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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
魔導天空都市編

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第百七十話  施設の秘密

ディランは一定のペースで階段を上っていた。地下から侵入したときのように魔法道具ですでに何かされている可能性もあるため常に周囲を警戒しながらだ。だがその考えとは裏腹になにもないまま大きな部屋に出た。部屋の中心には男が一人。ディランが階段を上りきり部屋に入ると上ってきた階段の道は塞がる。


「ようこそ。」

「何者だ。」

「俺は《賢者の杖・雷属性》担当、ライガンだ。」


《賢者の杖・雷属性》担当、ライガンと名乗った男は30代くらいの男だ。中肉中背でこれといった特徴はない。しかし魔力の高さだけは伝わってくる。


「《大賢者》を助けに来たんだろ?」

「ああ。」

「まさかこんな子供連中とは思わなかったよ。」

「そうか。」


ライガンは少しこちらを小馬鹿にしたような態度で接してくる。


「いや、見かけにはよらないな。子供とはいえ《勇者》とその一味だ。魔族も倒したとか?まあ魔族の強さを知らないけどな。」

「何故そこまでして《生命の魔力》に拘る?」

「多分お前らが知っている以上のことは知らねぇよ。王様は何考えてるかわかんねぇからな。まあおかげでわりと自由にはやらせてもらっているが。」

「なら先へ進ませてもらおう。」


他の《賢者の杖》はどうかわからないが、この男からはこれ以上詳しい情報を得ることはできないようだ。ディランは戦闘態勢に入る。ライガンは右手に魔力を込めている、どんな魔法なのかはわからないがかなり危険であることをディランは感じ取っていた。


「俺の魔法は一撃だぁ!『魔導電撃砲』!」


ライガンの右腕には魔法道具が付いている。それは術者の雷属性魔法を大幅に強化するというものである。しかしどんな魔法でも対応できるわけではなく『雷撃(ライトニングボルト)』系統の魔法のみこの魔法道具は有効なのだ。だがライガンの能力である《雷撃師》と非常に相性がいい。《雷撃師》という能力はその名の通り『雷撃(ライトニングボルト)』系統の魔法の威力が上がるという単純な能力である。能力と魔法道具を極限まで引き出した一撃必殺の魔法が『魔導電撃砲』なのだ。


「ふっ、跡形もなく消し飛んだか。」


ライガンの放った『魔導電撃砲』は《賢者の塔》の壁を突き抜けていた。だがすぐに《賢者の塔》の壁の穴もえぐれた地面も修復していく。これもこの《賢者の塔》の魔法道具性質である。ディランの姿は見当たらず跡形もなく消し飛ばしたのだろうとライガンは思った。


「あんまりやりすぎると怒られちまうからな。気を付けないと。」

「これで終わりか?」

「何だと!?」

「『雷の拳(ライトニング・ブロー)』!」

「がっ…!」


消し飛ばしたと思ってたディランが背後に現れ油断したライガンはそのまま雷を纏わせた拳で殴られる。普通であればあの速さあの範囲の『魔導電撃砲』から魔法なしで逃れることはできない。だから魔法を使用される前に『魔導電撃砲』を使用するのが基本戦術であるがなぜかディランは何もしていない状態で躱すことが出来たのだ。


「お前の一撃、悪くなかった。だが俺には通用しない。」


ディランが躱すことができたのは魔法を使用していない状態の身体能力が向上しているからである。以前にも似たようなことがあったが『雷身体強化ライトニング・フィジカル・ブースト』の魔法で身体に雷属性の魔力を浴び続けたことで素の身体能力も大幅に向上している。それは『身体強化(フィジカル・ブースト)』を使用している状態と同等なのだ。それ故に『魔導電撃砲』は当たらず、背後に回られたのだ。


「急がなければ。」


ライガンを倒すと部屋には上へと続く階段が現れた。ディランは急いでそれを上っていくのであった。


◇◆◇◆


コータ一行は山の中に現れた不思議な施設の中へと進んでいた。そこに人の気配はなくなんのための場所なのかも検討が付かなかったがデリラの《副技能(サイドセンス)》を信じて奥へと進んでいた。


「ここは一体何の施設なんだろう?」

「魔法の実験とか?」

「何でそう思うの?」

「ほらここの周りは何もないって話をしただろ。人や生物がいないのにこれだけのスペースを活用できることと言ったら魔法か魔法道具の実験かなって思っただけだよ。」


岩山の中の施設はある程度整備されている。ここまでは一本道であるが明かりもあるし、道もきちんと舗装されている。それにホコリを被っているわけでもないことから、今も使われている場所だ。そしてここの周辺は生物がいない、なぜかはわからないが意図的であることは間違いない。とするとここは実験施設かなにかであるとウールは予測したのだ。


