第10話:決戦!ウベングルガ(2)
「きゃあああああああ!!!」
アンジェの声が一面に広がった。
ウベングルガは氷の刃を喉元に突き付け、
クスクスと笑っている。
「どうした?もう終わりかのぅ…?つまらん。」
そういってアンジェの脇腹を蹴る。
「うぐっ…」
アンジェはうめき声を漏らす。
「どうした!?痛いのか!?ほれほれほれ!!!」
続けてアンジェを蹴りつづける。
「ごほっ…」
アンジェの口から紅い液体が噴き出る。
ウベングルガは構わず蹴りつづける。
「どうしたぁ!?抵抗せんのか?このまま死ぬか!?」
そうしてウベングルガが再度蹴ろうとした瞬間、
アンジェは何とか体を捻り、それをかわした。
「ほぅ…人間にしては丈夫じゃのぅ…。」
パチパチとウベングルガが嫌味な拍手をする。
アンジェはそれを睨めながら精一杯の強がりを言った。
「あんたなんかに…負けないわよ!!このブス!!」
ピクンとウベングルガの眉がひきつった。
「小娘…もう一度言ってみろ…。」
アンジェは大きく息を吸うと、
ウベングルガに向けて叫んだ。
「何度でも言ってやるわよ!!ブスブスブスブスブスブス!!!!!」
ウベングルガは下を向き、プルプルと震えている。
「小娘…貴様も…氷漬けにしてくれるわぁ!!!」
ウベングルガは大きく息を吸い込んだ。
「今だっ!!!」
アンジェは懐にしまっておいた、赤い粉を投げつける。
「ゲホッ!!?」
ウベングルガは大きくせき込んだ。
アンジェが投げつけたものは、唐辛子の粉末。
辛党であるアンジェは食事の際、これを使用していた。
「てやぁぁあああ!!」
気合と共にアンジェの拳が炸裂した。
「がっ…!?」
ウベングルガはよろめいた。
アンジェは素早く距離を取ると、呪文を唱え始めた。
「小娘…楽には死ねんぞ…ゲホッ…。」
ウベングルガは呼吸を整えている。
アンジェは無視して詠唱を続けた。
ウベングルガはアンジェの様子に気づくと、
氷の刃を出現させアンジェに走らせる。
避けれそうになかったアンジェは、
体中に気合を込めた。
『ドスドスドスッ!!』
幾つかの刃が体に突き刺さった。
しかし、アンジェは意に介さず呪文を続ける。
ウベングルガが次の刃を完成させる寸前、
アンジェの詠唱が終わった。
「これでも…くらえーーーーっ!!」
巨大な火球がウベングルガを襲う。
溜まらず防御態勢に入る。
「くっ…こんな小娘がこれほどの…!!」
ウベングルガが悔しげに呟く。
「舐めないでよね!!これでも…神官なんだから!!」
火球がウベングルガを飲み込んだ。
『がああああああああああああ!!』
ウベングルガが絶叫をあげる。
アンジェは力尽き、その場にへたり込んだ。
「これで…ダメなら…もう…」
肩で息をするアンジェ。
「あああああああああ!!」
ウベングルガが更に叫び、炎は四散した。
「小娘…今のは…効いたぞ……。」
ウベングルガが息を切らしている。
先程の呪文でかなりのダメージを負ったようだ。
「しかし…限界のようじゃな!!」
ウベングルガがアンジェにむかって走り出した。
「くっ…」
アンジェはよろめきながら立ち上がり、
ウベングルガを迎え撃つ態勢をとった。
「死ねぇぇえええええ!!」
ウベングルガが振り掛かったその時、
一つの叫び声が響いた。
『クレーーーーーール!!!何処だあああ!!!』
横田が登場した。
あっけにとられる二人。
「そこかぁぁぁああ!!」
クレールの氷像を見つけると、
全力でタックルをかました。
『あっ…』
ウベングルガとアンジェ。
二人が揃って声をあげた。
『ガシャーーーン!!』
派手な音をあげ、氷像は崩れ去った。
…
……
沈黙が辺りを包み込む。
「えーー…どうしよう?」
横田はそういって、アンジェとウベングルガを見る。
『しるか馬鹿!!』
二人の声が再び揃うのだった。