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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
暁闇の偽り編

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第百三十七話 魔力の器

長老の話では獣人族に魔族から貸し与えられた物は異世界の物ではないかということだった。だがどうして異世界の物と判断できるのだろうか?異世界の物というのが何かはわからないが俺達の様なこっちの世界の人間がそれを見てすぐに判断できるのか疑問である。


「異世界の物ですか。」

「もしかして僕の出番かな?」

「異世界の物と言われているのじゃが、果たしてそれが本当かどうかはワシには判断は付かん。」


異世界の物という言葉にコータは反応した。たしかに俺達の知っている中で一番異世界について詳しいのはコータだろう。なにせ《迷い人》であり、唯一転生前の記憶をそこそこ持っているからである。普通の《迷い人》は成長と共に前世の記憶が薄れていくらしいのだが、彼は俺達《勇者》と一緒にいるおかげで転生前の世界のことを記憶している。


「それはどんな物なんですか?」

「ワシにも何かわからんのじゃ。ただ《迷い人》の衣服らしいとはきいたの。」

「《迷い人》の衣服?」


《迷い人》の衣服ということはただの衣服ということはないだろう。何か魔術的な要素があるのだろうか?いやコータはたしか異世界には魔法がないって言っていたはずだ。それにそれが本当ならば《迷い人》の衣服というのはどうやって手に入れたのだろうか。


「コータどう?」

「うーん、異世界にある衣服だからどうってことはないと思うけど。」

「たしかコータの世界には魔力とか魔法とかないんだよね?」

「ないよ。だからどんな衣服かわからないけどそういう効果あるってのはあり得ないね。ただ素材だけで涼しいとか温かいとか感じることはあるけど、あくまでも気温程度の話かな。」


コータの話を考えるならこちらの世界の衣服の方が、むしろ優れているのではないかとさえ思う。素材はともかく魔法を付与できるという点を考えれば明らかにこちらの世界の物の方が役に立つのは間違いないだろう。俺はもう一つの疑問を皆に投げかけた。


「そもそも異世界の衣服ってどうやって手に入れるんだ?」

「《迷い人》が持ってくるとか?」

「うーん、僕は特に何も持ってなかったからなぁ。大体この世界の人間として生まれ変わっているし、何かを持ってくるってできないと思うんだよね。」


たしかにその通りだ。この世界の人間として生まれ変わっているということは異世界の衣服を着用しているわけではないだろう。可能性としては衣服を《女神様》に頼んで持ってきた、もしくはそういう《能力者》であったとか記憶を頼りに再現したというところだろうか。


「水を差して悪いんだが、異世界から来る奴のことを何で《迷い人》って言うんだ?アタシはあんまり知らないんだけど、そこのコータって人の話じゃ生まれ変わってるんだろ。それなのに迷いって変じゃないか?」

「それは異世界から迷い込んで来た人も実際にいるからですよ。二人だけですが。」


たしかにコータの様にこの世界で生まれたのならば《迷い人》という表現は適切ではない。だが《迷い人》にはコータに様にこの世界に生まれ変わる転生者と転移者という二通りがある。転移者という異世界から迷い込んでくる者は過去に二人いた。


「じゃあそいつらが持ってきたんじゃないのか。」

「そう言われると、そうかもしれない。」

「というかそれなんじゃない?」


ジェマの疑問点が解決の糸口となった。たしかに転移者であればそのまま異世界の衣服を持ってくることができるだろう。そしてその転移者の二人というのは俺の父と初代《勇者》であり現《魔王》である。


「魔族が所持しているということを考えると、ユーリ君のお父様ではなく《魔王》が初代《勇者》としてこの世界にやってきた時に持ち込んだ物でしょうね。」

「そうやって聞くとただの衣服じゃないって感じがしてくるよ。こっちの世界に来て何かしたのかも。」

「たしかに何らかの魔法が付与されていても不思議ではないな。周囲にいるだけで影響がある《魔剣》や魔法道具があると聞く。そういった類かもしれないな。」


《魔王》の衣服と聞けば何らかの効果がある物に思えてくる、というかあるだろうな。わざわざ獣人族に貸し与えるというくらいだから何もないわけがない。


「ジェマ達亜人族の集落を襲った獣人族にも聞いてみましょう。」

「協力的だから知ってることは話してくれるだろうね。ただ知ってるかどうかはわからないけど。」

「魔族がわざわざ消しに来ていたわけだし、何かは知ってると思うけど…。」

「それはこちらでなんとかします。さて今日はこの辺りで解散しましょう。」


とりあえず今日はそこまでと解散することになった。俺はこの後ちょうどイヴァンさんに会いに行こうとしていたからこの場にいるのは手間が省ける。もしかしたら専門ではないかもしれないが手軽に会えてすぐに確認できるのがイヴァンさんくらいしかいないからな。皆に聞かれても問題はないし、ここで聞いてしまうことにしよう。俺が聞きたかったのはワンダーと戦ってからの症状のことだ。


