第7話:決戦に向けて
「うわあああああああ!!」
遠くで叫び声がした。
横田はそちらに向けて全力で駆けだした。
―勝てるだろうか?
そんな疑問も頭に浮かんだが、即座にかき消し進む。
ウベングルガが近づくにつれて気温は下がり、
辺り一面雪景色。
「待てッ!!」
横田を止める一人の青年。
この前身ぐるみを奪った若剣士であった。
「俺の装備を返せ!!!」
若剣士が叫んでいる。
「悪いな!!後で!!ちょっと急いでるから!!」
若剣士を置き去りにし、横田はひた走る。
「…いや…待てよ…?あいつ使えないかな?」
横田は立ち止まり考える。
味方は大いにこした事はない。
「おいお前。俺と一緒に戦うんなら装備返すぞ。」
若剣士に向かい横田が言う。
状況の掴めていない若剣士は横田に問う。
「誰とだ?とゆーか、お前に条件をつきつける権利はないだろ…。」
それもそうだと横田は頷く。
しかし、今はそんなノリに付き合っていられない。
「単刀直入に言うと、今からウベングルガを倒す。お前の力を借りたい。」
そういうと横田は土下座して懇願した。
「頼む!!力を貸してくれ!!」
それを聞いて、若剣士は少し戸惑いの表情を浮かべた。
あれ程卑怯な男が、あのウベングルガを倒すと言っている。
しかもその為に土下座まで…。
若剣士は一つ質問をした。
「…なんとなく状況はわかった。それは誰の為に戦うんだ?」
横田は考えた。
言われてみると、何の為だろう?
何の為に…。
そして横田は答えを出した。
「…わからん!!あいつにムカついたからだ!!」
それを聞いて若剣士は、口をポカンと開けて唖然としている。
暫くして声を出して笑いだした。
「…ハハッ…アハハハハハ!!」
横田は少しイラッとした表情を浮かべた。
それを見て若剣士も、慌てて言葉を続けた。
「いや…すまない。予想外の答えで驚いたよ。」
「…だけど。納得した。俺も手伝おう。」
横田は安堵の表情を浮かべると、若剣士に握手を求めた。
「あの時はすまなかった。有難う。」
若剣士も握手に応え、握り返した。
「いいさ。後で一発殴るから。」
横田はビクッと反応したが、それもしょうがないと小さく頷いた。
「お前…意外と嫌な奴だな…。まぁいい。名前は?」
横田が問いかけた。
「クレール…クレール・リケミアルドだ。」
こうしてクレールが仲間になった。
横田はクレールに問いかけた。
「で?武器はどうするんだ?」
クレールは少し考えると、近くの民家へ入り大きめのハンマーを取ってきた。
「これでいいさ。」
横田は頷くと、クレールと共に駆けだした。
―その頃
オルターナ王国では噂が飛び交っていた。
ウベングルガの異変を旅人が伝えたからだった。
当然それは、アンジェの耳にも入っていた。
「…ウベングルガの街が!?」
旅人に問いかけるアンジェ。
「はい。何やら騒動が起きていましたが…。」
魔王の4天王であるウベングルガ。
それが制圧する街だけに、オルターナ王国も常に情報を仕入れている。
「気になるわね…。様子を見に行きましょう。」
アンジェは軍と連携を取り、100人編成の小隊を編成する。
ウベングルガに向け、出発準備を始めた。
準備は1時間程度で整った。
アンジェを小隊長とし、アンジェ小隊はウベングルガへと向かった。
近づくにつれ気温が僅かに下がっていく。
今までにない環境に、アンジェの不安は加速していくのだった。