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「あのそろそろいいですか?」


 フェアさんも落ち着きを取り戻した……というか更に熱くなって「もう、大丈夫ですから」とか言ってるから、とりあえず抱きしめるのは止めたんだけど、そこまで距離は変わってない。なぜなら、俺の後ろでこの宮殿のメイド係の人が抱きついてるからだ。この人を無理矢理引き剥がすなんてのは簡単だ。だがそれをやると結構強引になってしまう。そういうことはあまりしたくない。


「ご心配なく」


 おかしい、別に俺は彼女の心配はして無い。寧ろ困惑しかない。


「勇者様は彼女を存分にお慰めになってください。私は勝手に慰められるので」

「えっと、私はもう、大丈夫なので……」

「いえいえ、今しかないですよ? もっと甘えてた方が良いです。勇者様はとても人気があるんですよ? ほら、この顔よく見てください。なかなか居ませんよ」


 背中から抱きつきながら、そんな事をいうこの子はちょっと……というかかなり良い性格してる。そしてそんな事を言われた彼女は……こっちを見つめて……


「そ、それじゃあ」


 なんかもう一度ギュッとしてきた。まあ体じゃなく、腕に……だけど。


「二人とももう充分では?」

「不安なんです……」

「そうそう、不安なんです。持ってきた物を壊してしまって」

「君は片付けなさい」


 いつまで床を水浸しにしてるつもりだよ。一応ここは客間なんだから、ちゃんとしないといけないだろう。粗相をしたことになって、君は最悪解雇って事になりかねないのでは?


「もう少しドキドキしてほしいんですけど、満足はしました」


 そういってメイドの彼女はスッと離れて、丁寧にお辞儀をする。なんかやりきった見たいな感じだしてるけど、仕事何一つやってないし、寧ろ失敗してるから。


「お嬢様、勇者様、直ぐに換えの水を持って参ります」


 彼女はテキパキと仕事をして、床を拭く。そして去って行った。何だったの? てかもう一度来るんだよな。ここに居ては不味い気がする。とりあえずフェアの様子を確かめる。


「ここなら、安全だし、誰も君を害したりはしないから。それと大丈夫そうなら、さっき言ったようにここの領主に説明して欲しい……出来る?」

「勇者様が、それを望むのであれば……頑張ります」


 そう言って何やら彼女はこっちを見て目を閉じた。なにそれ……フェアもなんか大胆になってる。それはキスでもしろ? 初めて会ったよね? でもこんな世界だ。それにフェアは死ぬ思いもしてる。そういう本能的な物が刺激されたのかも。俺はとりあえずフェアの頭を優しく撫でてあげる事にした。


「なら、もう少し頑張ってみよう。大丈夫。ちゃんと側にいるさ」

「……はい」


 なんかちょっと頬を膨らませるフェア。うん、大分心も持ち直してきたと思う。これなら大丈夫だろう。ここから退散したかったが、フェアの事を考えるとそれは無理だ。せめてラパンさんと会わせるまでは。

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