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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
深淵の復讐者編

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第百二十話 能力の傾向

どうにかして女神様に会うことはできないだろうか。シロの事を抜きにしてもまだ見つからない《勇者》のことや《魔王》復活までの時間はどれくらい残されているのか色々聞きたいことはあるのだが…。まあ今考えてもいい案が思いつくわけではないし、明日にでも皆の知恵を借りることにしよう。


「そういえばユキさん以外の氷魔法の使い手に初めて会ったよ。」

「温度が下がって手強い相手でござったな。コーデリア殿がいなかったら危なかったでござるな。」


アリアが氷魔法使いについて話した。それに補足する形で実際に戦ったランマとコーデリアが話す。


「なんとか…できた。」

「『合体魔法(シンクロ・キャスト)』じゃなくて単体で熱湯を出したんだよね。」

「実際にそれを実現できるというのは凄いことですよ。」


これは師匠に聞いた話だけど実際にそういう魔法はできないことはないらしい。熱湯だけではなく熱風と冷水や冷風などもそうだが基本的には2つの異なる属性魔法を組み合わせることで発動するほうが無難である。そうは言っても『合体魔法(シンクロ・キャスト)』自体は難易度は高いからそうそうできる物でもない。師匠曰く、その属性の魔法を極めていると温度の操作なんかもできるようになるらしいとのこと。思い返せば以前エレナが放った魔法は温度を後から上げるという今回と似たようなことをしていた気もする。極めているかはさておき、二人共《勇者》であるしその属性魔法が得意だからこそできる技なんだろうな。


「ですが氷魔法を使わせたらユキには及びませんよ。」

「どうしてですか?マルクさん。」

「ユキの氷魔法は本気を出せば、お湯や炎でも凍らせるのに時間はかかりませんから。もちろん人間もですが。」

「ひぇ〜恐ろしいですね。」

「マルク様大げさですよ。相手にもよりますよ。」

「ヒョドルでも苦戦したでござるが…世界は広いでござるな…。」

「喜んでたのが…恥ずかしい…。」


流石はユキさんといったところだろう、まあAランク冒険者だったわけだしそのくらいはわけないのだろうか。とはいえヒョドルでもかなり周囲に影響を与えると思ったのだが…ユキさんだったら魔法を使っているだけで凍土になりそうだ。


「恐ろしいと言えば、デリラの暴走も危なかったね。」

「たしかにあれは危なかったね。」

「デリラ様がどうかなさったのですか?」

「実は…」


俺はユキさんとマルクさんにデリラの暴走の件について話をした。もしかしたらユキさんは冒険者時代に何か似たような事例があるかもしれないし、マルクさんも同じ様に冒険者時代のことも聞ければいいということもあるがマルクさんの能力である《剣鬼》はデリラの《戦闘狂(バトルジャンキー)》の様に発動していると身体能力が上昇するという点で似ている部分がある。もしかしたらマルクさんも昔何かあったかもしれない。


「すみません。私はそういったことは聞いたことがありませんね。」

「ふむ、デリラ様はたしか戦闘している間に徐々に身体能力があがっていくという物でしたよね?私も似たような能力ですが、デリラ様と違うのは常に上昇するわけではないという点ですね。」

「デリラで言うところの戦闘し続けるみたいな条件ってことですね。」

「はい、私の場合簡単に言うなら剣を握って戦うことですが、自分よりも強者でなければ発動しません。」

「強者ですか。」


自分より強いということはつまり素の力だけでは勝てないと思ったときにだけ、自身の能力を強化してくるということか。これもまた変わった能力である、しかもかなり不便な。ここぞという時には発揮するが自分よりも下であれば発動しないということである。つまりギリギリ勝てるくらいの相手には発動しないということだから結構しんどそうだ。だからこそマルクさんはただの剣技だけでも鍛えられあげていてあの強さなんだろうが、自分に厳しい能力だなと思う。


「ええ、なのである種の条件が達せられなければいけない限定的な能力とも言えます。対してデリラさんの様に条件が広く発動しやすい場合は、一般的にそこまで暴走するような能力ではないと考えられています。」

「条件が厳しければそれほど得られる力も強いということですね。逆に条件が緩ければそうでもないと。」

「そういうことです。」


なんとなく能力の傾向というのはわかった。たしかにデリラの能力の条件が戦うというのであればそうなんだが…俺の仮説では命をかけるかどうかでも能力の上昇率は違う。デリラの場合条件自体を調整することができるということではないだろうか。明日、本人にも教えてあげよう。


