる能力だ。それなら、、、


「『避雷針(ライトニング・ロッド)』!」

「何!?」


俺は『避雷針(ライトニング・ロッド)』を発動した。この魔法は雷を引きつける作用があるので、俺に向かって雷を放ってもそちらに引き寄せられ当てるのが難しくなるのと、『雷の斧ライトニング・アックス』のような魔法も形状を崩すことができる。


「これならどうだ!『雷の剣(ライトニング・ソード)』!」


なるほど。自分で剣の形を保つようにする魔法か。たしかに維持をするのに魔力操作は必須だろうが、これなら雷が流れることはない。ディランは俺に向かって剣を振り下ろす、俺の制服を掠めた。


「ようやく当てることができた。」

「悪いけどそろそろ決めさせてもらう。『三角・鎖トライアングル・チェーン』!!!」

「くっ、、、解けない。」

「ただ逃げてたわけじゃない。動きながらこの魔法を仕掛けていたんだよ。」


三角・鎖トライアングル・チェーン』魔法でマーキングをした三点を基準としてその中にいる人物を捉えることができる魔法である。一点目は「『土の壁(アース・ウォール)』を出した位置、そのまま後ろに下がって二点目、最後に『避雷針(ライトニング・ロッド)』とは反対方向に設置した。これで三点目を設置しつつ中心部に誘導することができたというわけだ。


「なるほど。まんまとこの場所に誘導されていた、というわけか。」

「そういうこと。」


俺は動けなくなっている、ディランの胸に付いている校章を破壊する。


「そこまで!勝者《紅》クラス!」

「「「わぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

「やったね!ユーリ勝ったよ!」

「はい!よかったです。大きな魔法も使わず済みましたし。」

「…?なんでそれがいいの?」

「アリアさん、これは総当たり戦なので今日全員と戦うわけですよ?大きな魔法を使いすぎると魔力が切れてしまうじゃないですか。」

「なるほど。でも早く倒した方がいいっていうのもあるからバランスが大事ってことだね。」

「続いては《紫》クラスと《青》クラスの試合を行います!」


試合を終えた俺はディランと一緒に控室に戻る。他のクラスの試合は見ることができない、戦う前に相手の手の内をみてしまうことになるからだ。俺たちが控室に戻ると、《翠》クラスの選手以外はすでにいなかった。もう第ニ試合は始まっているのだろう。俺が席に着いたと同時くらいに控室に先生が入ってきた。


「次、《紅》クラスと《翠》クラスの選手準備してください!」

「は、はい。」

「わかりました。」


えっ、早くない?もう《紫》と《青》クラスの試合終わったの?ちょっとは休憩したかったんだけど…。まあしょうがないか。


「さあ早くも3戦目《紅》クラスと《翠》クラスの対戦です!」

「僕はコータ・イマイ。君、魔族を倒したんだってね。フルーから聞いたよ。」

「あぁ、そうだよ。」

「君はこの《勇者》である僕の仲間にふさわしい!」

「今…《勇者》って…」

「それでは…試合開始!」


俺は開始の合図と同時に距離を取った。コイツ、今自分のこと《勇者》って言ったよな?…その割にはエレナと初めて会った時のような感覚はないが…。いや、そういう能力なのかもしれない油断は禁物だ。最初から飛ばしていこう。


「はっ!」

「風の…あれ?」

「あれ?えっとはい。」


あれ?結構あっさり倒せちゃったな。俺は仰向けになり、何が起きたかわかっておらず呆けているコータ・イマイの校章を破壊する。


「えーっと、勝者《紅》クラス!」

「アリアさん、今のって。」

「うん、多分前にユーリがディアナさんにやられた時の技だね。」


俺は以前ディアナさんにやられた技をコータ・イマイにも使ったのだ。これのカラクリは実は魔法でも何でも無く、ただ体術なのだ。高速で相手の後ろに回り込み足を払うという単純な技。能力を持っているとどうしても相手が魔法を使ってくるという固定概念に囚われてしまいがちだ。マルクさんやセシリアさんも言っていたが魔法だけに頼ってはいざという時に苦労する。それをディアナさんとの修行で嫌というほど教えてもらった。


「続いては《黃》クラスと《青》クラスの対戦です!」

「ま、まさか僕があんなにあっさり負けるなんて…」


イマイ・コータは信じられないといった様子である。俺も信じられない。試合前に《勇者》と言っていたが…うーむ、控室で直接聞いてみるか。


「イマイ君?君ってその…本当に《勇者》なの?」

「コータでいいよ!本当に《勇者》さ、だって僕は《異世界人》なんだから!」

「イセカイジン?それって《迷い人》のこと?」

「フルーもそう言ってたな。多分そう。」


驚いた、コータは《迷い人》らしい。父さんもそうだったみたいだけど、実際の《迷い人》を見るのは初めてだ。これは色々話が聞けそうだ。


「というか何で《迷い人》だと《勇者》になるの?」

「僕のいた世界じゃ事故に巻き込まれて別の世界に行く人は大体チートで《勇者》って相場が決まってるんだ!」

「ちーと?っていうのが何かはわからないけど、君の能力は《勇者》なの?」

「…?《風の魔剣士》だけど?」


ははーん。少し話が見えてきたぞ。つまりコータの世界では《迷い人》って呼ばれる人は《勇者》になるといった話があるから自分もそうだと思いこんでいるのか。でもこちらの世界では《勇者》というのは能力であり、称号などではない、それを勘違いしているんだな。


「えーと、その言いにくいんだけどコータは多分《勇者》じゃないよ。」

「いやーこれは負けイベントだったんだなこれから修行編か?可愛い美少女が教えに来てくれるのかなぐふふ。」

「おーい。」


コイツ全然人の話聞いてないな。フルーが問題児っていうのも少しわかったぞ。多分話をまともに聞いてくれないから未だに自分を《勇者》だと勘違いしているんだな。なんかちょっと可哀想に思えてきた。


「次は《翠》クラスと《紫》クラスの選手準備お願いします。」

「よし、絶対勝って《勇者》の実力見せてやる!」


そう意気込んでコータが出ていった。《紫》クラスの選手も黙って続いていく。あの人ずっとフード被ってるけど何でなんだろう?何か事情でもあるんだろうか。ま、それはそれとしてやっと少し休憩できそうだ。いくら魔力は抑えめでも疲れることは疲れるのだ、特に先程の試合では身体を動かしたからな。試合を終えたディランと《青》クラスの選手が帰ってくる。ディランの表情から察するに結果は《青》クラスの勝利のようだ。そろそろ試合も半分くらい終わったし一度今の戦績でも整理しておこう。俺は控室にあるリーグ表を見る。と同時に係の先生が結果を書きに来る。


《紅》2勝 0敗

《青》1勝 1敗

《翠》0勝 2敗

《黄》0勝 2敗

《紫》2勝 0敗


《翠》クラスと《紫》クラスの試合もう終わったのか?!出てったのほんの数分前だぞ?勝ったのは《紫》クラスか、俺と同じ2勝。しかも2試合とも秒速で決着を付けている。


「次は《紅》クラスと《青》クラスの選手準備お願いします。」


いかんいかん。今は目の前の試合に集中しなければ。

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