160
「チャルチ」
私はそんな言葉をウサギな彼女に向かっていった。すると私が作った雪兎のロボットに夢中だったウサギな彼女の動きがピタッと止まった。やっぱりまずかったかな? とか思ったけど……私は首を振ってそんな不安を振り払う。だってもう……彼女は楽になっていい。そう思った。
頑張ってきたんだ。今の姿になったのも、神をあの世界から退けて、それから長い長い間、あの世界て生活していく中で、かつての幸せを求めた結果だった。自分という外側を変える。それはかつての自分との決別のような気がしてウサギな彼女はやってなかった。
でせもう誰にも邪魔されることは無くなって、暗い寒い世界で周囲にいるのは自身の分身のような家族だけ。ならば……今度はその子たちにかつての自分の幸せを与えたいと思った。だから形を変えてなるべく人間みたいな姿をとった。その結果がウサギでも人間でもないような中途半端な姿。
二足歩行で人型ってやつがウサギの周囲にはいた。そう、自身の血肉によって作られた劣化コピーのような小さな二足歩行のウサギたちだ。もしかしたら彼らの姿に引っ張られて、ウサギの姿はこんなふうになったのかも。
まあけどきっとそれがかつて自分を飼ってた人たちの姿と違うとはウサギは思ってなかったみたいだけど……そしてさっき呼んだその名前は、かつてのウサギな彼女の名前だ。ずっと彼女が封印してた名前。きっと誰かにもう一度呼んで欲しかった名前。
それを私は呼んだ。そしてウサギな彼女は止まった。勇者やアイは何も言わない。きっと空気を読んてるんだろう。助かるよ。静かなこの場所て私はもう一度その名前を呼ぶ。
「チャルチ、その名前を覚えてる?」
グスッ……ズズズ……っと鼻を啜る音が聞こえる。そしてその大きな瞳からはとめどなく涙が溢れてた。私は彼女に手を伸ばしたい。けど……私はこのコクピットから出ることはできないんだよね。だから……
『勇者、頼めますか?』
私はそう思考を勇者に送る。私が作ったボディなのだ。そのくらいできる。そして勇者はわたしの意図を正確に汲んでくれた。さすがは勇者である。頼りになる。勇者はその手を伸ばしてウサギな彼女の頭に伸ばす。そしてその頭に手を置くと優しく撫でてあげる。
するとついに何かかウサギな彼女の中で決壊したのか、今度は「うわああああああん! あああああぁぁぁああん!」−−と大きく口を開けて泣き出した。勇者もアイも私と違ってこうなった経緯とか知らないわけで、だから二人から見たらウサギな彼女がいきなり泣き出したやばい奴だと思う。
でも勇者はそんなの全く感じさせない。むしろ、大きく泣き出したウサギな彼女を自身の胸に迎え入れてた。イケメンか!? いやイケメンだったわ。




