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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
深淵の復讐者編

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第百十六話 復讐者

「さて、君達はどこまで知っているのかな?」

「あなたのギルドが国には認められず出ていくことになったということは聞きました。その後あなたは死んだという手紙があなたの部下であるボルドという男から送られてきてあなたの死を知ったとライラさんは言っていました。」


俺達の言葉を聞くと少し黙り込んだ後、ナルガスは過去のことを静かに語り始める。俺達はまだ敵意を感じないナルガスの話を一旦聞くことにした。


「そうだ。国から認められなかった私のギルドは居場所を求めて国から出ていった。私達に行く宛なんてなかったが皆、私のことを信じて付いてきてくれた。セルベスタ王国を一歩出ればまだまだ他国の貴族同士では争いが絶えなくてね、私達のような暗殺ギルドでも需要がないわけではなかった。だけどいつまでも続くわけじゃない、だから私はそれ以外でも生計を立てていけるように色々なことを覚えたよ。当時は皆を露頭に迷わせまいと必死になって暗殺以外の普通の依頼もがむしゃらにこなしたよ。慣れないながらも皆上手く能力や魔法を利用してね。おかげで徐々に仕事を依頼されることも増えていった。事件が起きたのはそんな矢先のことだった。」


ナルガスの口調が少し怒気を含んだものになる。このあと一体何が起こったんだろうか、俺とデリラは息を飲んだ。


「私のギルドに冒険者がやってきて仲間を次々に殺していったんだ。元々恨まれるような仕事だったから報復や復讐ならば仕方がないと思っていた。その依頼を受けた冒険者達がセルベスタ王国の管理下に置かれたライラ・エヴァーの冒険者ギルドの奴らだったと知るまでは!」

「なんだって?そんなわけないだろ。ライラさんとあなたは知り合いだったはずだ、ライラさんがそんなことをするわけないとあなただってよくわかっているはずだ。」

「私だって最初はそう思ったよ。だが私達を訪ねて来た冒険者はセルベスタ王国の正式な依頼書を持って俺達のところへやってきた。つまり国が私達を犯罪者と認め討伐対象としたんだ、自分たちの都合が良いように利用するだけ利用してな。よりにもよってライラの冒険者ギルドの奴らが来るとはな…裏切られたと思ったよ。」


ライラさんのギルドの冒険者が殺した?そんなことは聞いていない。不都合な事実であるから隠したのか?いや、いくら国から命令が出たとはいえライラさんがそんな命令に素直に言うことを聞くと思えない。だがナルガスが出鱈目を話しているようにも思えない。それに国が認めたというのも何だか怪しさを感じる。


「すでに殺しを辞めていた私達の実力は相当鈍ってしまっていて、抵抗もできなかったよ。ただ一方的な殺しだった、奴らは泣き叫ぶ仲間をみて笑ってやがった…私の事は部下が決死の思いで逃してくれた、そのおかげで今の今まで生きてこれたよ。」

「そ、そんな…。」

「それでライラさんや冒険者達に復讐しようとしたわけか。ボルドという男の手紙はお前がなりすまして送ったものか?」

「ああ、そうだ。ボルドはこの件とは別に死んでいたから私の存在を隠すのに都合がよかった。誰かが生き残っているとバレたらまた狙われることはわかっていたからな。」


今回の事件の原因はこれが元によってナルガスによって引き起こされたことであった。まだ謎に包まれている部分は残っているが、一先ずナルガスをこれ以上暴走させないように止めなければいけない。


「真実がどうであれ、お前のやっていることは間違っている。これ以上好きにはさせない!」

「若いな少年。君のような者には理解できないだろうし、理解するような機会は訪れないで欲しいと思うよ。だが私の復讐の邪魔をするというなら容赦はしない。」

「僕も忘れてもらっちゃ困るよ!」

「そうだな。君の相手はコイツらにしてもらおう。」


ナルガスは指を鳴らすと後ろから無数の魔物が出現する。俺は《副技能(サイドセンス)》で魔物を注視する、名前は《シャドウ・ウルフ》影に潜む能力があるのか。これだけの数がいるのに全く存在に気付かなかったのは影に潜んでいたからか。厄介そうな相手である。


「デリラ、あいつは影の中を移動できるみたいだ。」

「そうなんだ、気をつけるよ。ユーリはあっちに集中して。」

「ほぅ、コイツらの能力がわかるのか。その通り影に自由自在に入ることができる、シャコウの能力で上手く連れてくることが出来たよ。」


シャコウ…たしか影を操ってたやつだな。《シャドウ・ウルフ》同じ様な能力であればデリラとの相性は悪い、苦戦は免れないだろう。俺は魔法袋(マジック・ポーチ)から聖剣を引き抜く。


「行くぞ!『身体強化(フィジカル・ブースト)三重(トリプル)』!!!」

「『部分強化ストレングス・ポイント(アーム)』!」


ナルガスは腰につけた魔法袋(マジック・ポーチ)から複数の武器を取り出す。そのどれもが禍々しい雰囲気を纏っている。俺が斬りかかると取り出した武器の剣で俺の《聖剣クラレント》を簡単に受け止める。ただの剣でこうも簡単に受け止めることができる物なのだろうか?


