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即死魔法は観察する

ずっと触りたい触りたいと思っていながら、リアル環境などをはじめ様々な理由で中々触れず凄く待たせてしまったことをここに反省致します。


「……」


三人は一言も発することなく、山道をひたすら歩き続ける。先頭をリティアが自分のペースで突き進み、その後ろをフェイとルインがくっつき歩いている。

リティアは周囲を見渡すこともせず、無警戒な様子でずかずかと前進し続ける。最早後ろの二人には興味ないと言わんばかりの早足だった。


「……。」


目的のアビスウルフの群れはまだ見られない。


「ねぇちょっと、もう少しペース落として。」


リティアの後ろに付いていたフェイが口を開く。ルインの歩幅に合わせながらもリティアを見失わないようにしていた彼女だったが、リティアのあまりの足早な動きに口を挟まずにはいられなかったようだ。



「……。」


しかし、リティアはそれでもズカズカと歩幅を緩めることなく早歩きで距離を空ける。彼女の協調性と関心の無さがパーティに向いていないことは明らかだ。まるで本当に最初から一人だったかのような動きで依頼だけをそそくさとこなす、冒険者としてはある意味正しくそして間違った動き方だった。


「なによあいつ、ほんっっっとあり得ない!」


そして、フェイに言われ愚痴るのを我慢していたルインも悪態をついて大っぴらに愚痴を言い出す。チームとしては最悪と言える険悪なムードだった。



(……無警戒すぎる。この地に慣れているからかはわかんないけど、あの様子だと恐らく正面しか見えてない。)


フェイはなんとかルインを宥めつつも、リティアの動きをしっかりと見る。なにも冒険者は戦闘だけこなせればいいと言うわけではないからだ。

ダンジョンに限らず、常に外で活動する冒険者には危険が付き纏う。足音や茂みを掻い潜るような、ガサガサと魔物が出す僅かな音。急な天候の変化。そして嗅ぎ慣れない異質な匂い。それら全てが災厄のように自分の身に振りかかるのだ。




ガサッ


(───ルイン、構えて。左斜め前。)


(オッケー。)


たった一瞬の草木の小さな揺れを聞き逃さず、フェイはナイフを構えてルインに警戒を促す。


「……気づいてない、リティア!!」


「......。」


当のリティアにも声を掛けるが、フェイの言葉は届いていないのか。それともあえて聞き流しているのか彼女からの反応はない。



『ヴォウウウウンッ!』



そうこうしているうちに、フェイが睨んでいた方向からアビスウルフが一匹草むらから飛び出してくる。先程のアビスウルフよりは小柄ではあるが、その俊敏な動きは決して劣ってはいない。


「っらあ!!!!」


リティアもアビスウルフの存在に気づき、勢いよく大剣を振るう。重い一撃ではあったがアビスウルフが横に飛び退けたことで剣は空を斬り、大きな音を立てて硬い金属の塊が地面に叩き込まれた。



「クッソォ!!!」


アビスウルフに命中しなかったことに腹を立て、リティアが不機嫌そうに声を荒げた。地面にぶつけた衝撃などもろともせず、再び剣を持ち上げて肩に背負った。



「カバーするっ!」



大剣でアビスウルフの機敏な動きを捉えるのは難しい。後ろにいたフェイが跳躍し、リティアの上を軽々と飛び越えた。そしてアビスウルフの頭目掛け、長い金属の鎖を放つ。その先端には彼女が普段から愛用するナイフが付けられていた。


『ァオオ!?』



フェイの放ったチェーンナイフは、アビスウルフの視界ではあくまで細い何かにしか見えなかったのだろう。アビスウルフ避ける動作を見せず、メスをいれるかのようにナイフが眉間を切り裂いた。決して深いとはいえないが、確かな傷をつけた。



「えっ!?さっきまで手に持ってたはずじゃ!?」


リティアが驚きの声をあげ、フェイの方を見る。一方でフェイはその質問に答えてはいられないとばかりに無言を決め込み、リティアの前に出てナイフを付けたチェーンを鎖分銅のように高速で振るう。


『ヴォウウッ!』


『キャン!キャン!』


『アオオオオンッ!』


だがアビスウルフ側も決して無抵抗な訳ではない。すぐさま応援を呼び二体の大柄なアビスウルフがもと居た一匹の後ろで吠えている。


「一匹当てたところで残りの二匹にすぐ襲われる!剣でガードだけして!!」


「やです!!!」


フェイの提案、もとい指示が気に入らなかったのか、リティアは無視して剣を構える。



「《ウォーバルスラッシュ》!!!」


『ギャヒィン!?』


リティアは叫び、力強く剣を横凪ぎに振るう。剣の軌道に合わせて衝撃波が発生し、まるで斬り裂くかのような強風が先頭の一匹を吹き飛ばす。残りの二匹はそれを見て高く跳躍することで回避した。



『ァオオ!!』


『ヴルル....』


残りの二匹が同胞の亡骸を一瞥し、視線をすぐに移してリティアを睨む。



「っ..ぁ"あ"もう群れてんじゃねえぞゴミ畜生が!!一匹殺したぞ!私が、殺したんだよおおお!!かかってこいよ!!」



思ったように攻めてこないアビスウルフの動きにキレたのか、リティアが剣をブン回しながら叫ぶ。


(相手は魔物なんだから、こっちの言葉がわかるわけないじゃん。)



それを見たフェイは半分諦めたようにリティアの様子を後ろから眺めていた。


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