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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
王の領域《キングス・テリトリー》編

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第百八話  冒険者ランク

俺達は朝から冒険者ギルドへと訪れていた。久しぶりに冒険者ギルドに足を踏み入れたが、今日も大勢の人で賑わっている。というか賑わいすぎである、何かあるのだろうか?


「あらユーリくん久々ね、アリアちゃんも。」

「お久しぶりです!」

「お久しぶりですね、リズさん。それにしても今日はやけに賑わってますけど、何かあるんですか?」

「それはね…これよ。」


リズさんは机の下に手を突っ込むと一枚の紙を取り出した。掲示板に貼ってある依頼書である、冒険者はこれを見て依頼を受けるかどうか決めるわけだが…


「《特別依頼《黄金スライム》捕獲》?何ですかこれ。」

「最近この辺りで《黄金スライム》の目撃情報が相次いでいてね。特別に報酬が出る依頼を出してるの。」

「《黄金スライム》?」

「その噂なら拙者も聞いたでござる。たしか金を排出する特別なスライムでござるよ。」

「へぇーそんなスライムもいるんだ。」

「初めて聞いたね。」


金を排出するスライムか、本来スライムという魔物にそんな能力はないはずだ。スライムといえば核を破壊することで倒せるモンスターであり自在に変形することができるのが特徴の魔物である。ちなみにそこまで強くはない。どのように金を排出することができるかはわからないが、それがもし本当なら一生暮らしていくのには困らないだろうな。金は装飾として貴族にも人気だし排出する量が少ないので価値は高いのだ。


「でもそれ本当なんですか?」

「たしかにそんな珍しい魔物がこの辺りに出るとは思わないよね。」

「ギルドとしても最初は疑ってたんだけど、あまりにも目撃情報が多くてね。信憑性の高い情報だと考えているのよ。」

「なるほど、それで情報を聞きつけた冒険者が多いってことですね。」


一攫千金まさしく冒険者らしいと言うべきだろう。まあ素直に依頼を受けて、ギルドに《黄金スライム》を引き渡すとは思えないけどな。ギルドの支払える金額にも限界があるし、金の排出ペースによっては自分で持っていたほうがお得だろう。見慣れない装備の者も多い、おそらく近隣の国からも来ているな。こういうことがあるとトラブルが起こりやすいから気を付けなければいけないな。


「まあ俺達は冒険者ランクを上げにきただけですから。」

「そうだったのね。それじゃあ頑張ってね。」

「ありがとうございます。」


俺達はランク上げに必要な数の依頼をこなすため、掲示板からめぼしい物を選んで手続きを済ませる。皆、黄金スライムに夢中なおかげである程度依頼を選べるのはありがたいことである。なるべく王都周辺でこなせる依頼を選んだ俺達は街を出て魔物を狩ることにした。


「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」

「はぁ!」

「やぁ!」

「『水の球(ウォーター・ボール)』!」


今、俺達は森にいる《ポイズン・ビー》の巣の除去に来ている。《ポイズン・ビー》はそこまで強くないが、一度戦うと仲間を呼び大量に湧き出てくる。そして繁殖力が強いので確実に倒してから巣を燃やす必要があるのだ。今回は巣の完全除去なのでこうして一匹一匹倒しているのだ。一人なら大変であるが、今は四人いるのでとても楽だ。


「これで最後かな。アリア燃やしちゃって。」

「うん。『炎の球(フレイム・ボール)』!」


全て倒しきり最後に巣を焼き払った、これで依頼完了だ。この後も魔物を倒したり薬草や鉱石の採取を行い全ての依頼を完了した俺達は帰路へと着くことにした。


「やっぱり4人だと楽でござるな。」

「ペースが…早い。」

「でも皆でやっても良かったのかな?同じくらいのランクならともかくランマとコーデリアは私達よりも上だし…。」

「普通、高ランクの人は低ランクの人とパーティを組んで依頼を受けないからね。」


パーティを組んで依頼を達成するのにランクは関係ない。しかし高ランクと低ランクがパーティを組むことは珍しい、理由はトラブルの元になりやすいからである。例えば報酬の分配方法であったり、高ランクが一人いればそのランクの依頼を受けることが出来てしまう。自分のレベルに合わない依頼は命の危険にさらされたりすることもあるのだ。


「そうなんだ。」

「まあ今回は知っている者同士のパーティーだし、依頼さえこなせばランクは上がると思うよ。」


依頼をこなすことも条件の一つではあるが、ランクを上げるためにはギルドが許可を出してくれないといけない。本当に依頼をこなしているのか怪しい場合はきちんと監視の目が入るようになっているのだ。その点、リズさんやギルド長は俺達の事情をそこそこ知っているので依頼さえこなせば手続きは行ってくれるだろうと考えている。