「私は元々《鍛冶師》の能力だがあの一件以降“呪い”を付与することができるようになった。」

「はぁ!」

「流石は《聖剣》だな。この剣に付与された“呪い”では《聖剣》を破ることはできなさそうだ。」


剣を払い再びナルガスとの距離を取る。剣だけではない、先程あの魔法袋(マジック・ポーチ)から取り出した外套や防具にも何か“呪い”が付与されているに違いない。そうでなければ普通の《鍛冶師》が俺の《聖剣》を受けれるわけがないからな。きっと最初に襲われた時の“呪い”の短剣やヘクターに刺さっていた“呪い”の針も全てナルガスが作ったものだろう。


「まるで《魔剣》のようですね。」

「《魔剣》か、あれに比べたら私の“呪い”など慎ましい物さ。《魔剣》は《魔剣》として産まれてくる物と聞く、私の様に作った武器に付与できる物とはその代償も力も大きく違うだろう。でなければこんなに武器や防具で固めたりしないよ。」

「なるほど、《魔剣》ほど力はないが、その分色々な物に付与できるのが利点ですかね。ですが俺の知っている“呪い”とは少し違う。“呪い”とは願うと他人に災厄や不幸を起こすという物であるはず。だけどあなたの“呪い”は使用者の力を上げているように見える。」

「その認識で概ね合って入るが少し違う。“呪い”は他者だけでなく自分自身にも掛けることができる。私は“呪い”を自分にかけている。例えばこの外套には自分の重さを上げる“呪い”がある、だが逆に重くすることで力は増し技も受け止めることができる。この防具は陽に当たると動きが鈍るが、この洞窟のように陽の当たらない場所では逆に動きが早くなる。」


以前、大和国でアリアが戦った女性が“呪い”の使い手であったくらいでそこまで“呪い”に詳しいわけではなかったが…なるほど“呪い”は自分自身にも掛けることができるのか。しかもナルガスはそれぞれの武器の“呪い”を上手く組み合わせることで不利になる部分を逆に上手く活用しているのだ。


「上手く使いこなしているといわけですね。」

「そういうことだ、さぁ、向かって来い!」

「はぁ!」


そうは言ってもあれほど“呪い”の武器や防具を使って無事で済むはずがない。なんとか生かしてライラさんと会話させたいという思いがある。ならばあの“呪い”の武器や防具を破壊するしかないと俺は考えた。


「『千の突サウザンド・ストライク』!」

「何!?」

「まだまだ!『炎の球(ファイア・ボール)』!」

「ぐわぁぁぁ!!!」


俺はまず防具を『千の突サウザンド・ストライク』で破壊する。“呪い”は付与されているが武器はそこまでいい物ではない。破壊するのは容易いことだ。俺は防具を破壊したあと後ろに回り込み、『炎の球(ファイア・ボール)』で外套を焼き尽くした。


「なるほど、狙いは武器の方だったか。だが武器はまだまだある。」

「それ以上は負担が増えるだけだ!馬鹿なことはもう辞めましょう!一度ライラさんと話せば…」

「うるさい!私は仲間の…みんなの敵を取るんだ!うぉぉぉぉ!」


ナルガスは再び魔法袋(マジック・ポーチ)から複数の武器を取り出す。首飾りに盾そして靴だ、全て“呪い”が付与されている。これではどれだけ破壊してもキリがない。少し荒っぽくはなるが無理やり拘束するしかないと俺は考えた。


「『炎の壁(ファイア・ウォール)三重(トリプル)』!!!」

「そんなもので私は止められないぞ!」

「『陽炎(ヒート・ヘイズ)』!これで終わりだデリラ伏せろ!『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「うわぁ!」

「ぐわぁぁぁぁ!」

「ギャォォォン!」


俺はナルガスとの間に壁を作り、視界を塞ぐ。ナルガスはそのまま真っすぐに突っ込んでくるが、それは『陽炎(ヒート・ヘイズ)』による残像だった。その隙に《聖剣クラレント》による『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』でナルガスと《シャドウ・ウルフ》全てを一掃した。


「『三角・鎖トライアングル・チェーン』!魔法袋(マジック・ポーチ)も回収しておくか。」


俺は気絶したナルガスを拘束し、魔法袋(マジック・ポーチ)を回収しておく。これいじょう何か“呪い”の武器を出されても困るからな。すると少し離れたとこから怒ったデリラが歩いてきた。


「ちょっとユーリ!危ないよ!もう少しで僕も2つに割れちゃうとこだったよ!」

「ごめん、ごめん。狭い洞窟だしそのまま片付けたほうが早いと思って。」

「それはそうかもだけど!」


とりあえずは一件落着だ。ナルガスを連れて、皆と合流しないといけないなと考えていた。


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