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「いや俺の魔法具はこのパンツですよ」
言い訳はすぐに思い付いた。どうせなら有効利用させてもらう。
「……」
俺の堂々とした物言いに何も言葉を返すこと出来ないか、サテラは黙ってこちらを見つめていた。そして溜息を一つしてから召喚者全員に声を掛ける。どうやら俺の話題は終わったようだ。
「皆様には身の周りのお世話をさせて頂く、メイド及び執事を付けることになっています」
サテラが手を叩くと黒いローブの集団を割って、若い男女が数十人現われた。
誰も彼もが容姿端麗であり、それぞれに違った魅力がある。女性は胸が大きく、男性は高身長。下手をすれば芸能人よりも綺麗である。
そんな中から選べと言うのだ。誰もが唾を飲み、喉を鳴らした。
「身の周りの世話とは。よ、夜のお供もも、含まれるので」
大柄で肥満体質な男性が興奮しながら質問する。
サテラはにっこりと頷き、肯定した。次の瞬間一気に転生者達はメイドと執事の方に駆け込んだ。自分の好みを先に取られると困るのだろう。
真面目そうな会社員、学生、その誰もが選びに動く。不安そうだった女性達選びに行った。俺はそんな状況に取り置かれ、身動きを取れずにいた。この食いつき方は尋常ではない。もしかして思考誘導の魔法とか、そういう系統を使っているのかもしれない。
……よく考えると当たり前だよな。
自分達より強い者を召喚するかもしれないのだ。俺だったら手綱を握れるようにしておく。
他の召喚者の様子を窺う。早くも自分のメイドを誰にするか決めた肥満体質な男性がメイドと口づけをしていた。
どれだけ性欲むき出しなんだよ。
いや違う。肥満体質な男性だけではない。選びを終わった転生者達は自己的かの違いが有るにしても接吻を交わしていた。
そして誰か叫ぶ。
「俺がこの国を救ってやる!」
そんな言葉を復唱するように皆が救うと言葉に出す。
これは俺の推測が当たっているな。
目が狂信者のそれに近い。これなら戦争でも何でもやりそうな気がするな。
「やはり貴方は動きませんか。魅了の効き目が薄いのでしょうか」
サテラの言葉で思考を誘導していることは確定した。
きっとメイドや執事、そしてサテラが魅了というものを使っていたのだろう。
この場から逃げだそうとするが、俺の身体は動かない。
またこれですか。
目の前には不思議なウィンドーが現われた。
この場合選択肢が出てくれる方が助かるのか。俺の頭ではこの状況を乗りきることはできない。
しかし内容を見て思った。
『 選択肢
Ⅰ 貧乳しか興味がない。と叫び、貧乳の良さを語る
Ⅱ 男にしか興味がない。と叫び、男と男の禁断の愛について語る
』
あの邪神が選択肢の内容を毎回、作っているんじゃないか。