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罪の創成  作者: Abutilon
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懺悔。そして

 再び、その場所へ踏み入る。

 創造の要素で満たされた空間。罪の起源であり、聖域。

 そう、考えていたのだが。


 体躯はとうに朽ち果て、意思 ー 膨張する祈りの力 ー で充満する空間と化した『彼女』。

 私が来たことにも気付かぬほど、意識は祈りに向けられていた。いや、呪縛されていた。


ー私は既に涙を流していた。



「ただいま、『エマ』」


 直後、満ちた意思は奔流となって押し寄せた。

 永い間、肉体を持たなかったためか、うまく形を得られなかったのだろう。不透明で、ぼんやりとしたものが包み込んでいた。

 それでも、『罪人()』はわかっていた。自身を抱きしめてくれていることを。

そのことを伝えるよう、私もまた強く抱きしめた。


彼女エマ』の意思は全身で感じた。

 それは、哀しいほどに、喜びに満ちていた。



「ごめん、ごめん。遅くなった。」


「君を、こんなにも縛りつけてしまった。私の、我儘のために…!」


「そんな姿にさせてまで。私は、私は…。」


 

 抱擁に力がこもった。

 というよりは、輪郭を取り戻したというような。


「どれだけ謝っても、足りないのはわかってる」


「それでも、償い続けないといけないんだ」


「本当に、ごめん」



 抱きしめていた腕がほどける。私の顔に温もりが触れる。

 

「バカですね。そんな言葉が聞きたい訳じゃないんですよ。」


 その声を聞いて、余計に顔向けができなくなった。

 もう、止めどなく溢れていた。


「私の、自己満足でもありました」


「私が、何かの力になる。その力をもって、生命の営みが行われる。世界が息づく。それを実感し続ける毎日。」


「とても充実して、穏やかな日々でしたよ」


 きっと嘘だ。光も闇もないところで、世界を感じられるわけがない。それを穏やかであると…。

・・・私の、この言葉を、待っているのだろう。



「こういうとき。何を言えばいいのか、わかりますよね。」


「ああ。そうだね。」





「ありがとう、『エマ』」


 目の前には、それは、それは美しい女性がいた。

 強き心を持ち、愛と慈しみに溢れ、そして…。


「ああ、やっぱり。君には笑顔が一番似合う。」


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