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眠り姫は甘い夢を見る

作者: ぱっつん

(あれ?)


教室に入った僕は、あるものを発見した。


(眠ってる・・・)


それは、自分の席で眠っている桜木さんだった。


僕がこの桜木若菜と出会ったのは今年、同じクラスになったときだった。

たまたま隣の席になって、仲良くなった。

それからというもの、僕の親友である葵を交えつつ、ちょくちょく遊んだ。


葵と、僕と桜木さん。

この三人のグループでいつも行動していた。


「桜木さん」


名前を呼んでみる。だが反応はない。

桜木さんの近くまでよると規則正しい寝息が聞こえて、

思わず起こそうとした手をひっこめる。


気持ちよさそうに寝る彼女を見ていたら、とてもじゃないけど起こせなかったし、

それに、彼女の顔をもっと見ていたいという気持ちがあった。

顔を覗き込んでみるとしっかり目は閉じていて、長い睫毛が影を落としていた。


こんなに近くで彼女の顔を見る。

たったそれっぽっちのことで、こんなにも心拍数が上がってくる。


「若菜」


我ながら、自分は卑怯だと思う。

呼びたくても、いまさら呼ぶことのできない名前を

こうやって彼女が寝てるときにしか言えないのだ。


「好きですよ、すごく」


思わず呟いた言葉が、虚しい。

だって僕は、知っている。

彼女が、誰が好きなのか。


僕が彼女のことをどれだけ想っていても、その想いは伝わらないんだ。

そんなこと、分かってる。

だから僕は、こうやって、彼女が聞いていないところでしか、言葉にできない。

それが余計に虚しくて、哀しくて切ない。


「若菜、」


僕はゆっくりと手を伸ばし、彼女の髪を撫でた。

どうせ、もう触れることなんて、ないのだ。

そう想って彼女のやわらかな髪に触れるたび、たまらなく、胸苦しくなる。

締め付けられるような、甘い苦しみと、切ない痛み。

胸の奥がちくちくと痛み、心が雲に覆われてしまったかのようにもやもやする。


(なんだろう、この気持ち)


憤り。

それは誰に対してだろう。

こんな情けない自分自身か、それとも―――


「ん・・・」

「ッ!?」


彼女が急に声を発したので、思わず僕は後ずさってしまった。

もしかして起きていたんじゃないかと焦ったが、その瞳は閉じられたまま。


寝言だと分かったのもつかの間。


「・・・あ、おいくん」


あぁ、そうか、と思った。


僕は知っている。

彼女が、誰を想っているのか。



誰もいない教室で、私は目を覚ました。

何だか、とても幸せな夢を見ていたかのような気分で目覚めれた。


どんな夢を見ていたのかなんて、もう忘れたけれど。

とても温かい夢で、誰かに、頭を撫でられたような感触があった。

妙にリアルで、もしかしたら夢じゃなかったのかもしれない。

でも起きたら誰もいなかったし、仮に撫でられてたとしても、私に分かるはずもない。


撫でてくれたのが、葵くん、だったら良いな。


そう思いながら私は誰かが触れてくれた髪を手で押さえた。



(この憤りは葵に対する、嫉妬、だったんだ)

title:mitsu


たまには失恋ものも。

いやぁ、男の子視点って難しいですね。

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