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《即死魔法》は決意する

『アジェェェェッ!!?』


″花″から飛び出してくる種を鎌で弾き、襲い掛かってくる《デビルシード》に向かって正確に《デス》を浴びせるフェイ。先程は手当たり次第に魔法を撃っていたことで感じた疲労が、今では全くといっていいほど感じられないほど機敏に動けている。


「ルインっ!」

「オッケー!せい!」


フェイの掛け声に合わせてルインがゴブリン人形を囮にするかのようにふわふわとした軌道で動かし、《デビルシード》達を惹き付けていた。そうして一ヶ所に固まった所をフェイが纏めて仕留めることにより、最低限の動きでより多くの《デビルシード》を狩ることができた。



『キェエエエエエエエエエエッ!』


更に地上の《デビルシード》達は暴れ回る巨鳥の脚に巻き込まれ、その数を含めれば″花″が一度に増やすより多く種狩りが出来ている。戦況は意図せぬ乱入によって確実に二人の方へ傾いているようだ。


『ゲエエエエッ!!』

『ガシャァァァァァァァッッ!』


だが《デビルシード》の数は減ってはいるものの勢いが衰える様子はなく、ただ本能のままに二人に飛び掛かってくるだけだ。そこに連携や撤退といった意思や理性は見られず、それぞれの種が我先にと口を開いて襲いかかる。


外殻は硬いが単体で見ればやはりEランク相応のモンスターでしかなく、この状況で何匹掛かろうが冷静に対処できる二人の相手ではなかった。


『ゴガシャアァァァァァァ!!』

『ゴシャァァァァァァァァァァァァ!!』


だが状況も環境も決して不変ではない。地面に振り落とされて時間の経った《デビルシード》の一つから殻を突き破って細長いチューブが現れ、大きく変化した悲鳴のような鳴き声を上げる。


これが先程フェイに痛手を被った《デビルプラント》への進化であった。寄生虫のように本体がにゅるりと現れるせいで、やはり《デビルシード》とは全く別の生き物のようにも見え、どうにも不気味である。


その本体というのはチューブのように細長い身体に《デビルシード》譲りの鋭い牙が生え揃っているヒルのような生き物だ。


「来るよ、構えて!」

「わかってるわよ!」


びたんびたんとのたうち回るような動きをする《デビルプラント》を前に再度武器を構える二人。特にフェイは先程痛い目に逢っているため、より慎重にプラントの動きに注視している。


『シャアァァァァァァァッッ!』


鳴き声と共に《デビルプラント》が勢いよくジャンプして飛び掛かる。だがその目標はフェイでもルインでもなく、なんと例の巨鳥であり、後ろ向きにジャンプして極彩色の身体に噛みついた。プラントの鋭い牙は羽毛を容易に貫き、もぞもぞと身体を食い込ませて少しずつその体内へと侵入しているようだった。


「な……何!?」


《デビルプラント》の突然の行動に驚くルイン。どうやら突然のターゲット変更に翻弄されて上手く動けないでいるようだ。軌道の読めない動きを前に困惑し、ただ防御するという選択しか取れずにいた。


「させないっ!」


一方フェイは《デビルプラント》の行動の意味を理解したといった風に巨鳥に近づくと、まだ半分も入っていなかったチューブ状の茎を握る。そして何を思ったのか、その首に鎌を当てて強引に引き千切って見せたのだ。



『ピギィィィィィィッッッッ!!!』



プラントの大絶叫が洞窟内に響き渡る。その千切られた部分から深紅の鮮血が吹き出し、辺り一面に撒き散らされた。その血は近くにいたフェイのみならず、床や壁、ルインの操っていたゴブリン人形にまで付着した。


「フェ……えっ?」


ルインはこの状況を呑み込めず、フェイの姿や辺り一面の血溜まりを見て狼狽えていた。フェイの身体は大量の返り血を浴びており、頬や服は真っ赤に染まっている。凝縮された鉄の匂いとプラントの発する独特の異臭を放っていた。


「別に無傷だから大丈夫だよ。……ああ、刺激が強かったか。」

「……。」


フェイは手に持つプラントの死骸を乱暴に放り投げると、苦笑いをしながらルインの頬に触れそう言った。彼女は既に慣れている事である為気にも留めていなかったが、血が吹き出すショッキングな光景はまだルインには早かったなと依頼を受けさせたことに後悔の念を感じていた。


「大丈夫?ルイン?」

「……。」



その場に片膝附き、目線を合わせてルインの反応を窺うフェイ。放心状態にあるルインを軽く揺さぶったり肌に触れたりして、意識を戻そうと必死だった。



──冒険者を一言で表すなら《汚れ役》である。当然依頼をこなしていく中でもルインが今のように流血を伴いながら戦わなくてはいけない時がくるだろうという事を考えていなかったわけではない。


常に生死の境を歩かされるような仕事柄、多少の流血や痛みに一々反応していては身が持たない。


だがそれが早すぎたのだ。依頼の内容や規模、目の前で繰り広げられている光景までの全てが。フェイ一人ならまだしも、初めての依頼をこなす新米の少女に見せるものとしてそれはあまりにも凄惨すぎた。


「……ねぇフェイ。」

「なに?」


今にも消え入りそうな声ではあるが、確かにルインはフェイを呼んだ。更にその声をフェイがしっかりと聞き取ってくれたという安心感からか、彼女も冷静さを取り戻しつつあるようだ。


「フェイは無理してないのよね?」

「大丈夫。まず怪我もしてないよ。」


ルインは血みどろの彼女の姿に目を背けず、しっかりと開いた目でフェイに問いかける。その場で立ち上がって鎌を力強く振るう彼女の姿を見て一度、ルインは大きく頷いた。


「それなら私が諦める訳にはいかないじゃないのよ。このチャンスも絶対に無駄にはしないわ!」


「──ありがとう。絶対成功させるよルイン!」



二人は互いに掛け合い、武器を握る手の力をぐっと強めた。

8/6.タイトル【(ソレ、)《即死魔法》じゃダメデスか?【奈落に落とされた魔術師ですけど、なんか文句ありますか?】】から現在のものに変更。あらすじの加筆。


8/6.第二部【《即死魔法》はやっぱり疎まれる】の加筆。


以上の二点を行いました。未だ定まらない点は多々ございますが引き続き読んでもらえれば幸いです。

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