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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
魔導天空都市編

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第百六十九話 新技

ランマは階段を上っていく。自分とディランはそれぞれ一人で敵と戦わなければならない。任された役目はしっかりと果たさなければいけない。


「ここは…。」


そしてランマが階段を上りきると開けた場所に出た。そして上がってきた階段の扉が閉まる。すると部屋の中心に四角形の土でできた箱の様な物が出現する。


「あれは一体何でござろうか。」


謎の箱にランマは恐る恐る近づいていく。あまり魔力感知は得意ではないが、目の前の箱からは魔力的な要素は一切感じない。本当にただの土の塊であるということだけはわかった。


「土でござるか…。」

「良く来たわね。」

「つ、土が喋った!?」


ランマは急に声が聞こえたことに驚き後ろへと跳躍する。今、明らかに目の前の土の塊から女性の声がした。だが魔力はまったく感じない、一体どうなっているのだろうか。すると四角の土の塊は形を変え人のような姿へと変化する。


「私は《賢者の杖・土属性》担当、チャードよ。」

「土属性、なるほどそれも魔法でござるか。」

「そうね。まあこれは遊びみたいなものよ。それよりあなた…。」


《賢者の杖・土属性》担当チャードと女性は名乗った。年齢は40代くらいだろうか。チャードはランマの姿を上から下までまじまじと見つめる。一体何を見られているのかはわからないが、ランマは警戒心を解かない。いつ何をしかけてくるかわからないのだ。


「その格好を見るに大和国出身ね。」

「たしかにそうでござるが、それがどうかしたでござるか?」

「いや少し昔のことを思い出してね。あなた様な人を侍というのだったからしら?最後まで反抗して鬱陶しかったわぁ。」

「さっきから何の話をしているでござるか!」


ランマは少し声を上げる。昔、大和国、反抗、嫌な言葉ばかりが耳に入る。まさかそんなはず…だがあり得ない話ではない。ランマは頭の中にある疑問をぶつけずにはいられなかった。


「その昔、大和国が魔族と繋がっていると疑い襲ってきた親交国というのはまさか…。」

「そう。ここ魔導天空都市カノンコートのことよ。まあ最初から魔族と繋がっていなかったことは知っていたけれどね。あれは魔法の実験をするためにでっちあげて大和国を襲っただけよ。でもおかしいわね、証拠になるような記憶は消したはずだけど。やっぱり失敗してたのかしら?」


やはり大和国を襲いドウマ・ゲンジがクーデターを起こすきっかけになった出来事、皆の手を借りて魔族を追い払うこともできたあの事件。全ての元凶はこの国ということらしい。しかも魔法の実験をするためにでっちあげた?たくさんの人が巻き込まれ亡くなっているのに?ランマの中に怒りが湧く。いつもは冷静なランマだがこんな事実を知って怒らないわけがない。


「『新山田流壱式・疾風迅雷』!」

「『土の壁(アース・ウォール)』!」


ランマはチャードの首元を狙う気で直線上に突っ込む。しかしその間に『土の壁(アース・ウォール)』が出現し、衝突するギリギリの所で踏みとどまる。そして後退する。いけない、今は冷静になって目の前の敵に集中しなければ。


「せっかちね。」

「どうしてそんな非道なことができるでござるか。」

「どうして?人々が便利になるための魔法を研究することがそんなに悪いことなのかしら?研究に犠牲は付き物よ。それに無駄な死ではないわ、確実にこのカノンコートは大きく発展した。」

「お前は必ずここで倒す!」

「わかり合えないようね。ではお相手するわ。」


ランマは力強く地面を蹴り、進んでいく。だが先程のように全速力で突っ込んではまた壁を出されるだろう。少しだけ速さを落としている。


「少しは落ち着いたようね。これはどうかしら『土の兵(アース・ソルジャー)』!」

「押し通るまで!『新山田流壱式・疾風迅雷』!」


チャードは土で出来た兵を5体出現させる。兵を出す魔法は『土人形(ゴーレム)』よりも少ない魔力で発動できるが耐久性がない。ランマは次々に兵を破壊していく。そしてそのままチャードに向かって進んでいく。


「一直線ばかりで芸がないわね。『土の壁(アース・ウォール)』!」

「そうでもないでござる!『新山田流伍式・泰山砕き』!『新山田流壱式・疾風迅雷』!」

「しまっ…」


ランマは壁を突き破るとそのまま流れるようにチャードの胴体を真っ二つに斬り裂いた。だが手応えを感じない。チャードの方を振り返るとそれは最初に見かけた四角形の土へと変化していた。たしかにさっきまでは魔力を感じていたし、呼吸が完全に人のそれであった。すると四角形の土は少し離れたところに移動し、それがチャートへと変化する。


「ふふふ、危なかったわね。」

「それがお前の能力か。」

「正確にはこの土の塊は私が作った魔法道具だけどね。これは土の魔法で作った物じゃない本物の《魔法人形(ゴーレム)》よ。まあまだまだ未完成の段階だけど、能力と組み合わせれば本物の人間の様に振る舞える。」


