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私は最期の勇者がこの船に戻ってきた瞬間に世界転移のゲートを閉じた。だってそうしないと神の代行者がやってくるじゃん。33222体の奴らを収容する大きさはこの船にはあるけどさ……でもそれでもそんな数を歓迎する準備はしてないからね。
だからさっさと閉じるに限る。流石にいくら神でもここにはこれない。この本船がある空間は特殊だからね。向こうから繋げる……って事はさすがの神にも不可能だろう。
もっと冷静ならば、もしかしたら私の残した痕跡をたどる……とかしそうだけど……けどあいつにはそんな理性が残ってないだろう。今もゲートが消えた周囲に集まってるが、もう一度開くのを待ってるのかな?
そんなわけないのにね。一応ドローンを何機かは残しておいた。どうせ材料費は0みたいなものである。エネルギーがつきたら回収もせずに放置する。そんな使い捨てのドローンを向こうの世界に置いてる。
これが生命があって、成長をしていくような世界なら、私がなんとはなしに放置したドローンが歴史のオーパーツとかになったりもするのかもしれない。あの時代にこんな高度な工業製品があるわけない! ってね。
けどあの世界ならその心配はないだろう。どっちかというとあの世界はもう「終わってる」――世界だった。終末のその先にあるのがあの世界だったはず。まあもしかしたらまた生命が始まる……ことがあるのかもしれないけど……
「あの神がそれをするとはおもえないな」
それである。あの神にはその気があるんだろうか? てか神の自覚とかさ……ちゃんとあるのかな? わかんない。かなりもう自我とか無くなってそうというか? なんか憎しみに囚われてそうだったからね。でも彼女……ウサギな彼女はこっちで保護したから、その憎しみも忘れて欲しい。
ちゃんとした「神」に戻ってくれたら、あの世界も再生の目はある。すぐには無理だろうけど、時間がね……解決してくれないかな? もちろん相手は神だし、普通の生命の感覚では無理だろう。数年とかの感覚では無理だと思う。数百、数千……そんな単位で見る必要があるのかも。
「とりあえず何があったのかをあの子から教えてもらおう」
言葉は通じない。けどここに来たのなら、彼女の記憶を見る手段は色々とある。それで何があったかを確かめてみよう。




