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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
魔導天空都市編

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第百六十話  階層

「歩いている人は普通に見えるな。」

「そうですね。って龍の私は言うのはなんですが。」

「だが格好は結構違うんじゃないか。このままだとアタシら浮くぜ?」


路地裏から街の様子を伺う。チラホラと人は通っている、全て人間族で亜人族の姿は見られない。そして皆ワメリの様に認識阻害は付与されていないがローブを被っている。今の俺達の様な服装では一発で他所から来た怪しい奴と思われてしまうだろう。


「大丈夫。これを使おう。」

「ローブですか?」

「これは認識阻害のローブだ。《勇者》同士の感覚さえ、ほぼ消してくれるから怪しまれることはないと思う。」


俺は魔法袋(マジックポーチ)から認識阻害の付与されたローブを取り出した。これならばよっぽど怪しまれることはあるまい。


「あのちょっと思ったんですけど、皆さんと合流するにもアリアさんを探すにもその通信機で連絡を取ったら早いんじゃないですか?」

「いや、ここは敵地だぜ?迂闊にこっちの魔力が感知されるような事をするのは危険だと思う。相手さんがよほどバカじゃなければすでにアタシらが侵入したことは向こうも気付いているだろうからな。」

「ジェマの言う通りさ。多分俺達の魔力はもうバレてるからね、ルミが人型に戻ったのは幸いかも。」


通信機で連絡を取れたら一番楽ではあるが、すでに俺達が侵入したことはバレているはずだ。ここで不審な魔力を感知されるような事をしたら相手にバレてしまう。向こうは俺達を迎撃してくるくらいだから今も探しているかもしれないからな。ルミだけは人型と龍の時では魔力が変化するから気づかれていないかもしれないけど。


「なるほど、いつも黙ってるんであれですけど…ジェマさんって結構頭いいんですね。」

「お前ぶっ飛ばすぞ。アタシは龍でも容赦しないぞ。」

「ほらほら二人共、喧嘩してないで行くよ。」


ジェマはまだ皆に慣れていないのか集まっている場ではそこまで発言はしない。だからルミ的にはイメージがあまりできなかったのだろうが、元々ジェマは結構頭は回る方だ。亜人族の皆を守っていただけのことはある。揉める二人を引き連れて俺達は街へと繰り出す。


「かなり大きな街ですね。」

「ここが王都みたいなもんなんじゃないか?」

「そうかもね。空から見た中心にある塔みたいなのがかなり近い。」

「それでどこを目指すんですか?」

「最後にアリアの魔力を感じたのはあの塔の方だったからとりあえずあそこに向かってみよう。」


俺達が落ちたのは恐らく一番栄えているであろう中心街だ。最後にアリアの魔力を感じたのはここにあるあの高い塔の辺りである。場所から考えても重要な施設であることは間違いないだろう。


「あなた達。」


塔に向かって歩いていると後ろから声をかけられる。認識阻害のローブをしていても姿自体が消えるわけではないが、俺達がそこまで怪しい人物に見えたのだろうか。


「はい、何でしょうか?」

「その先は現在関係者以外立ち入り禁止よ。侵入者がいるようなの。」

「そうでしたか。すみません知りませんでした。」


どうやら俺達のことを怪しんで声を掛けたわけではないらしい。


「うーん、あなた達あまり見ない顔ね。ここの階層出身じゃないのかしら?」

「えっ、そうですね。」

「今はここの階層は特に厳戒態勢だから、早く自分の家に帰った方がいいですよ。ここを真っ直ぐに行けば近道です。」

「はい、親切にありがとうございます。それでは失礼します。」


危なかった。知らない単語ばかりでバレるかと思ったが、なんとか切り抜けることが塔からは遠ざかってしまったな。仕方がないここは素直に従っておこう。


「やはりアタシ達のことはもうバレてるみたいだな。」

「流石に龍に乗ってたら目立つか。」

「皆さんも無事だといいんですが…。」

「ここはとりあえず皆と合流することを目標にしよう。もしかしたら別の階層?にいるかもしれない。」


連絡手段がない以上自分たちの足で探すしかない。とりあえず他の階層と呼ばれる場所を目指して、俺達は先程の女性に言われた通りの方向に進んでいくと門の様な物がある。向こう側はこちら側に比べると少し寂れている印象だ。


「ここはそのまま通れるのだろうか?」

「少し様子を見よう。」


向こう側からこちら側に来ている人は衛兵に何かを見せている。通行証の様な物が必要なのだろう、だがこちら側から向こうに出る場合には特に何か必要なわけではないようだ。つまり一度ここから出てしまうと再び中に入るのには少し面倒な様だ。だがここは厳戒態勢になっている以上また声を掛けられでもしたら、バレてしまう確率の方が高い。


