第5話:生贄と美女
野菜泥棒により、独房へと監禁された横田。
生贄に決定し、刻一刻と時間は過ぎて行った。
―ウベングルガの生贄
汝我に生贄を捧げよ。さすれば永久の繁栄を約束しよう。
汝我に従え。さすれば永久の豊潤を約束しよう。
この土地に古くから伝わる言い伝え。
横田はそれを耳にした。
生贄になるのが決まってから眠れぬ夜を過ごしていた。
ふと言い伝えを思い出し、その度に恐怖を抱く。
段々と精神崩壊していく横田。
楽しかったキャバクラの思い出が、走馬灯のように駆け巡る。
「かわいかったなぁ…ミヨちゃん…。」
この期に及んでも俗な考えしか浮かんでいない。
最早救いようがない。
生贄に捧げられる時間は、刻一刻と迫っていた。
「そろそろ時間じゃな…。」
老人達が申し合わせて、独房へと入ってくる。
横田は虚ろな目でそれを眺めていた。
老人達は横田をカゴに入れると、
ウベングルガの住む山へと歩き出した。
「ふががあ!ふがふがっ!!」
猿轡をされ、まともに声を出せない。
気温が徐々に下がって行く。
どうやら山の頂上を目指すらしい。
パンツ一丁の横田にとっては、中々堪える寒さだ。
頂上には岩をくり抜いて作られた城。
その前には生贄を捧げる穴があった。
「では皆の衆…。」
老人が皆に号令をかける。
他の老人達はそれに従い、各々準備を始めた。
横田の猿轡は外され、ようやく喋れるようになった。
「ぶはっ!!お前ら…こんな事していいと思ってるのか!!」
横田の問いかけに老人達は冷たく言い放つ。
「お前に言われたくないんじゃがな…。」
ふっ…と鼻で笑いながら老人は答えた。
まぁ、当然だろう。
犯罪者に言われる筋合いはまるでない。
老人達は横田を穴の前へと運ぶと、
それぞれ祈りを始めた。
「今季の豊作を祈って…一人の命がそちらへ向かいます…」
「血糖値が高いようですが…どうぞお怒りになられませんよう…」
随分と勝手ないいぐさだ。
横田はワナワナと震えながら、老人達に言った。
「お前ら…俺が帰ってきたら滅亡させてやる!!」
老人が答える。
「出来るもんならやってみろ!この中年が!!」
各自横田の悪口を言いだす。
「万年童貞が!!」
「窓際族め!!」
「えー…バーカバーカ!!」
ちょっとだけ涙が出た横田であった。
「おま…」
言いかけた瞬間、穴に向かって落とされる。
「ぎゃあああああああああああ!!」
絶叫をあげて横田は暗い穴へと消えていった。
落ちるスピードは、まるでフリーフォール。
「あははははははは!!」
笑うしかない状況に横田は高笑いを上げていた。
半ば崩壊気味であった。
『バシャーーーーン!!!』
落下した先の水たまりに落ちた。
いや、湖と言った方が正しい規模。
「ゴボッゴボボ…」
衝撃で軽く意識が飛びそうになる横田であったが、
必死に泳ぎ岸まで辿り着いた。
「こ…これは…」
端正な作りの門構えに、上等そうな布で作られた絨毯。
地下にこれほどの建物があったとは…。
横田は身を起こすと、ゆっくりと門を押してみた。
ピクリとも動かない門。さすがに高さ6M近くでは…。
そう思った矢先に門が開いた。
門はゆっくりと開いて行く。
…スライドで。
「スライド式かよ!!!」
思わずツッコミを入れる横田であった。
開いた門の先には、一人の女性の姿。
絶世の美女と言っても過言ではない。
見事なスタイルに横田は見とれていた。
「いかんいかん…。」
我に返り、女性に話しかける。
「すみません。あなたはどなたですか?」
横田は精一杯紳士的に話しかけたが、
女性の反応は全くない。
「あのぅ…あなたも生贄に?」
先程と同じく無反応。
さすがに女性に無視されると、精神的にくるものがある。
困った横田は、相手が喋り出すのを待つことにした。
一時間…
二時間…
待てど待てども女性は一向に話す気配はない。
それどころか、ぴくりとも動かない。
横田は恐る恐る近づいて行った。
近づけば近づくほど、その豊満な胸に視線が移る。
1M程度の距離まで近づき、じっと女性を眺める。
「うむ…いい乳だ…。」
横田は頷いてる。
その姿は変態そのものであった。
相変わらず無反応な女性に、横田は遂に行動に出た。
「おりゃあああああああああああ!!」
掛け声と共に女性へと飛び付いた。
「もう我慢できん!!」
血走った目で女性を間近で見る。
そして抱きついた横田。
「ふふふ…あれ…変だな…固い…」
その瞬間女性は崩れ去った。
「ごごご…ごめんなさーーーい!!」
混乱している横田はわけのわからず謝った。
横田が抱きついたものは、ただの石像であった。
「あはははははははは!」
笑い声が何処からか聞こえる。
横田は辺りをキョロキョロと伺う。
先程の石像と同じ女性が現れた。
「馬鹿じゃのう…笑わせて貰ったわ。」
女性はクスクスと笑っている。
状況の理解出来ない横田は、女性に問いかけた。
「え…と…。どういう事ですか…?」
女性はニヤニヤしながら横田に答えた。
「それはのぅ。わらわの悪戯じゃ。ぶはっ!」
再び吹き出す女性。
横田は顔を真っ赤に染めた。
「いやぁ…どうして人間の男はこう馬鹿なんじゃろうか。」
女性はそういうと、先程とは打って変わった。
鋭い目つきへと変わる。
横田はそのギャップに戸惑いながらも、
かろうじて声を出した。
「もしかして…あなたが…」
女性はニヤリと笑みを浮かべ答えた。
「わらわが…ウベングルガじゃ。」
横田に冷たい汗が流れた。
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