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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
亜人間戦争編

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第百八十八話 魔族の痕跡

「もし魔族が本当に絡んでいるとしたらどうしても俺は放ってはおけません。このままここに置いてくれませんか?」

「それは構わないが、ここにいるのはさぞ居心地が悪かろう。なぜ人間族のお主がそこまで他種族の問題に関わろうとする?」

「魔族は俺達人間族、いえその他の種族とは違う異質な存在です。こうやって話し合い分かり合うことはできません言うなれば天災の様なものです。逆にウィルルの様なダークエルフ族やあなた達の様なエルフ族とはこうして戦わずに話し合うことが出来ている。見た目や文化は違えどこうして話し合うことができるのだから手を取り合うのは当然でしょう。」


ヤーンはその言葉を聞き、少しだけ驚いたように目を見開きそして軽く笑った。


「なるほど…これが《勇者》の器か…。」

「ユーリって男はこういう奴なんだよ。」

「お人好し…。」

「短い付き合いの私にもわかります。ユーリさんは困っている人は見過ごせないんですよね。」

「わかった。お主らに協力を頼むとしよう。ウィルルとやらもそれでいいな?」

「どの道しばらくは戻れない。彼らに協力しよう。」


こうして俺達はダークエルフ族とエルフ族との間に起きたいざこざについて調査することにした。俺が助けたいというのもあるが本当に魔族が絡んできているとなると嫌な予感がする。いよいよ軽い事件では済まないだろう。シャーロットに連絡を取りたいところだがどうやらここでは通信ができないようだ。先程から何度か試してはいるがまったく応答がない。距離的に届かないというよりは魔力が外に出ていかないように遮断されてしまっているという方が感覚的には近い。これでは俺達の状況を伝えることができない。


「問題は俺達以外の応援も欲しいってところだけど…。」

「そう簡単に…ここに来れない…。」

「コーデリアの言う通りだな。アタシ達みたいに空からでも来ない限りは。」

「そうか。ルミ、悪いけど急いでセルベスタまで戻ってシャーロット達にこのことを伝えてくれないか?」

「わかりました!急いで戻ります!」


ルミは龍へと姿を変えるとものすごい速さでセルベスタ王国に向かって飛んでいく。誰も乗せていない状態であれば半日もあれば帰れるだろう。ルミが龍へと姿を変え飛び去った様子を見てウィルルもヤーン達エルフ族も驚いている。龍を見たことがないのだろうか?


「ドラゴンを見るのは初めてですか?」

「ああ、厳密には古代種をだがな。」

「古代種?」

「龍族の中でもさらに希少な種族だと聞いている。あの黒々しい鱗伝承でしか聞いたことがないが恐らく間違いないだろう。普通の龍と違い高い知能に大きな体そして黒々しい鱗が特徴だと言われている。」


ルミがそこまで賢いようには見えないが人間族の言葉を話せるから知性が高いと言えなくもないだろうか?シャーロットがドラゴンの幼体に会った時は会話もなく戦闘になったと言っていたし、意外とルミは凄いのかもしれない。どちらかというと子供な方と本人も言っていたしな。


「しかし彼女はなぜこちらの大陸に?」

「こちらの大陸?どういう意味ですか?」

「古代種の龍は海を越えた向こうにある大陸に今でも住んでいると聞いている。」

「海の向こうに大陸なんてあるんですか?たしか海の向こうに進んでも反対側に着くだけと聞いていますが…。」


海の向こうに進んでいっても大陸の反対側に辿り着くだけである。コータが言うには異世界は球体になっており一周すると元の位置に戻ってくることが出来るらしい。この世界でも規模は違うけど海の向こうに進むと大陸の反対に戻ってくることから同じであるだろうという話を聞かされた。だがヤーンが言うには海の向こうに俺達の知らない大陸があるらしい。


「私も伝承でしか知らないから詳しいわけではないが数千年以上前は人間族以外の種族は全て海の向こうからこの大陸に移り住んで来たと言われているらしい。お主ら人間族はずっとこの大陸に住んでいるから知らなくても無理はないだろう。」

「なるほど…?」


そんなこと全然知らなかったな。というかこれってかなり重大なことなんじゃないか?何かが引っかかっているが上手く頭が回らない。俺が考え込んでいるとジェマに背中を叩かれる。そうだった今は種族間の抗争を引き起こしたのが魔族であるかどうか調べないと。


