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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
王の領域《キングス・テリトリー》編

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第百六話  試合終了

ユーリが目を覚ますとカイラやラインなど《黒》クラスの面々が集まっていた。どうやら試合は終わったらしい。それにしてもエレナめ、本気で魔法発動してくれたおかげで本当に大怪我する所だったぞ。使わないと決めていた《紅蓮の勇者》の力を使って『炎の檻(フレイム・ケージ)』を破らなければ直撃して危なかった。まあ最後の最後だったし身を守るためだったから良しとしよう、しかしそれでも爆風だけで気絶するとはエレナもかなりパワーアップしてるみたいだな。


「ユーリ君!よかった目が覚めて。」

「皆ユーリ君が目覚めるのを待っていたんだよ。」

「そうだったんだ。いやー本当に死ぬかと思ったよ。」


俺はおどけて笑う、皆は首を傾げている。エレナには後でキツく説教をしておかないといけないな。辺りを見回すと観客席近くまで戻ってきていた。そういえば試合はどうなったんだろうか。


「それで試合の結果は?」

「………。」

「もしかして負けちゃった?」

「…勝ったよ。私達本当に勝てたんだよ!」

「うぉぉぉ!!!」

「やったー!!!」


カイラが俺に勝利の報告をすると皆は次々に喜びを叫んだ。そうか俺達は勝てたんだ、本当によかった。観客席の方からも拍手が上がる。他の皆の状況はわからなかったがきっといい試合ができたのだろう。観客の方に目を向けると師匠とハーミットさんの姿も見えた。どうやら観戦に来てくれたみたいだ、あとで挨拶にいこう。


「皆さん、静粛に!最後に学園長の挨拶があります。お願いします。」

「諸君素晴らしい戦いであった。両クラスの生徒はもちろんこの会場に足を運んだ者全てが今後に活かせる点が多々あったと思う。どんな能力も魔法も工夫しだいで戦えるようになる、また個々の力だけでなく皆と力を合わせることで大きな力を発揮できる。騎士団を目指す者もそうでない者もぜひこの事を覚えていて欲しい。以上!」

「ありがとうございました。今年も学園講堂で後夜祭が行われるので生徒とも観客の皆様も参加される方は移動してください。」


今年も後夜祭があるようだ。去年は事件があった後最終日の【D・B(デュエル・ブレイク)】には一般の観客が居なかったからかもしれないが、今年は観客も参加していいようだ。とりあえず俺は師匠とハーミットさんのところに挨拶をしにいくことにした。


「師匠!ハーミットさん!見に来てくれてたんですね!」

「弟子の不甲斐ない姿を見にわざわざ来てやったんだから、ありがたいと思いなさい。」

「ははは、ありがとうございます。ハーミットさんも。」

「いや友達の活躍は見に来ないとね。それにしても最後のは一体どうやったんだい?なんだか姿が変わっているように見えたけど…。」


最後というと《紅蓮の勇者》の力を使ったことか、しまった見られてしまっていたのか。よく考えたらハーミットさんには俺の事喋っていない。別にこの人になら喋っても大丈夫だとは思うが、中々タイミングがなかった。


「そうですね。そのこともありますし、お二人共後夜祭に参加しませんか?」

「悪いけど私はこの後仕事があるからこれで失礼するわね。」

「そうですか。」

「先程のことが気になるし僕は参加させてもらおう。」

「ぜひ。皆にも紹介させてください。」


俺はハーミットさんと一緒に講堂へと移動する。すでに皆はそれぞれ会話をしているみたいだ。そんな俺達にいつものメンバーが駆け寄ってくる。


「お疲れさまでした。」

「まさか負けちゃうとはね。」

「さすがユーリ!」

「二人は罠にハマってただけで何もしてないだろ。」

「うるさいなぁー。」

「騒がしくてすみません。」

「いやいや、久々にこういう場に来るのも楽しいもんだよ。」


こうしていつものメンバーと話すのも久しぶりな気がするな。対抗戦が終わるまではお互いあまり接触しないようにしていたからな、皆は相変わらずのようで何よりだ。だがお客さんがいるところではもう少し控えて欲しいところである。


「それでユーリ君こちらの方は?」

「ああ、紹介が遅れたね。この方はハーミット・ストラテジーさん、前騎士団の時に戦略家として所属していたこともある方だよ。今回の戦いはほとんどハーミットさんに策を考えてもらったんだ。」

「そんなことはないさ、策を考えたのはユーリ君自身だ。僕はほんの少しだけ手ほどきをしただけさ。」

「なるほど、ユーリにしては凝った策だと思ったよ。」

「失礼だな。まあ否定はできないけど。」


まあ今回のことで大分色々な知識は付いたことには違いない。自身の能力を高めるには何も魔法や身体という力だけじゃないのだ。戦い方や策の組み立てや仲間との連係なども戦闘においては重要なことである、それが知れたのも大きい。


