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即死魔法は連携する


「随分派手にやったから、来たね。」



フェイがそう言ってナイフを構えるのと、少し離れた場所からアビスウルフが飛び出すのが同時だった。その数は三匹。身体の大きな一匹が中央で、残りの二匹はやや小柄である。


「ルイン!!」


「OKよ!」


先行して飛び出した中央の一匹が、ルインが人形を前に出すことでその動きを止める。それどころか勢いを付けたために突進をそのままの威力で跳ね返される結果となった。


『オルルル...』


加えてルインのマッドベア人形には鋭い刃物がいくつも仕込まれていて、ぶつかった相手を殺傷させるとまではいかなくともただでは返さない造りになっていた。それによりアビスウルフの頬に一筋の切り傷が出来ており、血が垂れて地面を赤く染める。



人形傀儡師(マリオネッター)はその攻撃と防御の大部分を人形が担っている。人形無しでは魔力を持っただけの一般人と大差ない。それ故ルインは人形にあらゆる細工を施していた。



『ギァオ!!』


『グァァァンッ!!』


中央の一匹が弾かれたのを皮切りに、側面にいた二匹のアビスウルフがルインを挟み込むようにして突っ込んでくる。


「ルイン!!」


「ええ!!」


勿論、それをフェイが逃すはずもない。すぐにルインの左について武器を構える。ルインも狙いを右の一匹に定め、人形を前に出した。


「────よしっ!!」


『アァオ!?』


まず左の一匹に向かって、フェイがチェーンナイフを放つ。鎖を噛んだアビスウルフだったが、噛んだ場所が悪く長さに余裕のあった鎖の先端からアビスの後頭部へ回りそのままグルリと回転して巻き付いていった。



「吹っ飛びなさい!!」


『ヒィン!?』


ルインへと飛びかかってきた右の一匹は、姿勢を低くしたマッドベアの上を掠めた。その瞬間を逃さなかったルインが人形を動かしたことで大きく上空へかち上げられる。



『『ギャアン!?!?』』



上空から降ってきた一匹が拘束されていた一匹と衝突する。自身と大差ない大きさかつ重さの同胞と激しく激突したダメージにその場でのたうち回る二匹。


『ガァァァッ!!』



その様子をみていた残りの一匹が、フェイに向かって飛びかかる。


「ふんっ!!」


『ギャヒ!!』



しかしフェイはアビスウルフの鼻に思い切り蹴りをいれ、既に地面に突っ伏していた二匹の方へと弾き飛ばした。



「《デス》!!」



フェイが手を前へ振りかざし黒い靄が三匹のアビスウルフを包み込むと、アビスウルフらは僅か十秒足らずで物言わぬ骸と化した。


「ふーっ、ナイスアシストだルイン。」


「とーぜんよ!アンタの隣にいるんだからこれくらい何度でもやって見せるわ!」



アビスウルフの沈黙を確認すると、二人は軽くハイタッチを交わして互いを褒め合う。


「.....。」


それをリティアは呆然と眺めることしか出来ずにいた。自分がサポートすることもされることもなく、一方的に助けられただけ。それもフェイとルインという先程馬鹿にしたばかりの二人の圧倒的なコンビネーションを見せつけられた。


「すごい....」


いつも前に出て、味方には悪態しかつかず絶えず突っ込んでいく自分とは違う。お互いにとって適切な、理想的な距離を把握しカバーし合う。流れるような二人の動きを見て、リティアは思わず一言そう漏らした。



「フェイ、大丈夫?腕に負担かかってない?」


「別に大丈夫だよ、これくらい。」


「ほんっともう。前みたいに倒れられたら嫌よ?」


「ふふっ、ちょっとね。ほんの少しだけ痛いかな。」



ルインにせがまれたことで観念したフェイはそう言うと地面にしゃがみ込み、右の袖を捲ってルインに腕を見せる。ルインは予め濡らしてあった包帯をその腕にゆっくりと巻いていく。

先程、フェイがチェーンで押さえていたアビスウルフの上に更にアビスウルフが激突し、積み重なるという事態が起きたことで片腕にダメージがきていたようだ。


「動きはするのよね?」


「問題はないよ。振ると痛いんだけどね。」


「それは大丈夫っていいません!!ちゃんと言いなさい約束なんだから!」


「はいはい、わーったわーった申し訳ございませんでした~。」


いつものルインの叱責を面倒そうに流し、手当てを大人しく受けるフェイ。断るとひたすら厄介な事を知っているからであるが、それ以上にルインの存在の有り難みというものを感じているようであった。


「っ……!!」


と、いうのもそのダメージが決して小さいものではなかったからだ。必死に表情にこそださないようにしているが、腕を触られる度に僅かに身震いし苦い表情を浮かべている。


「震えてる。やっぱ我慢しようとしたでしょ。」


「スゥー....」


「誤魔化してもダメよ。あんたは自分の身体を大事にしなさすぎ。」



そしてその表情はすぐにルインに看破されることになったのだが。我慢してバレて怒られるのもまたいつも通りの彼女たちのやりとりではあるが、リティアはその光景をなにも言わずに眺めるしかなかった。

9/20.今話の描写を変更しました。

9/7.第2部即死魔法はやっぱり疎まれるにおいて描写を追加しました。


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