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「なるほど……この世界は空の太陽に向かって進み続ける……到達したら終わってしまう世界なのか……なんてむごい」


 老人からこの世界の事をある程度は聞くと、勇者がそんな事をいって拳を握りしめる。私は「ふーん変な世界」とか思ってたし、魔王は「面白いじゃないか!」とかいってた。冷たい? いやいや、勇者が可笑しいだけだから。私達が普通である。いや、魔王も大概か。私しかまともな感性を持ち合わせてないよ。やれやれ。まあ勇者は面倒な性格をしてるとは思うけど、だからこそきっと勇者なんだろうね。


「すみません、僕たちがあと少し早く来ていれば……こんな事には」


 そういって周囲を見回す勇者。その表情は痛々しい。二人とも復活して、元の体も取り戻して、色々と前の世界で検証や実験してたからね。まあだいたい二人で戦闘してた訳だけど。そんな事をやらずに、もっと早くこっちにきてれば……とか勇者は思ってるんだろう。

 そんな無駄な思考は放棄したほうが良いと私は思うけどね。なにせどの世界に行くかはランダムだったし、あのタイミングじゃないと、この世界にはきっときてない。そしてこの人を救うことだって出来なかった筈だ。勇者として、勇者は正しいのかもしれないけど、全部を背負って生きて行く気なの? とかは思うね。もっと気楽にいきれば良いのに。

 せっかく強大な力を手に入れた訳だからね。


(いや、そのせい?)


 私はそう思った。前の勇者ならもしかしたら、あのデカい蟻にも苦戦したかもしれない。そうなると、こんな光景をみても、ある程度は仕方ないと思ったかも。でも今やなまじ強大な力を手にしてる。だからこそ、全てを救えるっていう思いが勇者の中から溢れてるのかもしれない。なんか面倒な事になりそうである。まあここでもサンクチュアリ保持者を求めるから、ある程度面倒そうな事は覚悟してるけどね。


「あなた方の性ではございません。本当はジャバルジャルはこんな事になるはずではありませんでした……」

「それは一体……」

「救援がこなかったのですじゃ……」

「そんな……それじゃあここは……見捨てられた?」


 そんな勇者の言葉に老人は頷いた。残酷だけど、かなり厳しい世界みたいだからね。そういうこともあり得るだろうとは思う。なんか勇者は腸ひっくり返ってるみたいだけど、私達はこの世界の事何も知らない。そんな私達がその判断を間違いだって言うのはちがうよね?


「こんな事……許せるはずがない! 行こう!!」


 どこに? なんて言葉は不要だろう。けど魔王は忠告はする。


「貴様は誰を責めるつもりだ。それに、誰に責任を取らせる?」

「そんなのは後で考えるさ。僕だって、この世界の事を何もしらない。だから、知った後で判断する為に動くんだ」


 案外理知的な答えだね。まあそれならいっか。なにせこんな何もないところでいつまでも立ち話もなんだしね。私達はとりあえず、その見捨てた奴らが居る街を目指す事になった。

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