「能力って奥が深いんだなぁ。」

「そうですね。マルク様の話を聞いて思い出しましたが、もしかしたらブランシェ様も身体強化系なので何かわかるかもしれません。」

「あーたしかにブランシェさんもそうでしたね。だけど会おうと思って会えますかね?」

「もし会うのであれば管理している地域まで直接会いにいくしかないと思います。」


ブランシェさんに直接話しが聞ければいいと思ったが流石に騎士団長に気軽に会えるわけではないだろう。結構セシリアさんは王都に来ているから勘違いしてしまうが普段騎士団長というのは中々管理している地域を離れることはないのだから。


「二人共ありがとうございました。」

「いえ、お力になれたのなら幸いです。」

「また何かありましたらいつでも頼ってください。」


その日はそのまま眠った。次の日授業が終わった後、俺達は今回の話をするべくいつものメンバーで久しぶりに行きつけのカフェに行くことにした。それぞれ注文を済ませ紅茶を飲みながら今回の事件について皆と話す。そして昨日マルクさんやユキさんと話してわかったことをデリラに話した。


「ということらしいよ。もし機会があればブランシェさんに聞いてみるといいかも。」

「能力にも色々あるんだね。」

「僕も実は少し思い出したことがあって。一度実家に帰ろうかと思っているんだ。」

「バルムンク家に?」

「うん、家はエレナのスカーレット家みたいに冒険者から貴族になったんだけどその時の当主様が僕と同じ様な能力だったって聞いたことがあって。」

「いいかもしれませんね。バルムンク家がある地域はブランシェの管轄ですから。」

「えっ、そうなの?」

「なんでデリラが知らないんだよ…。」


いやどうして自分の実家の地域を担当している騎士団長を把握してないんだよという突っ込みはさておき、バルムンク家にはそんな話があるのか。能力は遺伝や傾向などはないのだが、近しい能力であったというのは何か記述が残されているかもしれないし参考にもなるだろう。


「そういえば皆の意見を聞きたいんだけど、どうやったら《女神様》と会えると思う?」

「《女神様》ですか?」

「うん、《勇者》探しも詰まってるし聞けるかどうかはわからないけど色々質問したいことはあるでしょ?最後に会ったのは俺が死んだ大和国の時だから。」

「たしかに結構前ですね。でも死にかける以外の方法で《女神様》に会えるのでしょうか?」

「うーん。」


そもそも《女神様》に会うという行為自体がかなり珍しいことだろう。コータの様に別世界からこちらの世界にやってきた《迷い人》でも最初にこちらに来る時だけしか会えないようだから今まで当たり前の様に会えていたことがおかしいのだろう。皆考えながら静まり返ってしまった、するとコータが口を開いた。


「ちょっと疑問だったんだけど教会に行って会えたりしないの?」

「どういうこと?」

「いや僕の世界じゃそもそも神様には会えないけど、なんと言っていいのか神様に何かをお願いしたりする場所はあるんだよね。それこそ教会とかもそうなんだけど、この世界の人って教会に祈りに行ったりしないの?」

「そう言われると…。」

「しないな。」


俺達の返事を聞いてまた少し考えた後、再びコータが疑問をぶつけてきた。


「あれ?でも勇者教みたいに何かを信仰するみたいな概念はあるんだよね?教会に行って《女神様》にお願いするみたいな文化はないの?」

「ないな。《勇者》は伝説だったとはいえ実在するからな。」

「ないですね、そんなこと考えたこともありません。《女神の天恵》のとき以外は《女神様》に何かしようとも思いません。」

「そういうのって修道女(シスター)でもしてないよね。」

「まあ《女神様》も実在するかしないかで言えば実在するんだけどそれは置いといて、試しに教会に行って祈ってみるのもいいんじゃないかな?」


コータの提案はなんというか俺達には盲点であった。たしかに《女神の天恵》以外で教会に用はない。普段は修道女(シスター)が女神像を管理したり孤児院を併設している所もあるという認識であった。たしかに最も《女神様》に会える可能性が高いのは教会な気もする。早速、試してみようと俺達は教会へと向かうことにした。

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