「イヴァンさん、少し相談が。」

「構わないよ。どうしたんだい?」

「実はワンダーとの戦いの後から、魔法が上手く使えないんです。」

「魔法が上手く使えない?」

「はい。魔力が流れているのは感じるんですけど…」


戦った直後は顔以外が動かず魔力もなかったためわからなかった。しかし一日経ってぎこちないものの身体は動くようになり、魔力は完全に回復した。だがどうしてか俺は上手く魔法が発動できなくなっていた。


「少し見せてもらっていいかな。」

「はい。」


イヴァンはユーリの背中に手を置く。こうすることでユーリの魔力の流れを直接感じ取ることができる。するとイヴァンは何かわかったような顔をしていた。


「イヴァンさんユーリの状態は?」

「専門ではないからなんとも言えないが…おそらく魔力の器が壊れているんじゃないだろうか。」

「器が壊れている?」


どうやら俺は魔力の器が壊れているらしいが、魔力の器とはなんなのだろうか。初めて聞く言葉だ。


「魔力というのは個人によって総量が違うのはわかっていると思うが、どうやってその総量が増えるか知っているかい?」

「魔法を使って魔力切れになると増えるっていいますよね。」

「実際それで使える魔法の規模や回数は増えている感覚はあるよ。」

「その認識で合っている。魔力は使うことで総量が増えていく。魔力が入っていた器が少しずつ成長していくというイメージだ。もちろん個人差はあるがね。」


なるほど、つまり器とは魔力を入れる物のイメージということか。使えば器が大きくなり魔力の総量も増えていくということらしい。実際昔に比べて随分魔力は増えたように感じる、さらにいうなら俺は《勇者》の魔力もあるから人よりもさらに多いだろう。


「だがその器は時に壊れることもあるんだ。それは自分の限界以上の魔力を引き出した時だ。」

「限界以上って魔力の総量はあるのにそれ以上使うことが可能なんですか?」

「可能だ。魔力を全て使いきった状態で無理に魔法を発動させようとすれば、周囲に魔力が滞っている状態ならを発動することがあるんだ。」


そもそも限界以上の魔力というのが本来あり得ないことなのだ。魔力を使い切ってしまうと動けなくなったり倒れるのでその時点で魔法を使おうという状態にならないだろう。しかし、レシア砂漠の様に魔力が発生している場所だとそういうこともあるということなのだろう。


「だがそんなことをしたら普通は器は壊れ魔法が使えなくなるだろう。」

「えっ、じゃあユーリは魔法を使えなくなったんですか?」

「器が壊れると魔力を感じることもできなくなるだろうから、それはないと考えていい。」


危なかった、もう少しで魔法が使えなくなるところだった。しかし、一つわからないのはあの時俺はレシア砂漠の魔力を使ったわけではない。自分の中の《勇者》の魔力を変換したのだ。だけど先程の器の話を聞いて納得がいった。


「ここまで説明を聞いてわかりました。俺は自分の魔力の器と3つの《勇者》の魔力の器、合計4つの器があるんだと思います。ワンダーとの戦いで俺は自分の魔力が無くなったので《剣の勇者》の魔力を無理やり自分の魔力に変換しました。恐らくですがその時に器を1つ壊してしまったんだと思います。」

「たしかに器自体はあるように感じる、だから魔力は感じるんだろう。正確な数までは私にはわからないが、壊れた器もあるように感じるからそれのせいで魔法が使えないのでは?」

「なるほど。」

「それで親父、ユーリはどうすれば治るんだ?」

「さっきも言ったが私の専門ではないからな、専門の医者に見てもらったほうがいいだろう。壊れた器は治療ができるはずだ。」


無意識の内に器は壊してしまったようだが、とりあえず治療はできそうなのでよかった。専門の医者か、どんな感じなんだろうか。今までケガをしたとか魔力切れで動けないということは経験したが病気にはなったことがないからいまいちよくわからない。


「私の方で紹介状を書いておくから明日にでも行くといい。後は我々に任せてしばらくはゆっくり休息を取ってくれ。」

「ありがとうございます。」

「早く良くなるといいですね。」


こうしてこの日は解散することになった。毎度毎度わかったことと謎が残ることばかりだが、いまだけは魔法が使えるようになるまでゆっくりと休息することにしよう。


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