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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
魔導天空都市編

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第百六十六話 水の民

「お前は一体何者だ。」


俺は天の声の主に問いかける。突如響く声に俺達は困惑していた。


「私の正体が知りたいか?ならばこの《賢者の塔》の上まで上ればわかること。《大賢者》も待っていることだしな。ワァーハッハッハ!!!」

「くっ…!」


天の声はだんだんと小さくなっていった。言いたいことは言い切ったのか声はしなくなっていた。冷静になって考える。俺達が初めて一階層に来た時にあれだけ警備は厳しくなっていた。にも関わらずこの国で一番重要だと思われるこの《賢者の塔》にまったく人がいないというのはおかしなことだ。恐らくこれは誘い込まれているのである。


「どうする…といっても先に進むしか無いか。」

「そうですね。明らかに誘い込まれていますが、アリアさんはここにいるようですし。」

「いや実際アリアはここにいるみたいだよ。」


俺は通信機とマークが作ってくれた魔法道具に魔力を込めてアリアの居場所はこの目の前にある《賢者の塔》であることを確認した。相変わらず通信は繋がらないが。


「もう魔力を込めていいでござるか?」

「うん、敵にはバレちゃってるみたいだからね。」

「それにここから先は戦闘になるだろう。」

「ええ、わざわざ招き入れるくらいですから。刺客がいると考えた方がいいでしょう。」

「《賢者の杖》ってやつだな。」


ここまで来ていることがバレている以上もう魔力を隠す必要はない。それにこの先に待ち受けていると思われる《賢者の杖》と呼ばれる連中との戦闘は避けられないだろう。マルムさんも《賢者の杖》について知らないようだったからできたのは恐らく最近のことなのだろう。おかげで情報はないが仕方ない。


「それで俺達は8人いるが扉は5つだ。戦力はどう分散させる?」

「俺が一人で行くよ。」

「いやユーリ君は二人組にしてもらいましょう。一番の戦力はユーリ君です。この先に何が待ち受けているかわからない以上できるだけ温存してもらいたい。」

「そうだな、《勇者》組は二人組にした方がいいだろう。俺とランマは単独で行く、構わないなランマ?」

「もちろんでござるよ。」

「わかったそれでいこう。」


扉は5つありどの扉が正解なのかわからない、だから全てに入る必要がある。さらに相手の戦力がどれほどかわからない以上できるだけ温存しながら戦いたい。そこで《勇者》は二人組にすることにした。俺とルミ、エレナとジェマ、シャーロットとカルロスの二人組。ランマとディランは一人だ、この二人ならば一人でも問題はないだろう。


「くれぐれも皆気をつけてくれ。」

「「「おお!!」」」


俺達はそれぞれの扉へと向かって駆けていく。扉の中に入るとそこには階段が続いており扉は閉じられる。これで先に進むしかなくなったということだ。元より後戻りをするつもりはない。俺とルミは階段を駆け上がっていく。


「《賢者の杖》って一体どんな連中なんですかね?」

「さぁ、でもかなり手強いんじゃないかな。」

「どうしてそう思うんですか?」

「酒場で聞いただろ《賢者の杖》はおっかないって。一般の人にも知られているくらいの実力者なんてセルベスタで言ったら団長とかAランクの冒険者とかだろ?まあそこまではいかなくてもそれなりに浸透してるってことは実力もそれなりにはあるってことさ。」

「なるほど。たしかにそうかもしれません。」


とルミには言ったがそれだけではない。この国魔法道具の技術はかなり進んでいる。最初に侵入した時の攻撃もそうだし、島を包む防御壁。マルムさんに貸してもらったランタン然りだ。あれだけの物が作れるのであれば戦闘に使える魔法道具の開発も進んでいそうだし、何より魔法の理解が深くないとあんな魔法道具は作れないだろう。