「あっ、アレ見て!いくつか扉があるよ。」

「人の気配は感じないし、とりあえず手分けして見てみるか。」


しばらく歩いていると前方にいくつか扉が見えた。ここがどんな施設であるのか何かわかるかもしれないと考え手分けして探すことにした。


「さてと…うん?これは…。」


コータが入った扉の中にはいくつか資料が散らばっていた。これは魔法道具の設計図だ。設計図を詳しく見ていくと侵入してくる時に起動していた魔力壁の設計図を見つけた。あまり魔法道具に詳しくないコータではあるがかなり進んだ技術力であることは理解できた。


「皆!ちょっとこっち来てー!」


すると隣の部屋からフルーが呼ぶ声が聞こえた。


「どうしたの?」

「これを見て。」

「《超高層雷放電カノン砲》?」

「これってもしかしてサラを殺した兵器なんじゃないかな?」


フルーが見つけたのは《超高層雷放電カノン砲》と呼ばれる魔法道具だった。いや兵器と呼ぶ方が正しいだろう。莫大な雷属性の魔力を圧縮することで自然発生する落雷と同等の速さの雷属性魔法を放つことができる。その魔力の影響で太陽の光が遮られ黒雲が発生すると書かれている。


「たしかにそれっぽいけど、ちょっとおかしくない?」

「どういうこと?」

「ここに書かれていることがもし本当のことだったらサラの胸元だけを射抜くなんてできないよ。というか王都そのものが吹っ飛んでると思う。」


この設計図に書かれていいることが仮に本当だとしたら恐らくサラの胸元を射抜くどころか、街1つが軽く吹っ飛ぶと考えられる。そのくらいの魔力量なのだ。原理はコータにはよくわからなかったが魔力を圧縮したからといって威力が下がるようには思えない。


「それにこのカノン砲っていうのは異世界の兵器の名前だ。この世界にも大砲があると思うけどそれのもっと大きいのをイメージしてくれればいいよ。」

「とすると上空から大砲でサラだけを狙って、しかも被害があれだけで済むのかって言われたらたしかに無理かも。」

「単純に魔力が足りなかったんじゃないの?」

「そうかもしれない。それだったら制御できても不思議じゃないかも。」


魔力量が少なければそれだけ制御もしやすい。だが魔力を制御した上であの威力ならば、ここに書かれているだけの魔力で使用したらどうなるんだろうか、王都が吹き飛ぶとさっきは言ったがそれどころでは済まないかもしれない。


「まあとりあえずここが魔法道具の研究施設ってことだけはわかったね。向こうでここに入ってくる前に見た魔力壁の設計図を見たよ。」

「僕もあっちで《魔力砲》っていうのを見つけた。多分ルミの背中に乗っている時に攻撃されてたやつだ。」

「私は…階段を…見つけた…まだ先がある…。」

「デリラの《副技能(サイドセンス)》はどう?」

「うーん、多分この設計図のことじゃないと思う。まだここには何かある気がする。」


少なくともこの施設は魔法道具の研究施設であることはわかった。だがデリラの《副技能(サイドセンス)》が導いているのはこの設計図のことではないようだ。


「それじゃあコーデリアの見つけた階段っての進んでみようか。」

「そうだね。」

「案内する…。」


コーデリアに付いて階段のある場所へと向かう。薄暗くどれくらい先まであるかはわからないが、下っていくことにした。


「こんなに広いのに誰もいないなんておかしいよね?」

「そうだね。でも緊急事態が起こっているとかならあり得ないこともないかも。」

「緊急事態?」

「侵入してきたのはここにいる僕達だけじゃないだろ?」

「そっかユーリ達!」

「もしかしたら皆が暴れまわっているのかもしれないよ。僕達も急がないと。」


これだけ重要そうな研究施設に人がいないとなると考えられるのは何か問題が発生したということだ。それがユーリ達の仕業なのかどうかはわからないが、本来の目的のためにも急いでこの施設を調べなければならない。一行は階段を降りきると大きな扉があった。扉というよりは柵に近いだろうか。一行が近寄ると自然と柵は開いた。


「あれ見て!」

「これは一体何なんだ!?」

「女の子かな…?」


大きな部屋の中心には水槽の様な物があり様々な魔法陣が展開している。そしてその水槽の中心には全裸で縛られている自分たちと同じ位の女の子が両手足を縛られている状態でいた。意識はないようだ。するとコーデリアはその女の子の方へと一歩ずつ近寄っていく。女の子から何かを感じ取っていた。


「彼女は…《勇者》…。」


コーデリアが感じ取っていたのは《勇者》同士が感じる特有の感覚であった。


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