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《即死魔法》は仲間を作る

(私も冒険者として……フェイと一緒に行けるのかしら。)


ルインは暫くの間、ただひたすらその事で頭が一杯になっていた。フェイは自分を受け入れてくれていて、先程の戦闘を通じて既に彼女もフェイを認めている。依頼をこなして誰かの役に立ちたいという気持ちや、冒険者として色んな魔物を倒して強くなりたいという向上心があった。


(強くなって、絶対に仇を討ってやるんだから!)


──だがそこには自分の故郷を壊したであろう死霊傀儡師に対する復讐心も含んでおり、子供心には理解できない好奇と憎悪をぐちゃぐちゃに入り交えた複雑な感情が巡っている。


(……“冒険者“になりたいっ!)


ルインはその感情を整理しきれぬまま、好奇心に揺さぶられていた。《即死魔法》が使えるというだけで酷い仕打ちを受けてなお立ち上がろうとするフェイのように、心から強くありたいと彼女は思った。


「──ルインも乾かしなよ。」

「ええ、そうするわ。」


そんな想いを抱いているとはいざ知らず、暫くぼうっとしていたルインに声を掛けるフェイ。彼女はスライムの粘液にまみれたジャケットを脱ぎ、傷だらけの上半身を晒していた。右腕と脇腹には斬り付けられたような傷痕が幾つも残り、お世辞にも綺麗だとは言えなかった。


「うっ……かなり痛そうね。」

「まあ……ね。結構辛い。」


回復薬で出来ることは治癒能力の向上と痛み止めくらいで、それも決して万全ではない。傷を治すには万能な《回復魔法》に頼るか、時間を掛けてゆっくりと癒えさせるかの二択しかないのである。


「ん……しょ。」


フェイは黙々と傷付いた箇所に包帯を巻く。パーティも組まず一人でやって来た彼女からすれば、特にいつもと変わりない行動であった。


「……手伝おうか?」

「あ、いや、気にしなくていいよ。慣れてるから。」

「気にするなと言われたって、そんな状況嫌でも気にするわよ。慣れてるからとか強がってないで、とにかく私に手伝わせなさい。」


ルインは手伝おうか聞いてみたが、大丈夫と言われてに断られる。それでも傷付いた身体を一人で引き摺っている姿が痛々しくて耐えられなかったのか、強引にフェイの手を取ってそう言った。



─フェイも彼女の好意をはね除ける事はせず、結局ルインに包帯を巻いてもらう事にした。これまで当たり前にやって来たことなだけに、どうにも慣れない。


「これまで一人でやって来たんだかなんだか知らないけど、人前でボロボロになってまでどうして抱え込むのよ。そういうのは結局、単なる強がりっていうのよ?」

「……。」


ルインの説教染みた言葉に、フェイは何も返せずにいた。決して面倒だとか煩いだとかそんな否定的な気持ちで聞き流していた訳ではない。寧ろその逆であり、これまでもフェイは何度ボロボロになろうが人の手を借りずにいた。



【どうせ自分は《即死魔法》使い】であり、人に忌み嫌われて然るべきだ。と自ら他人との距離を取っていたことを否定できなかったのだ。



──自分の存在が他人に悪影響を与えるから。


─《即死魔法》の魔術師だと聞かれて笑われるから。


─頼んでもどうせ、誰も手なんて貸してくれないから。



そう自己完結して自分の為だけに生きてきた彼女はハッキリいって強さと強がりを完全に履き違えてきたといって過言ではないだろう。だから今のルインとのやり取りのように、人から施しを受けることに慣れていないのだ。


「いい?そうやって何でもかんでも一人で抱え込まないで。今までそうしてきたとかそんな言い訳は聞かないからね。」


ルインは手当てを続行しながら強引に一人で話を進め、口ごもるフェイに逃げ道を与えないような振る舞いを見せている。


「これからは仲間なんでしょ?言われなくたってここまで一緒にきた以上、はいさようならなんかで終わらせないわよ。」



ルインの言葉にピタッと身体が止まった。聞きなれたようで聞きなれなかったソレは、ある意味彼女が求めていた言葉そのものである。


「仲間……か。」


フェイはオウム返しのようにソレを口に出す。《即死魔法》を覚えてから得られなかったそれがようやく実感できるようになったのだ。ルインもフェイの言葉にこくこくと頷いて見せる。


「それとも「明日から宜しく」なんて言っておきながら私を突き放すつもりなのかしら?そんなことされたら野垂れ死ぬしかないんだけど。」

「そんなつもりは……ない、ないよ。」


ルインの試すような口振りに怯えながらも、噛み締めるように「ない」と言い切った。ソレは本来フェイ自身も求めていたものだ、二人の間でこれからどうするかなんてことは既に決まっている。


フェイの真剣な表情を見て安心したのか、ルインの表情が大人びたものから年相応の女の子といった可愛らしいものへと変わった。


「それじゃあ言葉通り、「明日から宜しく」ね!」

「よろしく、ルイン。」


二人は拳を軽く突き合わせ、互いに微笑み合う。《即死魔法》使いとして嫌われてきたソロ魔術師と、奈落に落とされ死の淵にいた人形傀儡師はこうしてチームを組むことになった。

(。・ω・。)全然小説執筆がはかどらなーーーい!!

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