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「んー!」
フルフルとウサギな彼女が首をふるう。どうやら私の声に従うのはなんかいやらしい。何それ? ちょっとイラっとしちゃうよ。こっちはなるべく優しく――『大丈夫ですよ。いたくないですよ』――といい続けてるのに……私では無理だからなついてる勇者にその装置をつけてもらうおう……と思ったけど、それも拒否してる。
なぜだ? 勇者の事はめっちゃ信頼してるはずだ。なのにその勇者からの物さえもウサギな彼女は拒否してるのだ。それはおかしい。そもそも彼女はあれが何かなんてわかってないだろう。別に頭をすっぽりと覆うヘルメット的な物体をかぶせようとしてるわけでもないし、電気ショックを与えそうな椅子に座らせようとしてるわけでもない。
ただ額にペタッと透明なシールを貼ろうとしてるだけだ。貼ってしまえば、それは肉体になじんで普通なら視認できなくなるレベルだ。それだけ薄い。でもそれにはとても精細で細かなマイクロチップと回路が敷き詰められてて、とてもすごいテクノロジーで作られてる。
しかもなんとそれはその貼った人の生態電気に反応してくれるという優れモノだ。とてもエコなのだ。別に貼ってもなんでもないのに……ただ私にいろいろな情報を渡してくれるだけだ。あとはそれを介してちょっと脳をね。
(いやいやいじったりはしないよ)
そんな危険な代物じゃない。ただちょっと脳波を解析した後に彼女の脳に直接アクセスするだけだよ? 危険なんてない。その間も彼女の行動に支障が出ることはない。それは保証できる。もちろん使うのは初めてだけど、「安全」って書いてあったもん!
私はこのG-01を作った人たちの極まったテクノロジーを信じてるから! 安全なのは安全なのだ。危険なのはちゃんとリスクが示されてるから。まああんまりそれは表示されないが。そういうのはまだ私のレベル? が足りてないんだろう。きっとね。
「大丈夫だよ。これは安全なんだ。そうですよね?」
『ええ、そうですよ』
私は私の代わりに喋ってくれるドローンをみんなの前に出してた。細長い円筒形で頭にはプロペラがあるような……そんなドローンだ。本当にただの円筒形にプロペラだけの簡素な奴だからね。これに見えるカメラとかあれば、そのレンズがキュルキュルっとレンズの絞りをしぼったりして感情表現ができたかもしれない。
でもそんなのもないんだよね。一応カメラはあるけど、それを見せなくても良いくらい極小のレンズだからね。だからかわいげ? なんてものは一切ない。うーんもしかしてそれが原因か? ウサギな彼女にはそんな私の代わりのドローンは不気味に映ってるのかもしれない。




