第十四話 聖騎士祭1日目 【S・S《シール・シューティング》】
あれから一週間俺達はそれぞれの競技に向けて、俺はディアナさん、アリアはユキさん、エレナはマルクさんと修行を行っていた。今回はチーム戦ではないのでお互いの情報を共有していない、だから競技を見るまでのお楽しみというわけだ。俺達は開会式が行われる学園の競技場へと向かっている。
「二人共準備はいい?」
「うん、ばっちりだよ!」
「はい、もちろんです!ユーリ君の方こそ大丈夫ですか?」
「もちろんさ、最終日を楽しみにしてて。」
クラス対抗戦の日程は初日に開会式と【S・S】、2日目に【S・L】、最終日に【D・B】と閉会式が行われる。
「結構たくさんの人が集まっているね。」
「他のクラスの人も集まるのは入学式の時以来だからね。」
俺達が会場に着くと、すでに結構な人が集まっていた。ディラン・アレストール彼と戦うこともあるだろうか…どうやらそろそろ開会式が始まるらしい、会場に行くか。
「それでは学園長から開会式の挨拶をしていただきます。」
「生徒諸君!これより第一回聖騎士祭を開催する!!!入学して半年経った今現在の君達の力を存分に示してくれ!!!」
「「わぁぁぁぁ!!!」」
俺は学園長の挨拶で気になることがあった。聖騎士祭?クラス対抗戦のことだよな…多分…。また学園長が前日に名前を考えたとかそんなとこなんだろうな。まあ皆盛り上がってるし、気にしないことにしよう。
「それではこれより【S・S】を始めます。競技に出場する選手はお集まりください。」
「いよいよだね、アリア。」
「うん!修行の成果ちゃんと見ててね!」
「もちろん!」
「それじゃあ行ってくるね!」
「アリアさん、少し変わりましたね。」
「そうだね。」
昔はあまり自己主張をする方ではなかったけど最近はすごく明るくなった気がする。《大賢者》という能力を手に入れてから学園に来たり、魔物と戦ったり色々とあったからきっと成長しているんだろう。俺も負けてられないな。さて観客席からアリアの応援をしないとな。
「エレナ、観客席に行ってアリアの応援をすることにしよう。」
「そうですね。」
競技の順番はくじ引きで決められるようだ。それぞれの代表生徒がくじを引き競技場の上空に映像魔法で表示される。競技も上空の映像魔法で中継されるようだ。どうやら順番は《青》《黃》《翠》《紅》《紫》のようだ。アリアの出番は最後から2番目みたいだな。
「…始め!」
まずは《青》クラス代表の生徒が『魔法弾』を使いシールを落としていく。特別に何かをしている様子はなく、基本に忠実に魔法を発動し、シールを狙い撃ち落とす。結果は30点。シール数は全部で50個なのでまあまあの成績だろう。続いて《黄》クラスの生徒は素早く魔法を発動させることを意識しているんか、とにかく弾数を増やしている。結果は27点。次、《翠》クラス。31点。【S・S】は『魔法弾』しか使えないというルールなので基本戦略として、弾を確実にシールに当てるか、とにかく発動スピードを早くして弾数を増やすといった戦略を取ることになる。ただ命中に重きを置いてしまうと全てを撃ち落とすほど魔法を発動することができないし、逆に魔法発動に重きを置きすぎるとシールに命中しなくなってしまう。
「3クラスとも基本に忠実といった感じだね。」
「はい。何か特別な対策があるといった感じではありませんでしたね。」
それもしょうがないことなのかもしれない。クラス対抗戦もとい聖騎士祭はやるときまってから内容が決まったのはついこの間のことだし、対策ができなかったのかもしれない。後は、他の競技の方が向いていたがメンバーの能力バランスを考えたらこの種目に出場することになったとか色々あるかもしれないしな。そう考えると俺達はそれなりにバランスはいいのかもしれない。
「次はアリアさんの番ですよ。」
「いよいよだね。」
アリアは前に出てくると手を前に出し構える。
「《紅》クラス代表アリア・グランベール!…始め!」
「『魔法弾・二重』!!!」
アリアはユキさんに教えてもらった多重展開『二重』で『魔法弾』を発動した。魔法陣から放たれた弾数は3発。その魔法陣が2つなので弾は全部で6発である。今までの選手と違い対策をしてきただけあって他クラスの観戦している生徒も驚いている。だが俺達も驚くことがあった。
「えっ?!」
「す、凄いな…。」
アリアは驚くべきことにシールに当たらなかった弾が追尾して確実にシールに当たっている。
「エレナあれってどうなっってるの?」
「『追尾弾』の様な魔法を使っているわけではないので純粋に魔力操作をしているのではないでしょうか。」
「魔法陣から放たれた魔法を操作することって可能なの?」
