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 目の前の砂獣は四体くらいだ。ふむ……はっきり言って物足りない数だ。わさわさと足を動かして自分よりも数倍でかい蟻が迫ってくるのはなかなかに迫力があるが、だが、こいつらはただ近づいて、その大きな歯でついばむくらいしかできない。あとはタックルとかか。はっきり言って砂獣の中では一番オーソドックスで雑魚といっていい。まあけど、この程度どうにもできないとローワイヤさんに俺の力を示すこともできないか。

 それに手間取ることなんて許されないし。一応彼女は俺のことは信頼してくれてる。でも戦闘を見せるのはこれが初めて。どこか不安があるから、砂獣に対してトラウマが発動してるんだろう。俺という安心材料でそれを乗り越えて貰えればいい。そしてそれだけ俺という存在が、使えると思ってくれれば、彼女は俺に尽くしてくれるだろう。なんかこういう思考、女を使い潰すクソ野郎みたいな感じだな。


「危ない!」


 俺の目の前に一番速く砂獣の一匹が近づいてきた。そしてその大きな口でかじりつこうとしてくる。それを俺はただ見てる。まあ、実際止まったように見えてるだけだが。でもそれは俺にだけだ。周りにとっては砂獣がとてつもない迫力で迫ってきて、今にも俺にかじりつこうとしてるんだろう。だからこそ、ローワイヤさんもそしてその奥ではフェアも顔面蒼白してる。賞金稼ぎの連中は俺の強さを知ってる奴らは多いから、そんな反応はしてない。むしろ砂獣が現れて逆に馬車と共に距離を取ってくれるまである。できた奴らだ。

 まあ事前に言ってただけだが。


(とりあえず……ふん!)


 俺はついばもうとしてくる砂獣の一体に向かって拳を軽く振るう。あくまでも軽く奮ったつもりだが、流石についばまれるのは嫌だから、向こうが俺に触れるよりは速く腕を振った。そしてメキョってな音と共に頭が爆散して残った体が吹っ飛んでいく。それには流石に残った蟻型の砂獣も驚いたのか、動きが止まる。その隙きを見逃す俺ではない。砂を蹴って足の間に潜り込み、真下から突っ込んで更に体を2つに分けてやった。そして空中を蹴って、頭上から三体目の頭を蹴り飛ばして、その頭が四体目に当たって砂を転がった。そしてヨロヨロと起き上がろうとしてるところに、近づいていき……パンチ一発終わらせた。


「さて、済みましたよ」

「え……」


 ローワイヤさんはまばたきもせずに見てたはずなのに、何が起きたら理解できてない。そして奥の方のフェアもだ。いや他のメイドさんもそうだけどね。


「ええ……え? 砂獣……は?」

「倒しましたよ。見てましたよね?」

「そうですけど……あんな早くなんて……」

「あのタイプは弱いですから。このくらい普通でしょう」


 んなわけあるか――って賞金稼ぎの奴らが愚痴ってたが、それは無視だ。とりあえずここで念を押しておこう。


「これでわかったでしょう。僕がいる限り、貴方の体には傷一つつけさせませんよ」

「…………はい」


 ローワイヤさんは俺を熱く見つめてなんとか最後の言葉を絞り出してた。うーん自分の力を示すのは必要だとはいえ、やっぱり誰かの心を弄ぶようなことはちょっと苦手だな。


「それでは出発しましょう。僕は外で警戒を続けます。また砂獣がでるでしょうから」


 それにローワイヤさんは文句を言うとこはなかった。

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