01 新しい伝説
「タマスクに聞きました。エロいとは性的な意味だそうですね。少尉は無機物に性的興奮を覚える変態なのですか?」
「わかってねーな、メイもタマもよ。いいか? プレアデスのボディを見ろ。全体的に美しい流線型だろ?」
「それは防刃、防弾装甲です」
メイが訂正しようとするが無視した。話が進まない。
「胸部は盛り上がり、腰はくびれ、スラスターは官能的なサウンドじゃないか」
「つまりロボットのボディに女性を見ているということですか?」
「半分正解といったところか」
「半分とはどういうことですか? ロボットに性的興奮を覚えているのではないですか?」
「ちげーよ。ポンコツ」
「少尉。発言の撤回を求めます。私の演算処理速度は人間を遥かに上回っており、同年代の支援ユニットの中でも群を抜いていると自負しております」
オレは今、クソ狭いコックピットで会話をしている。相手はAI、機体を制御するための人工知能だ。革新的な技術を盛り込んだ独立型戦闘支援ユニットらしいが芸術を理解するには、まだまだおつむが足りないらしい。
モニターの周囲の発光パターンがグリーンからレッドに切り替わる。
「少尉、敵勢反応です」
「らしいな、おしゃべりはここまでだ」
整列したトグルスイッチ。左から右へ、下から上へパチパチとカットしていた動力ラインを復旧させる。
「メイ! インビジブルアーマーは」
「すでに戦闘モードに切り替えました。敵機からも目視されますので気をつけて下さい。各種兵装起動確認終了。いつでもいけます」
発光パターンがレッドからブルーになる。
「わかった。いくぞ!」
山の斜面から飛び出し、オレは敵機の迎撃に向かった。
――ことの発端は……。昔。そう昔だ。昔にさかのぼる。
そうとしか言いようがない。