「実際やっているので、できないことはないと思いますが…かなり高度な技術でしょう。操作系の魔法と違って魔法陣からは完全に離れていますから。」
「なるほど。流石はアリア、修行の成果だね。」
「そこまで!《紅》クラス代表、アリア・グランベールの得点は48点!暫定1位です!」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「えへへ、恥ずかしいな///」
魔力操作で弾を操作しつつ、魔法を放つという離れ技を披露したアリアの点数は48点。ほとんど満点という高得点に会場も盛り上がる。後でちゃんと労ってやらないとな。次は《紫》クラス、最後の選手だ。
「本日最終競技者、《紫》クラス代表カルロス・クライフ!」
うん?《紫》クラス代表のカルロス・クライフは変わった構えをしている。腕を前に突き出し人差し指と親指だけ開いて左手で右手を支えるようにしている。
「エレナあれは何かわかる?」
「うーん…おそらく《拳銃》と呼ばれる武器の構えだと思います。」
「《拳銃》?」
「はい。ユキさんの方が詳しいと思いますが、《拳銃》とは東方の国に伝わる武器で鉛の弾をすごい速さで飛ばせるとか。『魔法弾』に似ていますが、魔力を必要としないので魔法を使えない能力の人でも扱えるそうですよ。」
「そうなんだ。でも何でその構えをしているんだろう。競技が始まればわかるかな。」
「姫様、私にご加護を。」
「…始め!」
「『魔法弾』!!!」
彼は指先に物凄く小さい魔法陣を構築、そこからパァン!という弾けるような音が鳴るとシールは次々と破壊されていく。俺達はあまりの音の大きさに耳を塞いでしまった。
「何だこの音?!それに弾が見えない!」
「私達の目では捉えきれない速さで、弾を飛ばしているということでしょうか?」
さらに驚くべきことに彼の指先の魔法陣はずっと展開されたままだ。普通魔法が放たれれば魔法陣は消えるはずだが、彼の魔法陣は消えずにそこから弾が絶えず出続けている。
「そこまで!《紫》クラス代表、カルロス・クライフの得点はな、なんと50点満点です!」
会場もまさかアリア以上、それも満点が出ると思っていなかったのか、あるいは彼の指から放たれた目で追えない爆音の弾に驚いたのかはわからないが、静まり返っている。
「それでは【S・S】の表彰を行います。3位《翠》クラス、2位《紅》クラス、1位は《紫》クラスです!!本日の競技はこれで終了となります。皆様お疲れ様でした。」
自分達の実力を過信していたわけではなかったが、まさかアリアが負けるとは思っていなかった。カルロス・クライフ彼の能力が【S・S】に向いていたのだろう。他のクラス代表者達もやはりそれなりの能力持ちがいるだろう。今一度気を引き締めないといけないな。
「アリアさんのところに行きましょう。」
「そうだね。」
俺達はアリアと合流し、お疲れ様という意味も込めていつものカフェでお茶をすることにした。
「二人共、ごめんなさい!」
「そんな、謝らないでください。」
「そうだよアリア。2位だって十分凄いよ!」
それじゃなくてもアリアが見せたのは高度な技術だった、あれで勝てないなら俺達でも勝つことはできないだろう。
「今日は好きなだけケーキ食べていいよ。俺が奢るよ、だから元気出して?」
「うん、ありがとう!じゃあ追加で注文しちゃおうかな!」
どうやらアリアは元気になってくれたようだ。よかったよかった。
「だけど残りの2競技も気を引き締めないとね。《紫》クラスの彼のような人物がまた出てくるかも知れないし。」
「そうですね。明日は私の番ですから、お二人共見守っていてください。」
「もちろん。そういえばエレナは前に王からの命令で自分のために聖騎士祭が行われてて、優勝しないとスカーレット家を貴族から外されるって言ってたけど最近は何か言われてる?」
「いえ。そういえば私が代表に選ばれてからは特に音沙汰ありませんね。」
「そうなんだ。」
前々から少し怪しいなと思ってはいたけどもしかして王じゃなくてスカーレット家をよく思わない権力者とかの嫌がらせなのではないだろうか。うーん、まあとりあえず聖騎士祭に優勝すれば何も問題はないんだろうけど何か少し引っかかるんだよなぁ。
「とにかくエレナは明日頑張ってね!アリアと観客席で応援してるから!」
「はい!、、、何もないといいんですけど…」
聖騎士祭初日は何事もなく無事に終わることができたのでよかった。このまま何も起こらずに終わることができればいいのだが、俺の勘は悪い方によく当たるからな。外れることを願うばかりだ。
少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!
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