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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
クラス対抗戦《聖騎士祭》編
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第十三話 選ばれし者

ユーリ達が競技内容を聞いている頃、他のクラスでも動揺に発表されていた。学園のクラスは騎士団と同じ五つ。《(レッド)》、《(ブルー)》、《(グリーン)》。《(イエロー)》、《(ヴァイオレット)》である。


「やっと俺の力を見せつける時が来たようだな。」

「はい…。」


「ついに学園っぽいイベントキター!《勇者》の力見せてやる!!」

「はいはい。」


「どんな強者と手合わせできるか楽しみだね!」

「本当に君って戦闘狂(バトルジャンキー)だよね。」


「私達は負けるわけにはいきません。」

「わかっております。姫様。」


それぞれのクラスの代表者は各々の思惑を抱えて競技に向けて準備を進めていた―――。


◇◆◇◆


「アリア様、準備はよろしいですか?」

「はい、大丈夫です!」

「では行きます!」


アリアはユキさんとお二人でS・Sの練習に励んでいる。ユキさんがシールに見立てた氷の的を操作し、アリアがそれを『魔法弾(マジック・ショット)』で撃ち落とす。《大賢者》のおかげもあってかスピードは早いがまだまだ魔力コントロールが甘く中々的には当たらないようだ。エレナは魔法の練習と同時に基礎体力の向上のためランニングや筋力トレーニングを行っている。なにせ一周とはいえ大きな学園をレースするわけだから体力も必要なのだ。魔法ありなので『身体強化(フィジカル・ブースト)』も使えるが、元の能力を伸ばしたほうが魔法の効果も上がるので自身も鍛えているわけだ。さて俺はというと今日も相変わらずマルクさんとの修行をしている。俺が出場するD・Bは対人戦闘だし、相手の情報が全くわからない以上対策の立てようがないのだ。だからいつもと同じくマルクさんと戦っている、そしてボコボコにされる。


「手加減されててこんなにボコボコじゃ自信なくなるなぁ…。」

「いえいえ。ユーリ様は頑張っておられますよ。」

「ボコボコにしてる張本人に言われても説得力ありませんよ!」

「これは失礼いたしました。とはいえたしかに同じ相手ばかりというのもあまりよくありませんね。他にも誰かと手合わせできると良いのですが。」

「手合わせしてくれそうな相手かぁ…。」


うーむ。王都に来てからというものそこまで知り合いを作る機会がなかったからなぁ。ガイウスはまだ治療をしているし、流石にセシリアさん達に相手をしてもらうわけにもいかない。どうしたものか。


「私に少し心当たりがあるので任せてもらいませんか?」

「ユキさん本当ですか?」

「はい。お任せください。」


とりあえず他の相手探しはユキさんに任せるとして、またマルクさんにボコボコにされる覚悟を決めて引き続き修行を始めた。


次の日、学園からの帰り道で知らない女性が話しかけてきた。


「君がユーリ君ね。」

「そうですけど、あなたは?」


纏っている雰囲気は妖艶だが、並の実力者ではないことがわかる。だけど少し目のやり場に困る格好をしている。デコルテを大きく露出し、スカートのスリットから出ている足が何ともいえない。


「ユーリ変なこと考えてない?」

「ユーリ君変なこと考えていませんか?」

「何だよ二人揃って!考えてないよ!」


嘘です、考えていました。男の子だからしょうがないじゃないか、大人のお姉さんには弱いのだ。それにしてもこの人はどうして俺の名前を知っているんだろうか?


「あのー失礼ですがどちら様ですか?」

「まあとりあえずお屋敷まで行きましょう。そこで自己紹介するわ。」

「わかりました。」


俺達は謎の女性と共に屋敷まで行く。すると玄関にはユキさんが出迎えてくれていた。


「皆様おかえりなさいませ。ディアナも一緒だったんですね。」

「ええ、一目でユーリ君ってわかったわ。」

「えっと?」

「さて自己紹介するわね。私はディアナ・リーゼ、冒険者時代のユキの知り合いで時々パーティーを組んだりもしたわ。今は【真夜中の魔女】というパーティーに所属していてランクはAよ。私がユキから頼まれた修行相手ってわけ。」

「【真夜中の魔女】ってあの!?」

「エレナ、そんなに有名なの?」

「有名も何も数々の実績を残している有名なパーティーですよ。謎も多くてわかっているのは全員が女性でAランク以上ということだけです。」

「へぇ〜」


俺が気の抜けた返事をするとエレナにジト目で睨みつけられた。俺が悪いのだろうか?こっちは田舎出身だから情報だって中々入ってこないんです…。アリアだって知らなかったという顔をしてるでしょ。


「と、とにかくそんな凄い人に修行してもらえるなんて、よかったねユーリ!」


そんな俺に気を使ってすかさずアリアのフォローが入る。


「そ、そうだね。ディアナさんよろしくお願いします!」

「若いって元気でいいわね〜。それじゃあ早速戦うわよ。」


まずは実力を見てもらうために何でもありの模擬戦をすることになった。審判はユキさんがやってくれる。


「本気で行きます!」

「かかってらっしゃい。」

「『身体強化(フィジカル・ブースト)』!!!」

「よっ。」

「えっ?」


気づいたら俺の目の前には青い空が広がっていた。どうやら身体をひっくり返されたらしい。今何をされたんだ?まったくわからなかった。呆然としてる俺をディアナさんが覗き込んでくる。


「今、何をされたかわかったかしら?」

「いいえ、まったく。」

「これからクラス対抗戦までは私と稽古してもらうわ。」

「よろしくお願いします!」


マルクさんやユキさんも十分化け物クラスだが、ディアナさんもまたかなりの実力者だ。稽古してもらうのにこれ以上の人はいないだろう。俺達はそれぞれの競技に向けて準備を進めていった。


◇◆◇◆


王都の某所にて―――。宮廷魔道士団副団長であるイヴァン・アレストールは今が絶好の機会だと感じていた。団長であるセドリック・モルガンが病に伏せている今、自分が戦果を上げることができれば自分こそが団長にふさわしいと周囲も納得するはずであると考えていた。そんな彼に近寄って来たのは怪しげなフードの男だった。フードの男は優秀な人物を“支援”しているとイヴァンに接触をしてきた。そこでクラス対抗戦で事件を引き起こし、そこで自らの実力を示し自身が宮廷魔道士団長になるという計画を企てた。


「順調に準備は進んでいるのだろうな?」

「はい、滞りなく。後はクラス対抗戦本番を待つだけです。」

「では手筈通りに。」


会話が終わると怪しげなフードの男は影に潜んで消えていった。この前の会議の内容から恐らく先程まで目の前にいたフードの男こそが魔物を発生させ、学園の生徒を魔人に変えた魔族であるとイヴァンは思った。しかし仮に何かがあっても自分で対処すればよいと考えていた。彼は客観的に見てもかなりの実力者だ。宮廷魔道士団副団長になるだけあって、王都はもちろんこの国で考えても上から数えた方が早いくらいである。


「ふん、所詮は低級魔族だ。せいぜい私の役に立ちたまえよ。クラス対抗戦が楽しみだ。フフフ…。」


だが魔族は彼が思っている以上に狡猾なのだ…。


「バリオン様。準備は全て整いました。」

「魔物の調整も済んでおります。」

「クククそうか、ならば愚かな人間共に魔族の力を思い知らせてやれ!!!」

「「はっ!」」


初めてのクラス対抗戦は様々な思惑が交わり、後の歴史に残る結果となった―――。

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