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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
深淵の復讐者編

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第百十三話 襲撃者

何故この男は俺達のことを知っているのだろうか。いや、今はそんなことはどうでもいい。間違いなくこの男はこの事件に関わっているということはわかる。拘束して詳しいことを聞き出せば良いだけの話だ。


「お前の目的が何かはわからないが、ただでは返さないぞ!」

「『風の拳(エア・フィスト)』!」

「『部分強化ポイント・ストレングス(アーム)』!」


まずフルーとデリラの2人が男に向かって飛びかかる。男はそれをギリギリの所で躱し続けている。あの2人を相手にしながらここまで回避できるとは、中々の実力者であることは間違いない。しかし、こちらのほうが圧倒的に数的優位があるのだ。


「『水の壁(ウォーター・ウォール)』!」

「『新山田流壱式・疾風迅雷』!」

「『氷の剣(アイス・ソード)』!」


攻撃を回避している男の周りを取り囲みコーデリアは逃げ道を塞ぐ、わざと少し隙間を作り男がそこに飛び込むのを誘い込む。ランマはその隙きを見逃さず男が飛び出した瞬間に斬りかかったが、男は魔法で氷の剣を作り刀を防いだ。誘い込まれたのはわざとだったのだ。


「ふぅ、流石の私も分が悪いですねぇ。ここは失礼させてもらいますよ『氷の息(アイス・ブレス)』!」

「うわ!」

「くっ、待て!」

「皆!大丈夫、落ち着いて。」


男は流石に状況が悪いと思ったのか、俺達に向かって『氷の息(アイス・ブレス)』という魔法を放った。アリアの魔法のおかげで熱があるおかげで俺達にダメージはなかったが、白い煙のような魔法は俺達の視界を奪い男は逃げ出した。煙がなくなる頃には男の姿はなかった、どうして止めたのかとフルーが俺に怒る。


「ユーリ、どうして止めたのさ!」

「どういうことユーリ?」

「あいつに俺の魔力を付けといた。あれを辿ればアジトがわかるからと思って。」

「なるほど、わざと逃したということでござるな。」

「そういうこと。それよりも…」

「ヘクター!大丈夫か!」

「う、うぅ…。」


俺は逃げた男に魔力の痕跡を残しておいた。簡単なもので俺の魔力が少しずつ流れていくという魔法だ。これならアリアの《副技能(サイドセンス)》で見つけることでき、すぐに追いかけることができるはずだ。問題は先程あの男に攻撃を受けたヘクターの方だ、何やら様子がおかしい。ただ氷の礫を飛ばした攻撃のように見えたが、何か仕込まれていたのか?俺はヘクターの服を破り傷付いた腕を見てみると傷自体はそこまで大きくもなく深くもないが、傷の周辺には黒い紋様が浮かび上がっていた。


「何だこれ!」

「多分…“呪い”…。」

「うん、間違いなく“呪い”だよ。任せて!『聖なる光(ホーリー・ライト)』!」


アリアが解呪をすると黒い紋様は消え去った。俺はその上から『治療魔法(ヒール)』を発動し、ヘクターの傷を塞ごうと思ったら傷口の中から小さな針の様な物を見つけた。恐らくだがこれに“呪い”が付与されており、氷の中に紛れ込ませていたのだろう。ヘクターは“呪い”の影響のせいか随分と弱ってしまっている。傷口は塞いだが、すぐに休ませた方がよさそうだ。


「クレスト、一度ヘクターを連れて戻ってくれ。俺達はあの男を追う、応援も頼めるか?」

「わかった!ヘクターを預けたら俺もすぐに駆けつける!気をつけろよ!」

「ああ、皆行こう!」

「うん!」


俺の魔力の痕跡をアリアの《副技能(サイドセンス)》で辿って男を追いかける。どうやらこの川沿いに逃げているようだ。そんな中フルーが俺にこっそり話しかけてきた。


「ねぇユーリ。」

「どうした?」

「なんかデリラ静かだと思わない?」

「言われてみれば。」


ソレイナ国に付いてくるという話をした時はいつも通り結構気分が乗っているように感じた。しかし国に着く前くらいからいつもよりなんというか大人しい。先程の戦闘でも動きはいつものようであったし隊長が悪いという感じでもなさそうだ。


「あのさ、デリラなんか大人しくない?」

「やっぱりそう思うかな?」

「うん、いつもとは違う感じはするね。らしくないというか…何かあったの?」

「これといって何かがあったわけじゃないんだけど、最近昔より常に戦いたいって思わないんだよね。自分でも不思議なんだけど、戦いが嫌いになったわけじゃないのに。」

「さっき戦ってるときも特に違和感はなかったと思ったけど。」

「戦闘になるとちゃんと前みたいに戦いを楽しむ気持ちになるんだ。心配させてごめんね。」

「いや、大丈夫さ。何かあったらすぐに言ってくれよ。」

「うん!わかった!」


体調不良というわけではなさそうだが、少し心配である。まあ本人も自覚はしているだろうし、何かあれば言ってくれることだろう。すると俺の魔力の痕跡を追っていたアリアの足が止まった。川沿いを歩いていくとその内に渓谷のような場所に辿り着いた。


