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「くそ! クソが!!」


 そう言って夜道をズカズカと歩く恰幅のいい男。脂ぎった肌に、だらしなく出た腹はゆったりとした服を着てる筈なのにはっきりとわかる。そしてジャラジャラとしたアクセサリーの数々。普通は夜に後ろめたい事をすると成れば、なるべく音なんて物を出さないように細心の注意を払うものだ。けど……そんな様子は彼にはない。


 だがそれもその筈だ。私の中にあるそんな常識は前の世界達の常識であって、この世界には当てはまらない。だからあの成金ハゲは堂々と大通りを進んでる。それでも何もないからだ。なにせこの世界では宵には全ての人が寝入ってる。そしてそれは朝まで絶対に起きる事はない。それかこの世界の常識だ。だからこそ、あの成金ハゲはここまで堂々と、そして音を出す物をぶら下げてても気になんてしない。そんな必要ないからだ。


「本当に宵に起きてる統べさえあればやりたい放題だよね」

『ですが、あれは世界の法則に反してる行いの筈。それには多大な代償が必要なはずです』

「代償か……」


 そういうAIの言葉にちょっとだけ考えたが、それは直ぐにやめた。そんなのは本人から聞けば良いことだ。なにせ私達はこれからいけないことをする犯罪者を捕らえるのだ。正当性はこちらにある。なら自分で頭を悩ませる必要なんてない。


「向こうはきっと、宵に自分以外に動ける存在が居るなんておもって無いでよね」

『そうでしょうか? 私達の事は警戒してる……いえ、警戒するのが普通だと思いますが?』

「あのハゲがそんな賢そうに見えたわけ?」


 私は心底馬鹿にしたようにAIに訪ねるよ。だってねえ……あれをAIが評価してるなんて……ちょっと私のAIに対する信頼が揺らいじゃうよ? 


『知性とは、必ず外見に現れるとは限りませんよ』

「それには同意するけど、あいつは見た目まんまだと思うよ?」


 まあAIは色々と警戒してくれてるんだろうね。心配性だし、きっと色んな可能性でも計算してるんだろう。確かにあの成金ハゲが実は恐ろしいくらいの実力者っ事は無くはない。そもそもがあいつが宵に行動できてる種もわからないし、あいつの特殊能力……とかかもしれない。可能性的には低いけど、今の私達じゃ、その可能性も捨てきれないしね。もしかしたらあんな音を立てて歩いてるのも、私達を誘い出す演技かも知れ無い。99パーセント違うと思うが、その1パーセントをAIは捨てきれないんだね。


「どの道、あいつにネナンちゃんは触れさせないよ。決定的な所で介入する。それで全てはわかるでしょ。アレがただの成金ハゲか、爪を隠してるか」


 別になにか力をもってたとしても、私的にはそこまで脅威に感じてないしね。だってこの世界で私達を脅かすような存在は今の所いないし……まだ出会ってないだけで、それがこの成金ハゲの可能性もあるが……それでも負ける気なんてない。だからどんとこいだ。


 成金ハゲは宮殿の前まで来た。この時点で既に汗だくで、ふはふは言ってる。そして何やらゆっくりと正門に触れる。勿論宵に合わせて門は閉じられている。どうやって入るのかと思ったら、成金ハゲは扉を押し出す。けどあかない。そしてぜえぜえ言ってる。何回かやるけど、どうやら肥満なハゲには無理らしい。


「ぷくく――」


 私はお腹を吹き出すのを堪えてた。

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