《即死魔法》は依頼を再開する
謎の鳥を追って再び洞窟へと脚を踏み入れた二人は、いつ《デビルシード》に襲われても大丈夫なように互いに武器を構え、辺りを見回しつつ奥へと進んでいく。周囲には大量の《デビルシード》の死骸が転がっており、件の巨鳥は更に奥へ進んだのか未だそれらしい音は聞こえてこない。
「もう……!勝手な行動は困るってあんたが言ったばかりじゃないの!」
「ご……ごめんルイン。いつもの癖でつい走っちゃったよ。」
ルインはフェイの突拍子のない行動を咎め叱っていた。これまで一人でいた分、まだチームを組んで行動することに彼女自身慣れていないというのもあるのだろう。
ともあれフェイとルインでは足の速さに大きな差があるのは言うまでもなく、一歩間違えれば危険な目に遭っていただろうというのも事実だ。
「で、なんで急に飛び出したの?」
「ああ、少し気になることがあってね。」
フェイが突然狩りを再開するといった理由を聞きそびれていたルインが彼女に理由を問うが、フェイの返答に更に首をかしげて理由を理解できぬまま洞窟の奥へと進んでいく。
「静かね……」
「そうだね。」
その間に《デビルシード》に襲われることはなく、余裕を持って周囲を見渡せていた。《デビルシード》以外の生物の存在は見られずかなり殺風景で静かな洞窟であり、周りには自分達が仕留めたであろう《デビルシード》の死骸が転がっている。
だが奥に進むにつれその死骸も無惨に噛み砕かれたかのようにボロボロな物が多くなっているようで、ルインの攻撃やフェイの鎌は硬い殻に弾かれてまともに通らなかったため、恐らく別の存在がいるのだろうと彼女達は察したらしく特にフェイは警戒を強めている。
その存在とは恐らく──
『クキィエェェェェェェェェェェェ!!』
「「……!!」」
突如洞窟の更に奥の方で悲鳴のような鳴き声が響き渡った。突然の事に二人は意識を持っていかれ、声に誘われるがままに奥に向かって駆け出した。
「えっ……これって!?」
「なるほど……通りで」
「通りでってどういうことなの!?」
二人が目にした光景は、先に洞窟へと入っていた巨鳥が《デビルシード》の大群にもみくちゃにされているという状況だった。更に巨鳥の虹色の身体の至るところから《デビルプラント》の茎のようなものが伸び、その先端には赤い血のような液体を垂れ流した深緑色の花を幾つも開かせている。
その花は《デビルシード》に酷似した青緑色の種を周囲にばら蒔いているようだった。
「ここまで大量発生する理由について考えてたんだけど……どうやら彼らは捕食者すら自分達の繁殖の苗床として利用してたらしい。」
「じゃあそれが……大量発生の原因?」
異様な光景を前にして、《デビルシード》の大量発生の理由に確信をもったフェイ。ルインの言葉に頷き、「恐らく相当前からね」と付け足した。
『ゲジィ……』
巨鳥の身体から生えた花が飛ばした種が唐突に口を開き、二人に気付いて威嚇している。その口からは鋭い牙が覗き、今すぐにでも噛みついてやろうと言わんばかりに涎を垂らしているようだ。
「……くるよ。」
「わかってるわよ!」
フェイは両手で鎌を振るい、ルインも騎士ゴブリン人形を前に押し出し構えを取る。それを敵対と読み取った《デビルシード》が彼女達に向かって飛び掛かってくる。
『アジェェェェッ!!』
フェイが振るった鎌が飛び掛かってきた《デビルシード》の口内を切り裂き、そのまま横凪ぎに弾き飛ばす。《デビルシード》は壁に身体を打ち付け、だらしなく口を開けたまま動かなくなった。
『アジャッ!!?』
『ゲエエエエッ!!』
一方で仲間の異変に気づいて動きを止めた《デビルシード》は、すぐ近くで暴れまわっていた巨鳥の脚に踏み潰され粉々になっていく。巨鳥は身体に纏わりつく《デビルプラント》達を振りほどこうと見境なく暴れまわっており、その太い脚に巻き込まれればフェイもルインも無事では済まないだろう。
二人は巨鳥の動きに巻き込まれないように距離をとり、近づいてくる《デビルシード》を弾き飛ばしていた。
「あれ……どうにかならないの?可哀想だよ……。」
「残念だけど、ああなった以上はもう助からない。私達もああならないようにここで終わらせないと。」
フェイはルインの気持ちを受け止めつつも現況たる《デビルシード》の殲滅を促した。それに対しルインも胸に手を当てて決心をしたのか、こくんと頷いて見せる。
「あれが力尽きるのは時間の問題だ!まずは″花″を狩って増殖を止めるよ!」
「わかったわ!絶対に無理するんじゃないわよ!」
自分達が安全に戦える時間がそう残されていないことを察した二人は再び武器を構え、奴らの増殖元である巨鳥に生えた″花″に向かってそれぞれ刃を振るった。
また少しタイトル変えたいなぁ……(タイトル思い付かない病)




