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「あ……が……もう、ダメだ」


 なんかラパンさんの息子が死にそうである。一体いつからああなのかは分からないけど、既に彼の心は折れている。


 ずっと痛みが続いているのならしょうがないのかも知れない。私達にはあいつの苦しみなんてわかんないし、ここでリタイヤしてしまう事があいつにとっては幸せなのかも知れない。


 だって相当酷い様子だ。


「しっかりなされよ! ラパン様とて、貴方なら耐えられると期待してここに行かせたのですぞ」

「そんな訳……ねぇ。親父は俺に期待なんかしてねぇよ。他に居なかった……だけだ」

「そんな事は……」

「そうなんだよ! ゲハッ!? ガハッガ――」


 皆さんの緊張が高まる。でも駆け寄ったのはパズマさん一人だけってのが、あいつの周囲からの信頼度を見てるかのよう。嫌われ者には誰も近寄らない……でももしもここでこいつが持ちこたえれば……少しは彼への見方が変わるかも知れ無い。そういう可能性を秘めてる状況だ。

 でもその彼は既に諦めムード。パズマさんの言葉も彼の耳には穿って届いてる。既に二十歳とか超えてそうに見えるが、いつまで親に反抗してるのやら。


「俺は……何も親父の期待に応えられなかった……出来損ない……だ。今だって……俺じゃあ……ダメだ」


 既に息絶え絶えな状況。こうやってみてる私が一番彼の状態を把握してると思うが……実際マジで死ぬまで五秒前くらいである。どんどんと脈は弱くなってるし、何かが離れようとしてる。なんか下に魂みたいな物が引きずられてるような……既に半分くらい出てるんだよね。


 アレが全部出たら、肉体としては死ぬのでは? ゆゆしき事態ではある。私的にはどうでもいいが、今ここでジャルバジャルを失うのはね。いや、失うとは限らない。でも事実、今のジャルバジャルを繋げてるのはこいつなんだよね。実際都市核との繋がりがある者が死ぬとどうなるんだろうか? 聞いた事無いね。

 どうなるか見てみたい気もする……でもさっきこいつは他が居なかった――って言った。つまりはこいつが死ぬと都合が悪いはずだ。このままじゃ間違いなく死ぬ。だってこいつ自身が諦めてるんだもん。病は気から……という諺がある。なんとなく憶えてる。それと同じ、生きる気が無い奴はどうあっても生きれない。なにせ生きる気がないんだからね。


 治療をしたって意味が無い。まあ治療できる人はいるが、これは薬とかでどうにか出来る物じゃない。それをパズマさんもわかってるから、医者みたいなのを下がらせたんだろう。


「とりあえず今は生きさせないとね」

 

 そう無理矢理にでも……私はマジで死ぬまで五秒前のラパンさんの息子に向かって指の先を放った。

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