魔法人形(ゴーレム)》、以前ユーリの里帰りで見つけた森の遺跡で出会ったエルタが使用していた物の名称である。だがあちらは本当の人間と見間違うような精巧さであったが、目の前にしているのは自発的に動いてはいるがただの土の塊である。


「私の能力は《土操作》。そのなの通り土を操れる魔法だけどとても弱かった。そこで私は文献で見つけた《魔法人形(ゴーレム)》を作ることにしたの。土で作れば操れるようになるから。」

「ふっ、それがわかれば大したことではござらん。本体を探して叩けばいいだけのこと。」

「それはどうかしら?」


地面から四角い土の塊、もとい未完成の《魔法人形(ゴーレム)》が大量に出現する。そしてそれは全てチャードの姿へと変化する。


「これを全て相手にできるかしら?」

「やるでござる!」

「やる気だけは立派ね!『土の弾丸(アース・ブレッド)』!」

「『土の弾丸(アース・ブレッド)』!」

「『土の弾丸(アース・ブレッド)』!」


チャードの姿をした《魔法人形(ゴーレム)》は次々にランマの魔法を放つ。この《魔法人形(ゴーレム)》の一番厄介なところは魔力や見た目での差がほとんどないことだ。探知が得意であれば細かな違いに気付くかもしれないがランマはそうではない。どれが本物かわからないから一体ずつしらみ潰しに攻撃していくしかないと考えた。チャードの魔法を躱しながら《魔法人形(ゴーレム)》を破壊していく。


「『新山田流壱式・疾風迅雷』!」

「ふふふ、それもいつまで持つかしら。」

「くっ…!」


いくら《魔法人形(ゴーレム)》を破壊してもすぐに再生する。チャードは恐らく強い戦闘系の魔法を使えないのだろが、しいくら弱い魔法でもこれだけの数の《魔法人形(ゴーレム)》に攻撃されたらいつまでも耐えることはできない。やはり本体を見つけて倒すしかないのか。だが、どうやって本体を見つける?


「このままではいずれやられてしまうでござる…。」

「あら、もうおしまいかしら?そうよねぇ、これだけの数相手にしてられないものねぇ。」

「そっちこそこれだけの数を操作するのは辛いのではござらんか?」

「ふっ、そうね。でもあなたを倒すくらいはできそうよ。」


チャードの言う通りこのままではやられてしまう。そう思ったときふと思い浮かんだことがある。この方法ならばチャードの居場所を特定することができるかもしれない。


「いや、お前はここで終わりでござる!」

「言ってなさい!『土の弾丸(アース・ブレッド)』!そして『土の壁(アース・ウォール)』!」

「『土の弾丸(アース・ブレッド)』!『土の壁(アース・ウォール)』!」

「『土の弾丸(アース・ブレッド)』!『土の壁(アース・ウォール)』!」


ランマに向かってチャードに向かって攻撃魔法を放った後、壁を作り完全な防御の体制を取る。しかしそれが逆に仇となってしまった。ランマは部屋の隅まで移動し、部屋全体を見渡すことができた。『土の壁(アース・ウォール)』の後ろには確実に《魔法人形(ゴーレム)》がいることはわかっている。


「『新山田流壱式・疾風迅雷・月刃』!」


『新山田流壱式・疾風迅雷』は居合斬りの技である。当然だがその攻撃範囲は刀の間合いだ。そしてランマの刀《業物》である《白月》は前の刀を引き継ぎ魔力を帯びている。『新山田流壱式・疾風迅雷・月刃』という技は《白月》の魔力を使用し一瞬だけだが刀身を伸ばした状態による居合術である。ランマは壁ごと部屋にいる全ての《魔法人形(ゴーレム)》を一刀両断した。


「見つけたでござる!『新山田流伍式・泰山砕き』!」

「ぐはぁ…ど、どうして私の位置を…。」

「《魔法人形(ゴーレム)》を全て破壊すれば残っている魔力が本体ということでござる。」

「盲…点…だったわ…。」


ランマは部屋の《魔法人形(ゴーレム)》を全て同時に破壊し、残った唯一の魔力の痕跡を辿り位置を割り出した。壁の中に潜んでいたチャードに向かって技を放ち倒すことに成功した。


「拙者だから苦戦しただけのこと。魔力を探知できる皆ならもっと早く決着が付いていたでござるよ。」


ランマは探知が苦手である。だからこそ壁に潜んでいる魔力にすぐに気付けなかっただけで、他の皆であればすぐに部屋の異変に気付くことができたとランマは思った。さらに言うならあのとき《魔法人形(ゴーレム)》にたくさんの魔法を使用させたことも大きい。あれだけの魔法を使わせて一番魔力を消費するのは能力者の方だからである。その異変に気付くことができたのがランマの勝因だ。


「さて、先へ進むでござるか。」


チャードを倒したあと部屋に階段が現れた。ランマは上へと続く階段を進んでいくのであった。


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