「まあ疑われたら目の前で魔法でも放てばいいのさ。」

「それもそうだね。」


そんな話をしながら王都に帰っている道中に複数の冒険者を見つけた。おそらく《黄金スライム》を探しているのだろうが、そろそろ日も暮れるし大人しく帰った方がいいと思うのだが。いや、しかし《黄金スライム》というくらいなら夜の方が光輝いて見つけやすいのだろうか?まあ何にせよ一度見てみたい気もする。俺は心の中で冒険者達に向けて応援しておくことにした。


「リゼさんこれお願いします。」

「あらこんなに依頼をこなしてきたのね。これならすぐランクが上がると思うわよ。」

「それはよかったです、明日もまた来ますね。」

「うん、待ってるわね。」


俺達は依頼完了をリゼさんに報告し、屋敷へと帰った。


「このペースならすぐにランクBになれそうでござるな。」

「そうだね。本当はAまで行きたいけど…。」

「何か問題があるの?」

「ランクAに上がるためには特別な依頼を受けないといけないんでござるよ。」

「《黄金スライム》みたいな?」

「あれもそうだけど内容はもっと厳しい感じかな。」


Aランク以上はギルド長直々の依頼をこなさなければいけない、その内容はAランクにふさわしい難易度であるらしい。しかし近年Aランクを目指す者も少ないこともあるが、そもそも依頼にするような出来事がないと聞いたことがある。例えばこのセルベスタ王国では騎士団があるおかげで魔物の動きが活発化しているとはいえ、大きな被害が出る前に倒されている。そのおかげでAランクに値するような魔物はほぼいないのだ。魔物を倒すばかりが依頼ではないがやはり強さを測るのが一番わかりやすいらしい。


「ユキさんはAランクになったのはどんな依頼でしたか?」

「私の時は《クラーケン》の討伐でした。単独ではありませんでしたがその戦いの貢献度でAランクに上がることができました。」

「《クラーケン》?」

「《クラーケン》というのは海に住む怪物で、その大きさは王城くらいありました。」

「ユキさんそんな化物と戦ったんですか…。」


城くらいの大きさというとは龍状態になったルミより大きいということだよな?とんでもない魔物もいたもんだな。というかそんな魔物倒したユキさん達も半端ないけど、どんな冒険者の集まりなんだ。


「ちなみにマルクさんは?」

「私は実は特定の依頼を受けていないんですよ。」

「どういうことですか?」

「恥ずかしながら以前話した通り私は魔物だろうが人だろうが挑んでくる者は構わず斬っていたので…。当時のギルド長は強さ至上主義の方が多かったのでAランクになっていました。もちろん罪のない方は斬っていませんが。そしてお二人のお父様に止められた私はAランク冒険者として国からの依頼をこなし、その働きが認められSランクになりました。Sランク以降はどれだけ国に貢献したのかで上がります。」

「そうなんですか。それは初めて知りました。」


マルクさんは少し特殊な事情でAランクに上がったということだな。それにSランク以上になるためには国に貢献する必要があるのか。よく考えたら師匠も何かとシャーロットに依頼された仕事をこなしているもんな。まあ師匠がSランクやSSランクを目指しているようには見えないけど。


「まあまだAランクは先だろうから明日も頑張って依頼をこなそう!」

「「「おー!」」」


その日はすぐに眠ることが出来た、久々の冒険で疲れたのだろう。次の日俺達は昨日と同じ様に依頼をこなすために冒険者ギルドに向かった。中に入るとリゼさんが俺達に気付きこちらに向かってきた。


「ユーリ君…。」

「リゼさん?何かあったんですか?」

「そ、それが…見てもらった方が早いわね。付いてきてもらえるかしら?」

「わかりました。」


俺達は疑問に思いながらもリゼさんの後を追い2階へと向かう。部屋に入るとギルド長のライラさんがいた。部屋のベットに目を向けると二人の冒険者がベットに横たわっていた。よく見ると覚えがあるこの冒険者は昨日俺達が帰り際に見かけた《黄金スライム》を探していた冒険者のはずだ。


「ライラさんこれは?!」

「《黄金スライム》を探していた冒険者です。他にも複数名いたはずですが、帰ってきたのは彼らだけ。何があったか事情を聞っきたいですが深傷を負っていまして、喋れる状態ではないんです。『治療魔法(ヒール)』も“呪い”に邪魔されてしまって上手く回復できないんです。」

「そういうことですか。アリアならなんとかできるかもしれません。」

「どういうことですか?」

「アリア頼む。」

「うん、任せて!『聖なる光(ホーリー・ライト)』!」


アリアが『聖なる光(ホーリー・ライト)』を発動すると冒険者の顔色がみるみる内に良くなった。これなら『治療魔法(ヒール)』で回復できるだろう。しかし一体何があったのだろうか、それに消えた冒険者達はどこにいってしまったのだろう。


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