「先がある。心して行こう!」

「はい!」


俺とルミが階段を上りきるとそこは広い空間が広がっていた。床は階段よりも少し下がっており水が詰まっている。慎重に足を踏み入れる。


「水か…。」

「はい。」

「ようこそ我が水槽へ。」

「何者だ!」


突如部屋の中心部に現れた女性は笑みを浮かべながらこちらに頭を下げていた。年齢は20代から30代といったところだろうか。


「私は《賢者の杖・水属性》を担当しております。ウェールと申します。まさか《勇者》様に来ていただけるとは思いもよりませんでした。」

「そんなことよりも《大賢者》、アリアは無事なんだろうな!」

「ええ、もちろんですよ。彼女は我々にとってとても重要な御方ですから。」

「《生命の魔力》だろ?」

「おお、もうそこまでご存知でしたか。それならば話は早い、我々に協力していただくことはできませんか?」


ウェールという女は《賢者の杖・水属性》担当だと言った。なるほど《賢者の杖》はそれぞれ基本属性を担当する者が5名いて扉は5つということか。どうやらアリアはまだ無事な様だが《生命の魔力》のこともある。急いで救出をしなければならない。


「誰がそんなことに協力するか!」

「そうですか。できれば手荒な真似はしたくないので、穏便に済ますことができればいいと思ったのですが…仕方がありませんね。」


ウェールは指をパチンと鳴らす。すると俺達が上ってきた階段の入口が塞がれる、これで逃げることはできない。元々逃げる気もないが。そして天井がいくつか開きそこからは水が流れ出した。足元の水位はじわりじわりと上がってくる。


「これで逃げ場はありません。それにお急ぎのようですから決着も早く着きますよ?」

「自分も水に浸かるっていうのに頭おかしいですね。」

「いや、何か有利になることがあるんだろう。水属性魔法が得意なようだからな。」

「そうですね。まずは手始めに『水の刃(ウォータ・カッター)二重(ダブル)』!!」


そういうとウェールはこちらに向けて『水の刃(ウォータ・カッター)』を飛ばす。当然の様に『多重展開(マルチ・キャスト)』も使用してくる。俺達はそれを左右に飛んで回避する。しかし『水の刃(ウォータ・カッター)』は水の上を滑るように追尾をしてきた。


「ぐわぁ!」

「きゃ!」

「この水の上では私の魔法から逃げられることはできませんよ。」


一度放った魔法を操るのはかなり難易度が高い。だがウェールの『水の刃(ウォータ・カッター)』は明らかに避けた俺達に合わせて向きを変えた。そのからくりはこの足元に広がる水だろう。ウェールはこの水面に触れるように『水の刃(ウォータ・カッター)』を放っている。そして水を通して魔力を流し込み『水の刃(ウォータ・カッター)』を操作しているのだ。


「ただ水浸しにしたわけじゃないようだな。」

「流石《勇者》様ですね。地の利を得ることこそ、戦闘における魔法には重要なことです。特に私の《水の民》という能力には相性が良いんです。」

「《水の民》?」

「何かはわかりませんけど私に任せてください!『龍の息吹(ドラゴン・ブレス)』!」


ルミはウェールに向けて『龍の息吹(ドラゴン・ブレス)』を放つ。


「『水の壁(ウォーター・ウォール)二重(ダブル)』!!」

「ガァァァァァ!!!!!」


ウェールは『水の壁(ウォーター・ウォール)』で『龍の息吹(ドラゴン・ブレス)』を防ぐが、勢いはルミの方が押している。だがそれだけではない、水が『龍の息吹(ドラゴン・ブレス)』によって蒸発し始めている。これで相手の得意な場所ではなくなる。


「ぐっ!…なるほど水も同時に蒸発させるのが狙いですか。」

「………うん?」


水を蒸発させるのは狙ったわけではない。ルミは深く考えずに『龍の息吹(ドラゴン・ブレス)』を使用したのだ。助かったには助かったがあくまでも偶然が生んだ産物である。


「ですが甘いですよ。『創造(クリエイト)(ウォーター)』!」

「何!?」


ウェールは再び水を生成し、今度は膝の高さくらいまで水位を上げる。これではかなり動きが制限されてしまう。ヤバいな…早く決着を付けないとアリアを救出するどころか俺達もここでやられてしまうことになる。


「《水の民》という能力は水を生成する魔法には魔力を使用しません。なのでいくらでも生成することができますよ。この天井に仕掛られた魔法陣も私の魔法ですよ。」

「それじゃあいくら水を無くしても無駄ってことか。」

「ええ、なので私を倒す以外にこの水を止めることはできませんよ。さぁ大分水位も上がってきたことですし、そろそろ本気で行きましょう。」


《水の民》非常に厄介な能力だ。水を生成するのに魔力が必要ないとは、それにウェール自身水属性魔法が得意ということもあって相性が良い。出し惜しみをしている暇はないな。《勇者》の力を使うしかない。


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