「この辺りで途切れちゃってる。」

「ということはアジトはこの辺でござるか?」

「それくらいなら『探索(サーチ)』!…見つけた、あの洞窟の中に3人見える。師匠はいないみたいだ。」

「乗り込む?」

「ああ、慎重に行こう。」


俺はその洞窟に向かって歩みを進める。中は暗いが薄く明かりも付いており歩けないほどではない。少し寒さを感じる。すると奥に誰かの気配を感じた。


「まさかここがバレるとはな。ヒョルドの奴めしくじったな。」

「お前誰だ!ヒョルドってのはあの氷魔法使いのことか?」

「そうだ、俺の名はシャコウ。セルベスタで俺の影を払ったのはお前たちだな?」

「お前が冒険者を操ってたったわけか。どうしてそんなことを。」

「俺達のボスに聞いてみることだな。俺はただ任務をこなしているに過ぎない。」


どうやら奥にいる人物はこいつらのボスと先程、川で戦ったヒョルドという男らしい。


「ユーリここは私に任せて。」

「私も残ります。」

「フルー、アリア。大丈夫か?」

「影にも“呪い”にも対応できる私が残った方がいいでしょ?」

「サポートは私に任せて!」


たしかに影にも“呪い”にも対応できるのはアリアだけだ。それにフルーもいれば心強い、ここは2人に任せて先を急ぐべきだろう。せっかく追い詰めた犯人だ逃がすわけにはいかない。だが素直に通してくれるとは思えない。そこで俺は作戦を考え皆に伝える。


「皆、準備はいいか?…せーの!『発光(ルミナス)二重(ダブル)』!!」

「ぐぅ!」

「今だ!走れ!」


俺が考えた策はこの暗い洞窟に慣れてしまっているシャコウは『発光(ルミナス)』による急激な光で怯ませるというものだ。、もちろん俺達以外は目を閉じる。思っていたよりも効果的だったようでシャコウが何が起きたかわからないという感じで狼狽えている間にアリアとフルーを残し、ユーリ達は先へと急いだ。


「小癪な真似を。」

「作戦勝ちってやつだよ。」

「お前らに俺の影を止めることはできない。」

「私の魔法で必ず捕らえる!」


ユーリはこの先にいるであろう敵をどうするか考えていた。残るヒョルドはともかく、もう一人の恐らくこの事件の元凶である相手は一体どんな人物だろうか。


「多分だけどこの先にも誰かいる。どうする?」

「先程三人いると言っていたでござるな。ということはあと2人でござるか。」

「そうだね、もう俺達が侵入していることには気付いているだろうから、待ち構えてるかもしれない。」


そして先へ進んでいくと川で俺達を襲ってきた氷魔法の使い手であるヒョルドという男が待ち構えていた。先程とは違い顔は黒布で隠していなかった。見た目は痩せ型の40代くらいの男である。


「どうやら尾行されていたようですねぇ。どうやってやったんですか?」

「それは企業秘密だよ。」

「私の相手は誰がしてくれるんですかねぇ。」

「ここは拙者に任せるでござる。」

「私も…任せて…!」


相手が氷魔法ということは炎魔法を使える俺かアリアが相手をするべきではあるが、アリアはすでに残ってしまったしここは俺が行くべきではあるが…こいつらのボスがどんな相手なのかわからない以上俺が対応したいという部分はある。


「わかった!2人に任せるよ!デリラ行こう!」

「うん!気を付けて!」

「任されたでござる!」


俺はデリラと2人で走り抜ける。シャコウと違いヒョルドはあっさりと俺達を通してくれた。よほどこの先にいるやつは強いのだろうか?ヒョルドはユーリとデリラを見送った後不気味な笑いを浮かべ始めた。


「何がおかしいでござるか?」

「いや私の相手が君達に務まるのかなと思ってね。」

「舐めてもらっては…困る。」

「君たちに私の氷魔法をどうにかできるか楽しみですねぇ。」


ランマとコーデリアは周りの温度が徐々に下がっていくのを感じた。川で襲われた時と同じである。このままではどんどん動きが鈍くなり不利になってしまう一方だと考えたランマは短期で決着をつけることにした。


「先手必勝!『新山田流壱式・疾風迅雷』!」

「『氷の壁(アイス・ウォール)』!」

「甘いでござる!」


ランマは一直線にヒョドルの方に向かっていく、ヒョドルはその直線上に氷で壁を作った。しかしランマは目にも留まらぬ速さで壁を回り込み刀を振り抜く。手応えは感じたがそれはヒョドルではなく氷で作られた分身であった。


「『氷の彫刻(アイス・スタチュー)』」

「くっ!」

「さてどうやって私を倒してくれるのか楽しみですねぇ。」


ヒョドルはただただ不気味な笑みを浮かべるのであった。


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