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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
魔導天空都市編

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第百七十二話 合流

コータ達は施設で見つけた《勇者》の女の子を連れて施設の外へと出てきていた。ここまでデリラの《副技能(サイドセンス)》に頼って来たがそれもここまでのようで、どうにかして皆と合流したいところだ。だがここどちらが街の方なのかも見当が付かない。


「ここまで直感に頼ってきたからどっちに行こう。」

「デリラ本当に何も感じないの?」

「うーん、ダメだね。僕の直感はもう働いてないみたい。」

「ここまで当ては外れてなかったけど自由に《副技能(サイドセンス)》が使えるわけじゃないんだよね。」


しかし、どうしたものか。この当たりには良くも悪くも人がいなし、建物もこの施設以外何もない。するとフルーが何かを感じ取ったのかある方向を見つめていた。


「どうしたのフルー?」

「いや、なんか向こうの方から皆の魔力を感じたような…。」

「向こうか。特に何も感じないけど…。」

「私も…。」


フルー以外の皆は特に何も感じていなかった。だがフルーは気になるようでずっと一点を見つめている。するとだんだん大きくなる魔力がコータ達にも感じることができた。


「な、何だこの魔力!」

「ユーリ達なのかな?」

「敵と戦っているのか…?」

「待って!何かがこっちに凄い速さで向かって来てる!」


少しだがコータ達にも魔力を感じることが出来た。だがユーリ達の魔力とは別に大きく禍々しい魔力があることに気がついた。そしてそちらの方からもの凄い速さで何かがこちらに向かってきているとフルーは感じていた。


「何だあれは!?」

「ビーム砲!?」

「とにかくヤバいってことはわかる!」

「皆!私のところに集まって!急いで!」


フルーは急いで自分のもとに集まるように叫んだ。すると凝縮された大きな魔力がこちらに向かってくる。そしてそれは先程までコータ達がいた岩山の施設を飲み込み跡形もなく消し飛んでいた。しかしコータ達はその前にどこかに消えていたのだった。


◇◆◇◆


「う…うっ。」

「まだ生きているとは、中々しぶといな。まだこちらの調整が上手くいってなかったな、運が良かったとも言える。」


ユーリは当たりを見回す。そこには倒れているエレナとシャーロット、ジェマの姿があったが他の四人の姿はなかった。あのアポカリプスヘイロンから《超高層雷放電カノン砲》が放たれたとき防御魔法を使用したがほとんど意味がなかった。それにいち早く気付いたディラン、ランマ、カルロス、ルミは俺達《勇者》の四人をそれぞれ庇ってくれたのだ。


「皆、無事でいてくれ…。」

「人数も半分になってしまったな。さて残った《勇者》諸君はどう戦うのかね?」

「くっ…。」


正直この状況はあまりよくない。皆も心配だが、ここにいる俺達もかなりのダメージを受けている。せめてもう少し人数がいれば…。そう考えていた時突如目の前にコータ、フルー、デリラ、ウール、コーデリアが現れた。


「えっ皆?」

「ユーリ!良かった!」

「これは一体どういうことですか?それにその彼女…。」

「まあ離せば長いんだけど…とにかく合流できて良かった。」


どういうことかはわからないが、バラバラに散ってしまっていた皆が突然目の前に現れた。これで全員が揃った、しかし見覚えのない女の子を連れている。それに彼女から感じるこの感覚は…まさか《勇者》?いや今はとにかくアリアを助けないと。


「なるほど、アリアは捕まってるってことね。フルー彼女を連れてここを離れて。」

「ディラン、ランマ、カルロス、ルミも近くにいるはずだ。手当してやってくれ。」

「そっちは僕が。」

「ウール、任せた。」


コータが冷静にこの状況を判断する。フルーに《勇者》と思われる女の子を連れて離れておくように。俺はウールに俺達を庇った皆を探して手当するように指示を出す。


「またぞろぞろと集まってきたな。なるほど施設から《雷霆の勇者》を救い出したか。だがその女はもう用済みだ。《勇者》の力はどうも特別らしい、取り出すことができないのだからな。まあそれも《大賢者》さえいれば何も問題ないがな。」

「大口叩けるのも今の内だよ!」

「それでユーリ、あいつはそこまで苦戦させられる相手なのかい?」


ユーリはコータ達に《魔力融合炉式龍鎧・アポカリプスヘイロン》の三代兵器、《マジック・アブソーバー》《可変式武装》《超高層雷放電カノン砲》についての説明をした。そして捕らえられているアリアを早く助け出さないといけないことも。