「まずは子供達が連れ去られた場所まで案内してもらってもいいですか?」

「構わない。付いて来るといい。」


ヤーンについて俺達はエルフ族の子供達が連れ去られた場所まで向かう。


「ここがそうだ。」

「たしかに何の痕跡もないように思えるな。」

「私も…そう思う…。」

「俺にも何も感じない。」


ジェマやコーデリアは魔力完治が得意というわけではない。もちろん俺もそれなりにはできるがそこまでではない。アリアやエレナの方が間違いなく精度はいいだろう。


「ヤーンさんの言う通り、たしかに魔法の…いえ精霊の痕跡はなさそうですね。」


しかし魔族が犯人だとすれば散々戦ってきた経験から痕跡を見つけることが出来るはず…あった。微かだが魔族が瞬間移動に使うあの黒い穴と同じ魔力を感じる。


「ヤーンさん!ありました、魔族の痕跡です!」

「本当か?私には何も感じないが。」

「無理もありません。多分俺の副技能(サイドセンス)によるものでしょうから。」


俺の副技能(サイドセンス)はずっと初見の魔物に対して発動し、その魔物の弱点や名称などが直観からわかる物だと思っていたがどうやらそういうわけではないらしい。厳密に言うならば敵対していると認識した人間族以外の生物に対して発動させることができる。だが相手の強さによって分析できる部分は少なくなったりするのだろう。この副技能(サイドセンス)のおかげである程度魔族の痕跡もわかるようになっていた。


「だけど多分今までに会ったことのない魔族だ。魔族がいたという痕跡はわかるけどそれ以外にはまったくわからない。相当な強さだと思う。」

「まあ今まで会った魔族に弱かった奴はいなかったんだろ?」

「それは…そう…。」

「ですがこれで両種族の争いを起こしたのは魔族で間違いないということですね。」


魔族がすでにどちらかの種族に入り込んでいるというのは間違いないが、俺達が現状見つけられていない辺りすぐ近くにいるというわけではないだろう。若しくは幻惑系の魔法が得意で見つけることができないということも考えられる。すぐに仕掛けてきていない辺り何かの目的があるのだろうが…。


「これからどうするんだ?魔族の仕業ですってダークエルフ族に言ったってはいそうですかとはならないだろ。」

「ジェマの言う通りだね。ヤーンさんは俺達のことを《勇者》だから信じてもらうことが出来たけどダークエルフ族はどうだろうウィルル。」

「難しいと思う。そもそもダークエルフ族はエルフ族だけではなく他の種族は信用していない。特に人間族は獣人族ほどではないが恨んでいるのも事実だ。私も追われている身だしな。」

「話し合いは難しいか…。」


魔族が入り込んでいる以上なんとか危機を伝えてあげたいところだが、向こうからしてみたら俺達が行くこと自体が危機みたいなところもあるだろうしどうしたものか。俺が考えているとヤーンさんが口を開く。


「ユーリ、明日行われる種族会議にお主も出てみないか?」

「種族会議に?」

「ああ、そこでならダークエルフ族だけでなく他の種族も集まる。そんなところで騒げば自分達の種族の立場そのものが悪くなる。あまり派手なことは起こさないだろう。」

「なるほど、そうすれば他の種族に魔族のことを伝えることもできるか。」

「だけどそれではヤーンさん達…エルフ族の印象も悪くなってしまうのではないでしょうか?」

「なーに元々エルフ族の力は他の種族に比べて弱い。それくらいのことは問題ではない。」


たしかに他の種族にも魔族のことを伝えることが出来るし、悪くないかもしれない。俺はヤーンの提案に乗ることにした。


「もちろん私も行かせてもらおう。ダークエルフ族代表として種族会議に出たこともあるしな。」

「そういえば明日行われるのに、ダークエルフ族はウィルルが居なくても困らないのか?」

「ダークエルフ族は持ち回りで代表者を務めている。私もそのメンバーの一人というだけで明日は他のメンバーが参加するだろう。」

「なるほどね。」

「それに私がエルフ族の者と一緒に参加すれば話の信憑性も上がるだろう。」

「わかった。それで行こう。」


翌日俺達は種族会議が行われるという広場まで向かっていた。もちろん認識阻害のローブを使っていく。最初から人間族ということがバレては会議自体が行われなくなる可能性もあるからな。会議を行う場所は各種族の持ち回りということになっているらしく、今回行われるのはハーピィ族の領土で行われるらしい。ハーピィ族はたしか鳥の様な羽を持つ種族ということは知っているが詳しいことは知らない。エルフよりも数が少ないとヤーンは教えてくれた。


「ここが種族会議が行われる広場か。」


会議のために作ったであろう机と椅子以外は周りに何もない。そちらの方が安全であるということだろう。会議に参加できるのはそれぞれの種族が4名までと決まっているため、他の者は立ち入ることができない。つまりお互いを探る場合や何かが起こった場合その4名で対処しなければならないということでもある。周りが森などだと隠れて大人数で襲うなんてこともできてしまうからこういう風になっているということだ。エルフ族からはヤーン、ヤーンの側近、ウィルルと俺の4人である。


「さて、気合いれていきますか。」


俺達が広場の机に向かうとそれぞれの方向からも色々な種族の代表と思われる者たちが歩いて机へと向かったいた。


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