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《即死魔法》は確認する


「──そんな訳で、勝手な行動は駄目だからね?」

「はい……ごめんなさい。」


興奮のあまり暫く走り回っていたルインをどうにか呼び止めたフェイはひと呼吸つき、軽くではあるが彼女を叱った。だが責め立てるようなことはせず、あくまでもチームとして連携を大事にしようと諭す。


チームやパーティでの連携は非常に大切であり、メンバーが勝手な行動をしてバラバラになろうものなら最悪命の危険があるということを新米のルインはまだ認識しきれていないのだろうと、フェイは思っていた。


「それじゃあ依頼の前準備だ。まず何をすればいいかな?」

「依頼の紙をギルドに提出して……ステータスカードを預かって貰う!」


フェイからの問いに自信満々に答えるルイン。その答えを聞いたフェイも彼女に微笑み頷いてみせる。


掲示板に貼られた依頼は正式にギルドの方で管理されており、それを受注する側もギルドから許可を貰わなくてはならない。そうしないとギルドを通さず勝手に依頼をこなした冒険者のやったもん勝ちになってしまうし、ギルドを通して依頼をやろうとした冒険者が不満を持ってしまうということでこのルールが設けられた。


もしギルド側から認可されていない状態で依頼をこなしてもそこに報酬は発生しないという厳しい体制が取られたのだ。


フェイ自身はこれまでそういった依頼をこなすというよりも、ギルドに素材を提供してお金を稼ぐ個人家業のようなものに近い働き方をしていたのである。


低等級冒険者の、それもソロとなれば受けられる依頼などごくごく限られた簡単なものしか出来ず、そういった依頼よりは遥かに多く稼げるだろうと彼女は《アグタール》で活動していたときから、既に自分なりに稼ぐ方法を見つけられていたのだ。


「うん、ルインは新人だしステータスカードも預かってもらった方がいいね。」

「フェイはいいの?」


ステータスカードは冒険者の身分証明のようなものであり、常に肌身離さず持っていなくてはならない。が、依頼をこなしたりそれなりの距離を移動する途中に無くしてしまう可能性もあるだろう。そんな事態を防ぐために冒険者は依頼中、ステータスカードをギルドのカウンターに預けることもできる。


「私は大丈夫かな。これまで向こうで悪目立ちした分信用できないし。」


フェイは《アグタール》で働いてきた時の事を思い出してそう言った。そもそもステータス測定を面倒臭がったりしていた彼女からすれば、周囲の目に触れる可能性もあって中々ギルドに預けづらかったのだ。それは《オルディン》でも変わらない。《即死魔法》を嫌う人がいる以上自分の身は自分で守るという考えが根付いており、中々払拭できるものではなかった。


二人は依頼をこなす前にすることを一通りチェックを終え、ギルドのカウンターに《デビルシード》の討伐依頼を持っていくことにした。Eランクモンスターの大量発生依頼であり、危険度も低い分報酬もそれなりである。


「ああ、この依頼を受けてくれるとは本当にありがたいね。長らく放置されていたもので、僕が自ら出向こうか考えていたくらいだ。」


ギルだがそんなモンスターであっても決して放置していても良いとは言い難く、ギルド側も手の着かない依頼をどうするかという対応に追われることもしばしばである。


「《デビルシード》は暗闇で発芽し、《デビルプラント》にまで進化することがあってね。それを知っている新人は寄り付かないわ、熟練の冒険者も報酬の少なさから面倒臭がって受けないわで困ってたところだ。」


ギルドの受付担当兼ギルドマスターのラルクは苦笑いしながらフェイに愚痴を漏らす。ギルド側は冒険者に対して依頼を強制することも出来ず、こういった依頼が埋もれていく様子を見ていてあまり良く思う筈はない。


「《デビルプラント》……?」

「《デビルシード》の進化した姿……というより《デビルシード》から文字通り発芽して、花が咲いた姿だね。当然ながら凶暴性は増し、危険度もワンランク上のDランクになる。」


ルインは聞き慣れないモンスター名に首を傾げる。すぐさまラルクから《デビルプラント》の説明が入るが、それでもまだちんぷんかんぷんといった感じで彼女は不安からフェイの袖を握った。


「あまり不安にさせないであげてください。一応この子にとって初めての依頼になるので。」


「……そうだったね、いつもの調子で話してしまい申し訳ない。本来の報酬に加えて《デビルプラント》一匹につき更に追加で報酬を渡そう。ランクが高いと言ってもDランク、ルイン君でも狩れる筈だし何なら先輩のフェイ君に頼ってもいいだろう。」


ラルクから元気付けの言葉をもらったルインは確認を促すようにフェイを見つめる。「本当に大丈夫?」と不安そうな彼女の表情とラルクから信頼されている手前、無理だと言うことはとてもじゃないが出来ないとフェイはため息をつく。


「大丈夫だよルイン。先輩に任せなさい。」

「ほんと!沢山狩ろうねフェイ!」


結局依頼を受けることになってしまったが、ルインがやる気を出してくれたので問題ないだろうとフェイも頭を切り替えることにした。


「立場を利用したようで申し訳ない……」

「そちらも困っていたでしょうし気にしないでください。」


すぐにラルクから無理を通したことに対して謝罪されるが、フェイも彼の苦労を理解できたのか、苦笑いでそれを受け止めることにした。

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