「なるほど、魔法もダメ。物理もダメか。」

「いえまだ試していないこともあります。」

「アリアさんの事を考えて手加減していてはこちらの方がやられてしまいます。本気で倒す気でいかなければ。」

「さぁ。来るなら来い!《勇者》とその仲間達よ!」

「言われなくても!」


まず真っ先に飛び込んでいったのはデリラだった。それを見るなりアポカリプスヘイロンは右腕から盾を出す。デリラはそれを見ても勢いを止めることなく、大剣を振り下ろす。


「『龍の爪(ドラゴン・ネイル)』!」

「ふん!効かんわぁ!」

「舐めるなよ!『龍の爪(ドラゴン・ネイル)』!『龍の爪(ドラゴン・ネイル)』!『龍の鉤爪(ドラゴン・クロウ)』!」


デリラは次々に攻撃を仕掛けていく。それをひたすらアポカリプスヘイロンは防御する、デリラはまったく手応えを感じていなかった。だがユーリ達もここぞとばかりに魔法を仕掛ける。


「『炎の槍(フレイム・ランス)三重(トリプル)』!!!」

「『水の球(ウォーター・ボール)二重(ダブル)』!!」

「『風精霊の竜巻(シルフ・トルネード)』!」

「小賢しいわ!」

「うわぁ!」


アポカリプスヘイロンは盾を大きく前に突き出しデリラを吹き飛ばす。そして左腕を引っ込めると右腕を突き出し、魔法を防ぐために《マジック・アブソーバー》を起動する。


「魔法など吸収してやる!」

「ちっ!」

「クソ!全然ダメージが入っていない。」

「なるほどこれは厄介だ。」


《マジック・アブソーバー》はエレナ、コーデリア、コータの魔法を無効化する。だがユーリはこの行動に違和感を覚えた。わざわざデリラを遠ざけて《マジック・アブソーバー》を発動した、ということは《可変式武装》と《マジック・アブソーバー》は同時に素養することができないのではないかと考えたのだ。


「俺に考えがある。」


ユーリは作戦を皆に伝える。それを聞いた皆はそれぞれ四方に散っていく。


「『水の槍(ウォーター・ランス)三重(トリプル)』!!!」

「学習しない奴らだ。魔法は効かないと言っているだろう!《マジック・アブソーバー》!」

「じゃあこれでどう!『龍の爪ドラゴン・ネイル』!」

「《可変式武装》!」


アポカリプスヘイロンは再び右腕を引っ込めて左腕を出し、《可変式武装》を盾の形へと変形させる。


「今だ!」

「『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』!」


ユーリの立てた作戦はある仮説をもとに組み立てられた物である。それは《マジック・アブソーバー》と《可変式武装》は同時に発動させることができないという仮説である。実際デリラが攻撃している時はただ耐えていたのに魔法が向かってきたときはデリラを吹き飛ばし腕をわざわざ変えていた。確信はなかったが、その仮説は正解であった。まず魔法で攻撃し、そして物理技で攻撃する。二つの兵器を入れ替えたところで予め準備をしておいた魔法を放つという作戦だ。


「しまった!」

「当たれぇ!」

「ぐっ!」


エレナの放った『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』は《マジック・アブソーバー》に無効化されることなくアポカリプスヘイロンへと向かっていく。しかし、アポカリプスヘイロンはその本体の速さも異常であるのだ。直撃を避け5つある尻尾の1つに当たった。


「今のは危なかった。」

「やはりお前のその兵器同時に発動することは難しいようだな。」

「なるほどそれに気付かれてしまったか。だがまだ私にはこの《超高層雷放電カノン砲》がある!」


アポカリプスヘイロンは再びは両腕を地面に突くと顔の部分を大きく開き大砲を出す。先程、俺達が防ぎ切れずディラン達が戦闘不能になってしまった3つ目の兵器《超高層雷放電カノン砲》である。現状これを防ぐすべはなくここから遠くに逃げる術もない。それならばやることは1つ。


「皆アレを打たせる前に潰すんだ!」

「僕達が山で見たのはあれだったんだ。」

「わかった!」


《超高層雷放電カノン砲》を止めるべくアポカリプスヘイロンに向かって突っ込んでいく。


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