「そういえばさっきの続きだけど…」

「そうでしたね。ここにいる皆はもう知っているので大丈夫ですが、あまり他言しないでいただきたいんですけど。」

「もちろんだ。そもそも僕には話すような知り合いもいないのだけどね。」

「実は俺《勇者》なんです。それもただの《勇者》じゃなくて…」


ハーミットさんに俺達のことを話した。すると話を聞いて驚いていたが、どこか納得したような顔もしていた。


「なるほど、初めて君に会った時不思議な感じがしたが納得がいったよ。」

「不思議な感じですか?」

「僕はあまり人に関わってこなかったけど、君とはなぜかと縁を持ちたいと思ったんだ。」

「そうだったんですか。」

「ハーミットさん私達にも色々教えて下さい!」

「もちろんだ。僕にできることなら。」


どうやら皆と打ち解けてもらえたみたいでよかった。こうして俺達が集まって話しているところに《黒》クラスの面々も合流してきた。


「ユーリ君、今日まで本当にありがとう。」

「私達ユーリ君のおかげで自信が持てるようになったよ。」

「僕もだよ。ありがとう。」

「そんなことはないよ。皆元々できるだけの力はあったんだ、俺はその手伝いをしたに過ぎないよ。」


皆は自信がなかったり能力を上手く使いこなせないことに悩んでいただけなのだ。俺はそれを少しだけ後押しして上げたに過ぎない。それに俺の方こそ学ばせてもらったこともある、お礼を言いたいのは俺も同じなのだ。


「こちらこそありがとう。よかったら俺の友達を紹介するよ。」


俺は《黒》クラスの皆にアリア達を紹介する。どうやらお互いに戦った者もいるようで、【王の領域(キングス・テリトリー)】の話題へと移っていった。


「君の罠すごかったね!すっかり騙されちゃったよ。」

「いや全然そんなことは…」

「あなたはたしかトリップ・ボーンでしたね。」

「あっはい。」

「シャーロットもやられちゃったんだよね。凄いよ!」

「えっ、あなたがシャーロット様だったんですか?!失礼な態度を取ってしまいすみませんでした!」

「構いませんよ。あなたをスカウトしたいと思っていたんですよ、宮廷魔道士団の王国を守る部隊として。」


あちらではトリップがシャーロット、デリラ、フルーの三人にいじめられている。シャーロットに名前を覚えてもらえるとは大出世だな。それに直々にスカウトだなんて普通に騎士団員になるよりもよほど珍しいだろうな。どういう道を選ぶかはわからないがトリップならやっていけるはずだ頑張ってほしい。


「今度はジーク君とは剣を交えて戦いたいな。」

「ええ、僕もです。それにしてもあの不思議な魔法はなんだったんでしょうか?」

「『蜃気楼(ミラージュ)』は僕のオリジナルなんだ。」

「なるほど。凄いね手応えはたしかにあったのに。」

「ジーク様も私の『魔法弾(マジック・ショット)』を弾き飛ばしていて驚きましたよ。」


そしてその隣ではジークがコータ、ウール、カルロスと一緒に談笑している。ジークはどうやら三人を相手にしたようで、結果は負けたみたいだがきっと驚いたに違いない、武器ありだったら俺でも負けてしまうほどであるからな。


「結界によく気付きましたね。」

「おかげで眠らせられませんでした。」

「俺はただユーリという男ならそうすると思っただけだ。しかしあの時の魔力はまさかブラフだったとはな。」

「いやー案外なんとかなるもんだね。」

「その言い方は失礼なんじゃないかな。」

「構わない、実際俺が騙されたのも事実だ。勝負を焦ってしまった、それに君の『防御(プロテクション)』を突破できなかったこともな。」


あっちではガイウスがラライ、ロロイ、カイラ、ラインと喋っているようだ。最後の方はほとんどガイウスにやられてしまったらしい。警戒していなかったわけではないが、正直意外ではあった。ガイウスはもっと直接に戦闘を行うタイプだと思っていたが、それだけ成長してるということかな?俺も負けないように頑張らないといけないな。


「ユーリまた今年も負けたな。」

「ディランも凄かったよ。そういえば最初どうして俺の居場所がわかったんだ?気配も魔力も消してたと思ったけど。」

「ああ、あれはコータに聞いたのだが生物には電気が流れているらしくてな。『電気探査ライトニング・エクスプラレイション』を応用して居場所を探ったんだ。まだ未完成だがな。」


電気探査ライトニング・エクスプラレイション』とは電気を地面に流すことで地形を把握することができる魔法のはずだ。それを応用して居場所がバレたということか、ディランの魔法の応用力は本当に凄いな。話をしているとハーミットさんと話を終えたアリアとエレナが合流してきた。


「そういえば無事で良かったです。」

「無事でよかったじゃないよ!本気でやるなんて!」

「でも無事だったんだからいいじゃん。《勇者》の力があるんだから。」

「それはそうなんだけど…。」


言われてみれば今回《勇者》の力を使わないようにしようと考えたのは俺の勝手な決意であって、もちろんエレナは知らなかったんだからしょうがないという気もする。悪気はないように…いや、あの笑顔は絶対に狙ってやったな。


「まあ細かいことは気にせずに。そういえばディアナさんの姿がありませんね?」

「ああ、師匠ならなんか仕事があるってどこかに行ったよ。」

「そうなんだ。久しぶりに話したかったのに。」


こうして後夜祭は終わり、二学年度のクラス対抗戦【王の領域(キングス・テリトリー)】は終了するのであった。


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