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第5話

「高いんじゃバカタレ!」

 スラーオに着いて早速武器屋に行った俺の第一声である。

 ここあらゆる意味で高い。売ってる武器の値段から性能から条件まで。なにこれ? ハイパーインフレ入ってんの?

 そりゃ手持ちのアイテムを売れば買えなくもない。しかし装備できなきゃ意味ない。結局ゴミ売ってゴミ買ってるだけじゃ。


「お、お客さん落ち着いて」

「オリハルコンだのミスリルだのいらんのじゃ。もっと銅とか鉄とか親しみやすいのはないんか」

「そんな低レベルなのウチじゃ扱ってませんよ……」

「ふざけんな! 意識高い系かこの店は!」

 最初の街の唯一の武器屋がこれってバランス壊れてんだろ。パッチ修正ものだぞ。


「だいたい素手に着の身着のままって……どうやってここまで来たんですか」

「バカにしとんのか!」

「く、くるしい」

 胸ぐら掴んで絞め上げるが、やはり冗談とか喧嘩を売ってるとかそういうことではないらしい。田舎者の初心者相手だからかと思ったんだがな。

 しかたないので袋の中身を金に替えて店を出ることにした。


「お前は妙におとなしかったな。もっと騒ぐと思った」

「この展開はある程度予想できた」

 隣で置物と化していたミツルに俺は首をかしげつつ、三等分した金の一つを渡した。


 店の外で待っていたマオにも渡すと大層感謝された。いや、元はと言えばあなたの家のものですからね?

「しかたない。順序が逆になったが、先に職業を決めよう」

「いいのか」

「無職よりはマシだ」

「ああ……」

 ミツルは納得したようだ。そう、俺達はこの世界では学生ではなく無職なのだ。


「で、どうやって職にありつくんだよ。ハロワでもあんのか」

「なんか役所とか神殿とか、それっぽいところで認定とか儀式とかしてもらうんだよ」

 俺は周りをキョロキョロして、第一村人にとりあえず聞いてみる。


「転職ぅ?」

 第一村人のおっさんは露骨に「何いってんだこいつ」といった顔をした。

「スラーオまで来て転職って……そりゃ無理だ。そんな施設も請負人もいやしねえよ。だいたい見た所、上位職云々以前に装備も素寒貧じゃねえか。舐めてんのか。だいたい俺が若い頃は――ぶべらっ」

 俺の不意打ちのスクリューブローがテンプルにクリーンヒットした村人は地面に転がった。


「いいのか?」

 すたすたと歩き去る俺をミツルは追う。

「役に立たない上にありがたいお話してきそうだったから先手を打ったまでだ。NPCの分際で偉そうなんだよ」

「アータは無職の分際で偉そうだけどな」

 背後で回復魔法を唱え終わったマオが追いついてきたのを確認してから、俺はいったん空を仰ぐ。うむ、良い曇り空だ。まるで我々の行先を暗示してるかのようではないか。


「もうこの街は諦めて次へ行こう」

「次の街まで……道中無職無防備でか? 無謀だろ」

「いや、それは違う。あるものを使う」

「ハァ?」

 このギャルは頭にタピオカでも詰めてんのか。

 まったく一から十まで説明してやらんといけんとは。

「要するに街から街へ移動できる設備や能力を使えばいいってこと」

「あ、馬車ですね」

「そゆこと」

 マオの言葉にうんうん頷いて、俺達は運び屋を目指した。


「あーダメダメ」

 その結果がこれである。いかにも運送業やってます的なガタイのいいお兄さんは片手を横に振った。

「あんたらここ以外の街とか名所とか、どこにも行ったことないでしょ」

「それの何が悪い」

 なんとなく開き直ってみる。

「あのね、うちはあくまでお客さんが行ったことある場所じゃないと運んでやれないの」

「街の名前とか指定しても? この際ここ以外ならどこでもいいから」

「あーダメダメ。それって結局こっちに丸投げってことでしょ? お客さん側で確認する術がないんだわ。そういうあやふやな業務は遭難や事故のもとだっていって、組合で厳禁になってるんだわ。バレたら業務停止、最悪免許取消まであるから、引き受けられないよ」

 ほとんど追い出されるような感じで、俺達は店を出た。


「転移魔法……」

 じっとマオを見ると、しょんぼりした顔になった。

「ごめんなさい。私、基本的に家の外には出たことなくて……。小さい頃には色々と連れていってもらったんですが、その頃は転移魔法の座標登録はできなくて」

 結局この魔法使いが転移魔法を使えても同じことということか。最悪ランダムに転移もできようが、それでモンスターハウスに突っ込んだら目も当てられない。

 …………。

 …………。

 …………。

 あれ? ひょっとして最初の街で詰んだ?

 色々考えを巡らせて、そんなことをふと思った。


 このあともスラーオ内をウロウロしてみたものの、ちっとも収穫はなく、とうとう日が暮れてしまった。まったく、最初の街のくせして場末感漂う場所である。

 それでも金はあったし、さすがに宿屋はあったので、今日はそこに泊ることにした。

続きを今すぐ読みたい方はこちらにて発表しております。

https://kakuyomu.jp/works/16816700426124062593


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