それが茨の道でも
10話を超えたのでそろそろ更新が不定期になります。
地味にタイトル変更しました。
『庵花楼』という名前の店を出て、またドロシーの後ろをついて行く。
エリオには他に行く当てもない。だから今はその人の背中について行くしかなかった。
あっという間に夕暮れが近づいている。
人も建物も見えない道を歩き始め、鈍色に光るアタッシュケースを抱える彼女は、その足に迷いはない。
「なあ」
エリオの発した声に、ドロシーは歩みを止める。
振り返る彼女の白い頬も宝石のような瞳も、夕焼けに染められる。
「俺にできるのか?」
ここまで色々なことを考えて、エリオはもう一度確かめた。
何も行動を起こさなければ、今の立場は何も変わらない。見切り発車でここまで来てしまった。
今更後に引けないなら、その聖女の弟子とやらになるしか、奴隷の自分には他に選択はない。
「もちろん、簡単なことではないわ。でも、あの瞬間に庇ってくれたあなたなら、その素質があると思ったの」
自分は、あの呪われたヤマトナデシコだ。
自分の身体は呪われている。まだ未熟な身体には、今後どんな影響が出てくるかわからない。排除されてきた立場だった。
それでも求めてくれる人がいるなら、彼はまだ運命に抗いたい。そのための力がほしい。
「“汝の道に、光あれ”――――おまじないよ。覚えておきなさい」
おまじない……彼女は弟子にその言葉を託して、再び歩みを進める。
その背中は夕闇に呑まれそうで、彼女の笑みはどこか憂いを帯びたように彼の目に映る。
エリオは、変わりたいと思った。
自分の手でまたあの世界を見てみたいと思った。どうしようもないと思っていた自分の運命を変えたい。




