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沢山の危機をこの世界の人々は乗り越えて来た。それは確かにそうかも知れない。でも本当にそれは乗り越えてきたのだろうか? 本当に? そう言える? その危機は誰かに押し付けることで誤魔化して来たんじゃないのか?
そう具体的にはこの便利なうさぎちゃんに……ね。このウサギはもう原型をとどめてないくらいになってるだろう。そして再生した世界で、世界の核心……サンクチュアリをこの世界の人々はみつけた。
サンクチュアリは世界を救う救済の最期の手段なわけで、だからこそサンクチュアリは世界のエネルギーが満ちてる。それは再生した世界で再び文明を築こうとしてる人々にはとても魅力的に写ったんだ。
だって彼らにはかつての栄華……それがずっとあったんだ。最低限の文明はウサギのエネルギーで実現できてた。でもウサギの内部だけで循環してるエネルギーにはもちろん制限があったんだ。最低限、ウサギを生かすエネルギーは必要だった。
当然だ。だってウサギが死んでしまったら、内部で暮らしてた人々も終わりなんだ。まるで寄生虫だなって私は思ったよ。宿主のエネルギーを寄生して吸い続けてたんだから、まさに寄生虫だろう。
そんな寄生生活を終えて、外に出た人類。でも元の生活水準を取り戻すのはなかなかに大変だった。だから安易な方法に頼ろうと思った。それが、純粋なエネルギーの塊であるサンクチュアリだ。
世界は復活したが、それは人々がおもうような復活ではなかったんだ。まあ元のように戻っただけなら、それこそまた人の養分になるのは目に見えてる。だからこそ、世界も「変化」の道を辿った。
それは当然かも知れない。そんな機能があるのか? って感じてはある。もしかたらそこには「神」の介入があったのかもしれない。でも一回危なくなったんだから、それを回避しようとするのは普通のことだともおもう。
つまりは新たに再生した世界は、なんとも人……人類、文明にとってとても都合が悪い世界になってた。以前の技術が通用しなくなってたんだ。でも文明に触れてた人々はそれを忘れることはできない。
いや、ウサギの中での生活はそれこそ何世代にも渡ってた。だから既に地上を知ってる世代というのは亡くなってる。でも彼らがいう『地上の楽園』――という夢は延々と受け継がれていたんだ。
そして彼らにはこんな思いが生まれてた。
『地上には楽園があるはずなんだ』
――という夢が。でもそれは打ち砕かれた。でもそんなときに見つけたのはサンクチュアリという莫大な……それこそ世界のエネルギーというべきもの。その誘惑に人々が抗えるはずもなかった。