「仕方ない。ここは一旦出ることにしよう。」

「わかりました。」

「まっ、それが無難だな。」


俺達は一度中心街から出ることにした。アリア、少しだけ待っててくれよ。皆と合流して必ず助け出す。


◇◆◇◆


コータは吹き飛ばされながら考えていた。このままでは目の前にある山にぶつかってしまうと。かといってここで魔法を使ってしまうと自分たちの居場所を教えることになってしまう。そこで周りを見ると同じ方向にデリラ、フルー、コーデリアの三人がいる。


「よし、デリラ!」

「なーにー!」

「壁になってくれ!」

「えぇ!?」


コータはフルーとコーデリアの手を掴み自分の方に引き寄せると、デリラの服を掴んで正面に立たせる。自分でなんと非道なことをしているのかという自覚はしている。しかし現状ではこうすることが一番であると思っているのだ。


「よし、このまま山に向かって着地だ!」

「着地ってぇぇぇ!!!」


デリラを盾にそのまま山へと激突する。思っていたよりも土は柔らかく、衝撃は軽かった。といっても普通だったら無事では済まなかっただろうが、デリラを盾にしてよかった。彼女は元々かなり頑丈である、その能力のおかげもあるのだろうが何故か打たれ強い。それもそのはず彼女の血には少なからず龍の血が入っていることがわかったのだから。


「ふぅ。作戦成功だな。」

「成功だなじゃないよ!僕をクッション代わりにするなんて!」

「いてて、でもおかげで助かったよ。」

「無傷…。」


デリラは当然だが怒っている。だがこうして皆を無事に助けることができたのだ、良かったと考えて欲しい。それにしてもかなり遠くの方まで飛ばされてしまった。ここにいる自分を含めた4名はルミの背中の中でかなり後ろの方にいた。ルミは吹き飛ばされる際、前転の様な形で島へと突っ込んだ。そのために後ろにいた4人は一番遠くまで飛ばされたのだ。さて皆と合流したいところではあるが、ここで通信機を使ってしまってはおそらく居場所がバレてしまう。


「さて皆と通信を…」

「デリラ!待って!」


コータは急いでデリラの手を止める。たまたまではあるがデリラが一人じゃなくて本当によかった。実力は十分なのだが少し頭が弱い所が欠点である。


「どういうこと?皆と合流するなら連絡した方がいいんじゃないの?」

「ここはもう敵地だから不審魔力は感知される危険がある。だから通信機は使えないよ。」

「でもどうしよう?アリアの居場所はユーリにしかわからないし。」

「街の方に…飛んでいくのを…見た。」

「よし、とりあえず街の方に行ってみよう。」


アリアを探そうにもユーリがいなければどこにいるのかというのもわからない。まずは皆と合流するのと情報を集めるために街へと降りるのが一番いいだろう。しかし…


「僕に先頭は任せて!」

「私だって役に立てるよ!」

「もちろん…私も…。」


3人共やる気満々なのは構わないのだが、意気揚々と先頭を歩いているデリラの向かっている方向は街と反対方向である。そして二人はまったく疑うことなく付いていこうとしている。フルーはともかくコーデリアは先程街の方に飛んでいく皆を見ているのだから方向が間違っていることをわかっているはずなんだが…。


「ちょっと三人とも反対方向なんだけど!」

「えっ?そうかな。僕的にはこっちだと思ったんだけど…。」

「たしかに…街は反対方向…。」

「コーデリアわかってたなら教えてよ。私も恥ずかしくなってきちゃったよ。」

「何を根拠にしてるんだか…。」


コータは自分が頭が回る方だとは思っていない。しかしこのメンバーに限って言えば一番考えられる頭を持っているのは自分だろう。


「でも絶対にこっちの方だと思うよ。」

「何でそんなに自信があるんだよ…。」

「そこまで言うと何だかそっちの方があってるのかと思っちゃうよ。」

「僕の直感がそう言ってるんだよなぁ。」


うーむ、いつものデリラならここまで聞き分けがないことは言わないはずだ。まさかとは思うが…仕方がない。どちらにせよどこにいってもどうなるかはわからないのだ。もし自分の考えていることがあっていればデリラの直感が合っている可能性もあるのだ。


「わかった。ここはデリラの直感を信じてみることにするよ。」

「オッケー!任せて!」

「本当にいいのコータ?」

「まあなるようになるよ。」

「大丈夫…多分…。」


こうしてデリラの直感を信じることにした。


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