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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
暁闇の偽り編

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第百三十一話 蒼い炎

エレナとアリアはラニエスの砂漠に描かれた紋によって発動した魔法によって身動きが取れないでいた。ラニエスは同じ風属性使いのワンダーに魔法の強さや規模、魔力こそ負けてしまうが、上手く魔法を使うという点においてはワンダーを勝っている。


「『悪魔の風刃ディアボリカル・ウィンドエッジ』」

「「きゃぁぁぁ!!!」」


動けない二人に容赦なく、ラニエスは魔法を放つ。当然避けれない二人は風の刃が直撃してしまった。


「まさかこれで終わりってわけじゃないだろ?」

「『治療魔法(ヒール)』!」

「ありがとうアリアさん。早くここから抜け出さないと。」

「私に任せて。」

「何をこそこそ話しているかわからないけど、無駄だよ『悪魔の風刃ディアボリカル・ウィンドエッジ』」」


二人はダメージを負ってしまったがすぐにアリアの『治療魔法(ヒール)』で回復することができた。だがこのままではいずれ耐えられなくなってしまう。どうにかして抜け出さなければとエレナは考えていたが、どうやらアリアに何か考えがあるようだった。そうこうしている内に再びラニエスが風の刃を二人に向けて放つ。


「『魔法弾(マジック・ショット)三重(トリプル)』!!!」

「ははは、どこに向けて打っているんだい?」


アリアは『魔法弾(マジック・ショット)』をラニエスでも風の刃でもなく自分達の周辺に向けて放った。それと同時に風の刃が二人を襲い砂埃を巻き上げた。


「買い被りすぎだったかな。」

「『炎の檻(フレイム・ケージ)二重(ダブル)』!!」

「何!?だけどこの程度の魔法は効かない。」

「そうでしょうね。それは攻撃用の魔法ではありませんから。」


アリアは『魔法弾(マジック・ショット)』によって周辺の砂を狙った。それは砂に描かれた紋様を消すためである。アリアの《副技能(サイドセンス)》によって魔法の痕跡を追うことができる。どんな魔法にも起点は必ずある、特にこういった紋を描くような系統の魔法は起点となる紋を見出せば発動しなくなる。そのことをアリアは知っており《副技能(サイドセンス)》によって補足することができたのだ。そして二人は動けるようになりラニエスの背後へと回った。


「『聖なる光(ホーリー・ライト)二重(ダブル)』!!」

「ぐわぁぁぁ!!!」


エレナは攻撃ではなくラニエスの動きを封じるために『炎の檻(フレイム・ケージ)』を発動させたのだった。気を取られたラニエスはアリアの接近に気付いておらず至近距離から《聖》属性魔法を受けてしまう。


「やった!」

「これでやられてくれるほど簡単ではないと思います。今のうちにあれの準備を!」

「わかった!」


エレナとアリアは魔力を込める。そしてタイミングを合わせ魔法を発動する。


「「『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』!!!!!」」


合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』はラニエスに向かって一直線に放たれる。ラニエスハまだ先程の魔法のダメージが残っており足取りが覚束ないでいる。避けれるわけがない、そう思った。


「舐めるなぁぁぁ!!!」

「飛び上がった!?」

「外しましたか!」


ラニエスは明らかにダメージを受けていたにも関わらず『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』を回避した。先程アリアが破壊した紋を再利用して新たな魔法を組んでいたのだ。それはラニエスの身体能力を上昇させ遥か上空へと飛び上がった。


「ハァハァ…今のは危なかったよ、僕は打たれ弱いからね、だけどこれでお仕舞だ。『悪魔の暴風ディアボリカル・ストーム』」


ラニエスは先程の竜巻よりも更に強い暴風を起こし、アリアとエレナの二人は砂と共に上空へと巻き上げられる。そして巻き上げられた砂は風と混ざりあいそれは礫となって二人を襲った。


「きゃぁぁぁ!!!」

「うわぁぁぁ!!!」


巻き上げられた二人はそのまま地面へと落ちる。完全に気を失っている二人は受け身を取ることができず、そのまま落下した衝撃で目を覚ました。幸いにも下が砂漠の砂ということもありクッションの代わりになったためダメージは軽減された。しかし二人共立ち上がれなかった。


