第6話:生贄から部下へ
見つめあうと〜♪素直に〜♪言葉に〜♪出来ない〜♪
横田の頭をとある歌が流れた。
―ウベングルガ…まさかの美女。
横田は必死に頭を捻らせた。
ろくな考えが浮かばないが、浮かばなければ生贄に。
人生の中で一番思考を巡らせた結論。
―そうだ。魔王を利用すれば…?
魔王の部下であると嘘をつき、上手いこと取り入る。
コレしかないと横田は考えた。
「あのぅ…。」
横田は恐る恐る声をあげた。
「なんじゃ?」
冷たく答えるウベングルガ。
「魔王様の使いで来たんですが…。」
おどおどしながら言う横田に、
疑問を抱いたウベングルガであったが、
魔王の使いならば話ぐらいは聞いておかなければ。
そう考えたウベングルガは、横田の話を聞くことにした。
「ほう…。申してみよ。」
横田は少し安心すると、思いつくままに喋った。
「実はふもとの街で不審な動きがありまして。」
「その街を壊滅させよ。との命令をお伝えに参った次第です。」
ウベングルガは少し考えて答えた。
「しかし、ふもとの街はわらわに忠誠を誓っているが…。」
横田の背中に冷たい汗が流れた。
ここで嘘がバレたら間違いなく殺されるだろう。
「実は、忠誠を誓いながらも、勇者を招き入れたと噂がありまして。」
嘘ではない。しかし、事実でもない。
確かに勇者は来た。泥棒で。
「真実であれば放ってはおけんな…。」
―…よしっ!!
横田は心の中でガッツポーズをした。
このまま乗り切れば隙を見て脱出。逃走してしまえば問題無い。
「ふむ。お前も一緒にふもとの街まで来い。真偽を確かめる。」
―ええええええええええええ!!
心の中で絶叫した。
非常にまずい展開である。
「そうと決まれば行動じゃ。」
ウベングルガは部下の魔物を呼びだすと、
奴隷馬車を用意するよう伝えた。
「さぁ。ついて参れ。」
横田はコクコクと首を縦に振った。
そして、ウベングルガの後をゆっくりと着いて行った。
暫く歩くと、横田が落とされた穴の前。
つまり正門へと辿り着いていた。
目の前には奴隷馬車が用意されている。
見た目通り、馬の代わりに生贄にされた男達が馬の代わりをしていた。
さすがにその光景に胸が痛んだ横田だったが、
それを黙殺し、馬車へと乗り込んだ。
数十分後、馬車は街へと辿り着いた。
街では老人達が土下座してお出迎えをしていた。
それほどウベングルガに敬意を持っているのか。
こうして、老人達とウベングルガ・横田ペアの話合いが始まった。
最初に口を開いたのはウベングルガであった。
「…して長老よ。こやつの話は本当かのぅ?」
事態を掴めていない長老は、キョトンとした表情を浮かべている。
「一体何の話でしょうか…?」
ウベングルガは少し表情を曇らせた。
そして怒りのこもった声を響かせた。
「勇者を招き入れた事じゃ!!知らぬとは言わせぬぞ!!」
ざわざわと老人達がざわめき始め、
それに腹を立てたのか、ウベングルガは更に声を荒立てた。
「ええい!!はっきりせんか!!この愚民共め!!」
それを聞いて老人達も怒りをあらわにした。
「そういう言い方は無いでしょう!?」
「ワシらはどんな要求にも耐えてきた!いわれの無い事でそう言われるのは…。」
その言葉を遮り、ウベングルガが怒号をあげた。
「もうよい!!真実だろうと嘘であろうと、皆殺しにしてくれるわ!!」
そう言ってウベングルガは外に出た。
「おい!お前何を言った!!」
横田に非難が浴びせられる。
横田は必死に言い訳を考えた。
「ふっ…お前らの為さ。」
「ウベングルガを倒す為にここに引きずり出したんだ!!」
老人達は驚きの表情を浮かべ、横田を凝視していた。
これ幸いと横田が言葉を続ける。
「お前らは何だ!?奴隷か!?」
「違う!!人間として、自由を勝ち取るなら今だ!!」
『全員武器を取れ――――!!』
半ば押されるように各自頷き、各々武器を探しに散った。
その隙に横田は外へと逃げ出した。
予想外の展開だったが、これで逃げる隙も出来るだろう。
横田は辺りを見回した。
「…!?」
街中が凍り始めていた。
街の中央でウベングルガが吹雪を吐いている。
横田は逃げようと振り返り、駆けだそうとした。
「おわっ!!!?」
何かに躓いて転んだようだ。
それをじっくり眺めると、凍りついた子供であった。
「……」
横田に不思議な感情が芽生えた。
それは「怒り」であった。
ウベングルガの仕打ちに、さしもの横田も腹の底から怒りが込み上げる。
―元をただせば自分が悪い…。
横田の脳裏にふと浮かんだ。
それと同時に横田は走り出していた。
ウベングルガのもとへと…。