「ぐっ…うっ…。」

「もう虫の息か。止めを刺してあげるよ。じゃあね。」

「こ、こんなところで…。」


ラニエスが動けない二人に近寄り止めを刺そうとする。すると突如エレナの体に魔力が溢れ出した。そして傷口から発火した。その炎はラニエスにも飛びかかる。その程度の炎は大したことないと思ったが、ラニエスは後方へと飛んだ。


「なっ!無駄なあがきを。」

「エレナ!」

「これは一体…?」


一体何が起こっているのかエレナにもわからなかった。傷口から炎が溢れ出している、そしてその炎はいつもの赤色から蒼色へと変化する。すると不思議なことに傷口が塞がっていった。『治療魔法(ヒール)』を使用したわけでもないし、『回復薬(ポーション)』を使用したわけでもない。


「回復したみたいです。動けます!」

「『治療魔法(ヒール)』!うん、私も戦える!」

「自然治癒かな?本当に色々できて厄介だね。」

「アリアさんもう一度やりましょう。」

「でもどうやって当てる?さっきみたいにまた避けられちゃうかもしれないよ?」

「私に考えがあります。それは…」

「わかった!やってみよう!」


よくわからないままではあるがエレナは傷口が塞がり回復した、アリアも回復し二人は再び立ち上がる。そして先程は回避されてしまったが、ラニエスにもう一度『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』を当てるためにエレナは作戦を考えた。


「さぁ、これで最後にしてあげるよ。『悪魔の暴風ディアボリカル・ストーム』」

「アリアさん!」

「『土の壁(アース・ウォール)四重(クアドラプル)』!!!!」


アリアは自分たちを取り囲むように『土の壁(アース・ウォール)』を発動し『悪魔の暴風ディアボリカル・ストーム』に巻き込まれないように防いだ。しかし風中にいるということはラニエスにもわかっている。風が治まって出てきたところを狙い撃ちすればいいとラニエスは考えていた。


「無駄なあがきを!出てくるのを待つだけさ。」


ラニエスは壁の中に二人の魔力があることはわかっていた。そして風がだんだん弱くなるのを感じ、ラニエスは止めを刺すために両手に魔力を込める。そして壁から勢いよくアリアが飛び出して来た。


「終わりだ!『悪魔の風刃ディアボリカル・ウィンドエッジ』」

「くっ!『防御(プロテクション)』!」

「甘いよ、『悪魔の風槍ディアボリカル・ウィンドランス』」


アリアは空中で風の刃を回避せずに、『防御(プロテクション)』で防いだ。しかしすぐにラニエスは風の槍を放ちアリアの体を貫いた。だがそれに気を取られエレナの姿がないことにラニエスは気付いていなかった。


「ここです!」

「何!?」


エレナはラニエスの足元から飛び出してきた。エレナは土の壁に囲まれたときに魔力をできる限り消しつつ、砂漠の影響がないように体に魔力を纏いながら砂の中に潜りラニエスの元まで進んできていたのだ。そして壁の中にいないことを悟られないようにその場に炎で自分の分身を残した。


「『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』!」

「この程度!」

「アリア!」


そしてそのままエレナは魔法を発動させる。さらに風の槍に貫かれたアリアはラニエスを油断させるために治療せずに、やられたフリをしていたのだ。エレナがラニエスの至近距離で『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』を放つのを待っていたのだ。


「『聖なる光(ホーリー・ライト)』!」

「しまっ…」

「「『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』!!!!!」」

「グワァァァァァ!!!!!」


アリアはラニエスとエレナの間に『聖なる光(ホーリー・ライト)』の魔法陣を展開、そこに『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』をぶつけることで『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』へと変化する。


「ワン…ダー…。」


ラニエスは『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』によって消し去られたのであった。


「大丈夫ですかアリアさん。」

「うん…でも魔力が…。」

「私の魔力を使ってください。」


アリアはエレナの魔力を貰い『治療魔法(ヒール)』を発動し、回復した。


「ふぅ、なんとかなりましたね。新しい力も手に入ったようですし。」

「エレナの傷が塞がった蒼い炎のこと?」

「ええ。とりあえずそれは一旦おいておきましょう。急いでユーリ君の元に向かわないと。」

「そうだね。行こう!」


アリアとエレナは急いでユーリの元へと向かうのであった。


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